『エンデのメモ箱』

 作家について知ろうとおもったきっかけの本といえば、『エンデのメモ箱』著: ミヒャエル・エンデ である。


 父はシュルレアリスムの画家エドガー・エンデ。ミュンヘンで演劇や放送の仕事をしながら児童文学の創作を手がけ、一九七三年に『モモ』によって世界的名声を得る。彼の文学は ルドルフ・シュタイナーの神秘的思想に裏打ちされているが、同時に現代世界を解明するための幻想の意味について問いかけている。一九八九年『はてしない物語』の翻訳者佐藤真理子と結婚。日本の黒姫童話館には彼に関わる多くの資料が収集されている。そんなミヒャエル・エンデの創作の秘密などがあーでもないこーでもないと書かれた百十三の短編からなる作品である。


 ミヒャエル・エンデ研究をしていたわけではないけれども、作品や作家の考え方を理解するための参考文献として、翻訳者の田村都志夫氏によるエンデ解説本『エンデを旅する』や『ミヒャエル・エンデ―物語の始まり』『エンデと語る』『エンデの遺言』『モモを読む』『芸術と政治をめぐる対話』『自由の哲学』『モモも禅を語る』『ものがたりの余白』『シュタイナー哲学入門』をはじめとした書物の数々を読んでいくのですけれども、その最初の一冊だったのが『エンデのメモ箱』だった。


 絵の見方を習ったのも、ミヒャエル・エンデからだった気がする。作品からとはまた違った角度でみることで、新たな発見が得られる。そういう体験ができたのは、わたしにとっては僥倖だった。

 このことがきっかけで、一人の作家さんについて作品だけではなく、別な角度からもみたり調べたりして深堀りしていくようになった気がする。


 書斎に置いてあった箱に、メモや原稿用紙、紙切れがはいっていて、それらを集めたのが本作。作家の姿勢が伺いしれて、実に興味深かった。

 この本の中に、夢泥棒の話がある。

 それを読んだとき、参考にしてお話ができたらいいなと思ったのをおぼえている。


 ちなみに、メモ箱に書かれていた夢泥棒から着想を得て漫画を描いた作家がいる。『王ドロボウJING』の作者だったと記憶している。(コミックボンボン連載、後アニメ化)以前、偶然みつけた彼のHPにそのようなことが記載されていたのを拝読したおぼえがある。

 それ以前にわたしは、彼の名前も、漫画もアニメも見たことがない。ご存じなくて申し訳ありません。


 いろいろなきっかけを得たことをおもい出す、そんな一冊である。

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