『しろばんば・続しろばんば』
続、で思い出したのは『しろばんば・続しろばんば』著:井上靖である。
「温度が非常に低いときに降るさらさらの乾雪は軽いが、氷点下五度以上で解けかけのみぞれ状態の湿雪は重くて投げづらい」と、除雪のときに使われる福井県の木製雪かき具『板バンバ』について、あーでもないこーでもないと頭が真っ白になるまで語り尽くした作品……ではない。
大正時代、伊豆湯ヶ島部落で幼少期を過ごした井上靖の自伝的長編小説『しろばんば』は、一九六〇年から主婦の友で連載され、その後『続しろばんば』が連載。題名の、しろばんばとは雪虫のことである。
内容は、洪作少年と祖母の話である。
五歳から父や母のもとを離れ、曽祖父の妾であったおぬい婆さんとふたり、土蔵で暮らしていた。洪作少年は、我が強くて図々しい祖母が嫌いである。おまけに、祖母は実家や近所の人にもよく思われていない。だけれども、洪作だけには異常なまでの愛情を注いでいた。
洪作は祖母に反抗しながらも、幼馴染たちと遊びふけり、学生らしい暮らしを送っていく。だが、次第に祖母は年老い、今までは祖母の庇護だった自分が祖母を庇護する側になるのを感じ、祖母がなくなると、よそよそしい実家の面々よりも心のどこかでは自分を守ってくれる祖母のことを好いていたことを知るのだった。洪作は中学受験のために郷里湯ヶ島を離れていく。
伊豆地方の大正前期の農村風景や風習などが書かれ、この作品に登場する人物は実在していたのだ。
教科書に本作の一部が掲載されていたことが、本作を知るきっかけだった。
実は元の話はもっと長いのだと親に教えられ、図書館か、あるいは本棚にあった
本を手にして読んだ気がする。読んだのは覚えているけれど、どのように本を手にしたのか、その辺りの経緯は失念してしまった。
内容が古かったとはいえ、子供である主人公の心情は、時代を経ても共通する部分はある。なにより、自分の話を小説にしていいんだと、教えられた気がする。
どうしてだかよくわからないけれど、結構好きになった本である。
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