『学校では教えない文章術』
文章の書き方で思い出すのが、『学校では教えない文章術 模倣こそ文章上達の王道である』著:篠沢秀夫である。
解答者を競馬の出走馬に見立て、正解しそうな解答者に推理とカンで持ち点を賭けていく競馬方式の娯楽性を強調したクイズ番組。出題される問題は一般常識からギャグ満載まで多種多様。司会者が五人の解答者に付けた独断の倍率を参考に、持ち点三〇〇〇点から最低一〇〇点を単位として賭けていく。倍率は低いが正解率の高い三枠の「はらたいら」や三択の女王とよばれた四枠の「竹下景子」にコツコツと賭けるか、倍率は高いが正解率のあまり高くない一発逆転の一枠「篠沢秀夫」や二枠「井森美幸」に万馬券狙いで賭けるかで勝敗が左右され、出場者には得点と同額の賞金が与えられるという一九七六年から一九九二年まで十六年続いた『クイズダービー』についてあーでもないこーでもないと、みじかびのきゃぷりきとればすぎちょびれかきすらすらのはっぱふみふみと唱えた作品のことでは、もちろんない。
文章を書くにあたって、なにかの本を参考にしようと手にとったのが「学校では教えない文章術 模倣こそ文章上達の王道である」の文庫本だった。なので、当たり前だが小説ではない。
ちなみに、書いた人が篠沢秀夫と書かれていても、「へえ、学習院大学の教授の人が書いたものか~」くらいの認識しかしていなかった。なので、黒縁眼鏡のおじちゃんが書いた本なんだ、とは微塵もおもっていない。
基本、面白かった。
一番参考になるのは、扉を開いて三ページ目と本書の裏表紙に書かれてある『独創性とはすべて、先人たちからの剽窃である』T・S・エリオットの言葉に尽きる。少なくとも、わたしはこの言葉が印象に残った。
パクリやモノマネはよくないけれど、どんな作品もはじめは誰かの真似からはじまる。
篠沢さんも書いている。
「盗作上手こそ実は真の文章上手なのだ。ただし、盗作といっても字面をそっくり盗むというのではない。よい文の心を盗むのだ」
これに尽きるのです。
映画『ルパン三世 カリオストロの城』で銭形警部がクラリスに「いや、ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」といったように、物書きもルパンのように、よい文の心を盗まなくてはなりません。
赤ん坊ですら、周りの大人達を観察し真似て、言葉を話すようになっていくのですから。文章もまた同じ。
模倣こそ文章上達の王道だと学んだ作品の一つである。
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