『氷点・続氷点』
二段組の小説をはじめて読んだのは、『氷点・続氷点』著:三浦綾子である。
一九六五年の金曜午後十時、日本プロレス中継が放送されない週の穴埋め番組として隔週で放送された「金曜夜席」が人気を博し、翌一九六六年に毎週日曜夕方枠へと移動した演芸バラエティ番組のタイトルは、考案者である立川談志が当時流行していた三浦綾子氏の小説『氷点』にあやかって名付けたという。
いまや世界で最も長く放映されるテレビ演芸バラエティ番組としてギネス世界記録を保持する番組『笑点』について、あーでもないこーでもないと笑いあうお話……ではなくて、あやかられた『氷点』の話である。
テレビドラマを見たのがきっかけだと思う。
前後編だっったのか、とにかく長くて二時間で収まらない内容だったので、興味が湧いたのだろう。ドラマを見ればいいものを、まちきれなかったのか、家の本棚に見つけた『氷点』と『続氷点』を、一気に読んだのをおぼえている。
なにぶん、作品自体古いのと、二段組で書かれていたことで、読むのに苦労した記憶がある。いまでは三点リーダーは当たり前かもしれないけれど、この頃の本では二点リーダーが使われている。
三浦綾子のデビュー作。
一九六三年に朝日新聞社が、大阪本社創刊八十五年、東京本社創刊七十五周年を記念する事業として懸賞小説を募集した時の入選作。募集要領に「既成の作家、無名の新人を問わない」とあったが、無名であった三浦の作品が入選したことは大きな話題となったという。
賞金は当時としては破格の一〇〇〇万円。
今と昭和四十年ごろとくらべて、どのくらいの物価水準なのかというと、企業物価指数は昭和四十年の約二倍なので、昭和四十年ごろの一万円は現在の二万円に相当。
また、消費者物価指数では約四・二倍なので、約四・二万円に相当する。
なので、現代からみると、懸賞金の額は二〇〇〇万~四二〇〇万円相当になるのかしらん。
継母による継子いじめ、義理の兄妹間の恋愛感情などがあるなか、キリスト教の「原罪」がテーマとなっている。また、続編のテーマは罪に対する「ゆるし」であり、クリスチャンの三浦さんの影響が反映されている。
みんな自分のことしか考えてない。罪人である人間のはなしであり、愛憎劇のドロドロは、好みではない。『氷点』だけでは終われず、『続氷点』を読みたくなる。
罪の赦しは必要なんだとおもう。
よくもまあ、子供の時にこんな本を読めたものだと自分でも感心する。
二〇二二年は、三浦綾子生誕百年を迎えることから、公益財団法人三浦綾子記念文化財団と三浦綾子記念文学館では「生誕100年記念事業」として、『氷点』『続氷点』の映像化を構想があるらしい。興味を持たれた方は各自で調べてみてください。
一度は読んでみてもいい作品、と思える一冊。
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