『王子と乞食』

 世界名作ものでおもいだすのが、『王子と乞食』著:マーク・トウェインである。


 太安万侶の序文からはじまり、国土の誕生や人間の生活に欠かせないさまざまなものを司る神々の誕生と、初代神武天皇から第三十三代推古天皇までのエピソードが記された全三巻からなる国内最古の書物『古事記』について、あーでもないこーでもないと国家運営のための根本に関わる事業の物語……ではない。


 時は西暦一五三七年十月十二日、イングランドはテューダー朝・ヘンリー八世が治める時代。

 二人の男子が生まれた。

 一人は、エドワード・テューダー。のちのエドワード六世である。

 父ヘンリー八世だけでなく、イングランド全土が待ち焦がれた待望の跡継ぎ。ゆえに、誰もが夢見るような豪華な宮殿に住み、温かい食事や高級な衣服を与えられ、何十人もの家臣や侍女に世話をしてもらい、不自由無く育っていく。

 もう一人は、ロンドンの貧困な裏街の貧しい家に生まれたトム・カンティ。

 酒に溺れて暴力を振るう父と、トムを守ろうとする母と姉の中で育ち、常に飢えと寒さに震え、物乞いをする日々を過ごしていく。

 エドワードは堅苦しい宮廷生活に飽きて外の自由な暮らしに憧れ、トムは貧困生活から抜け出し、恵まれた生活をうらやんでいく。

 そんな二人が出会い、互いがそっくりなことに気づき、服を交換して入れ替わってみることにした。

 エドワードは、貧困な者に対する国法の不条理さを知り、怒りをおぼえる。だが彼の気高く堂々とした態度を貫き通し、貧しい人々の温かい心にもふれて感動をおぼえていく。

 トムは、憧れの上流階級の暮らしに戸惑ったものの次第に慣れていく。だが、貧しい日々に培ったやさしさは忘れず人に接するも、立場の荷の重さを認識すると恐れを抱くようになっていく。

 貧しき人々の立場を知ったエドワードは後にエドワード六世となり、かつての経験を大いに活かしていくこととなる。

 エドワードは実在の人物であるが、トムは架空の人物。なので、本作はマーク・トゥエインの創作であり、子ども視点で十六世紀当時のイングランド世情を皮肉ったとされる。そんなエドワード六世は、九歳で即位し十五歳で病死した。


 本作は、容姿が似てる人物が入れ替わってまわりに知られないまま話が進むという、ストーリーの型の一つとして多数つかわれるほどに有名だ。

 なので、本を読む以前に、ストーリーの概要は知っていた気がする。

 ドラえもんとかパーマンとかの藤子作品など子供向け作品や『ターンエーガンダム』、あとは『君の名は。』『プリンセス・プリンシパル』などもこの部類に入るだろう。


 ストーリーの軸に有名な童話を取り入れようとおもった作品の一つである。

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