『放課後はミステリーとともに』

 放課後とミステリーといえば、『放課後はミステリーとともに』著:東川篤哉である。


 私立清華女子高等学校のアーチェリー部顧問をしている数学教師の前島は最近、何者かに命を狙われ始めていた。校長に相談するも日和るばかりで好転しない。アーチェリー部の練習に参加したある日、生徒指導部の村橋が教師用の更衣室で青酸中毒により殺害された。男性用更衣室の中から心張り棒が引っ掛けられ、現場から行き来できる隣の女性用更衣室は施錠。更衣室は完全な密室となっていた。犯人や前島の命を狙う何者かの正体がわからない中、体育祭でまたしても教師が殺されてしまうという東野圭吾デビュー作「放課後」について、トリックや話の展開は流石だが場面設定は違和感があるし訳あり教師と女子高生が終止タメ口なのもどうなのかしらん、と、あーでもないこーでもないと長い放課後に語りあうミステリー……ではもちろんない。


 鯉ヶ窪学園探偵部シリーズの番外編にあたる本作。

 まるでエアコンのような名前を持つボクっ娘女子高生の鯉ヶ窪学園探偵部副部長、霧ケ峰涼が校内外で起きた数々の謎と事件を教師と彼女自身で解決していくユーモア本格ミステリーの短編集。

 副部長という役職にあるためなのか、彼女はワトソン役という設定。なので、推理に困ると探偵部顧問にお願いした生物教師の石崎浩見に相談(?)することがままある。

 本作を知ったのは、おなじみのNHKラジオドラマである。

 なので、探偵部部長が語り部の鯉ヶ窪学園探偵部長編シリーズの方は読んでいない。

 東川篤哉の名前だけは、「謎解きはディナーのあとで」のドラマが放送される前には知っていたと思う。なので、「謎解きはディナーのあとで」の作品を知った流れから「放課後はミステリーとともに」を知ったのだろう。

 

 文体もノリも軽く、お話は面白い。

 具体的には、主人公の霧ヶ峰涼が事件を解決しようとするのだが、いいところは刑事や教師がもっていくところ。

 他の推理小説を膨大に読んだことがないので比較するのは難しいけれども、主人公が、主役じゃなくて狂言回し的な立ち位置にいるところが、斬新だと思った。

 時代設定に古さを感じた。

 もちろん、現在(二〇二一年)からみれば古いけども、そうじゃない。

 書かれたのが二〇〇三年~二〇一三年。

 しかも数年起きの連作短編なので、そのせいで感じるのではないかと思いたい。


 ミステリーを書くのにキャラを立たせ、文体は軽く、ノリも軽くする影響を受けたような、そんな作品一つである。

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