『指導者の条件』
頂いた本でおもいだすのが、『指導者の条件』著:松下幸之助である。
五つの能力、「貢献を考える」「強みを活かす」「時間をコントロールする」「いちばん重要なことに集中する」「正しく意思決定し、実行する」を身につけることで誰でもプロフェッショナルになれ、自分を成長させるために大切なことは「人に教える」「成長できる場所を選ぶ」「現場で働く」「自分の価値観に合う仕事をする」だと説いたピーター・F・ドラッカーの『13歳から分かる! プロフェッショナルの条件』について、あーでもないこーでもないと客観的に考えることを語った書籍……ではない。
ある全国紙の記者が無理なことだとは思いつつ、「指導者、経営者にとって、これだけは絶対に持っていなければならない条件をひとつだけ挙げて頂けませんでしょうか」とたずねたとき、松下幸之助は次のように答えたという。
「う~ん、そうですなあ、ひとつね、ひとつだけですな。ま、ひとつだけ指導者に必要な条件を挙げよと言われれば、それは、自分より優れた人を使えるということですな。そう、これだけで十分ですわ」
記者は、大きくうなずき納得した。
インタビューが終わり、その答えに感銘したということを告げると、松下幸之助は次のように返したという。
「そりゃそうやろ。経営者にとって大事なことは、優秀な部下を集め、あるいは、育てることや。いくら優秀な人でも、人間ひとりには、限界があるわ。なんでも一番ということはない。自分より、優秀な人はいっぱいいる。だからな、指導者が、なんでもオレがオレが、と言ってもできんわけや。むしろそういう自分より優れた人を傍に集めて、その人たちを活かし使う能力というか、そういうことができるということであれば、その人は、それで十分、立派な指導者と言えるけど、得てして、指導者という人は、自分より優れた人を遠ざけるな。だから、いくら優秀でも、自分の程度にしか成功せんわけや」
本書を手にしたのは、先生より「卒業祝いだ」と贈られたからだ。
他の子はすんなり決まったのだがキミにはなにを贈るべきなのか随分迷ってこれにした、といって渡されたのである。
「指導者になれ」といいたかったのか、「人を指導するとはどういうことか、キミはしらなすぎるのでこれでも読んで勉強なさい」といいたかったのか。
いまとなっては真意はわからず、解釈を委ねられた。
巷にあふれる啓発本のたぐいは、聖書をはじめとする先人たちが残した古典からの抜粋、水増しである。
ゆえに困ったら古典を読め、そのために古典を数冊手元に置け、といわれている。
読み解く解説が面倒な者は、お金を出して今の時代に合わせて書き直された書籍を手にする。加速度的な速さをみせつける時代だから、自分の頭で考えるのすらせず、インスタントに知ろうとするあらわれかもしれない。
本書は、日本と中国を中心とした先人たちから学ぶ指導者のあり方、一〇二カ条だ。書かれているのは過去の偉人たちの言葉であるが、最後の一〇二番目は、松下幸之助自身のことばである。(充分、彼も偉人である)
彼は「謙虚と感謝」が大切だと、くり返し強調している。
だれかになにかを教えるとき役に立つ、そんな一冊である。
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