『恋愛小説三部作:エンキョリレンアイ・サンカクカンケイ・レンアイケッコン』
恋愛小説で思い出すが、恋愛小説三部作『エンキョリレンアイ』『サンカクカンケイ』『レンアイケッコン』著:小手鞠るいである。
時に西暦二〇〇〇年、千葉から名古屋に移り住んできた十四歳中学二年生の仲葦は、ロリータファッションに目覚めたばかり。ある日、「先生、仲葦さんが昨日の日曜日、名駅の地下をまるでトイザらスな格好をして、歩いていました」というクラスメイトの発言がきっかけでバカにされたとき、かばってくれたのは六段ギア搭載スポーツタイプの
「たぁけが! ロリータか何か知らんけどが、悪ぃか? 好きな格好しとるだけで、みっともにゃあこと、あらすか!」
趣味も価値観も合わない二人だが、このことをきっかけに話すことも増え、互いに惹かれあい、付き合うことに。しかし藤森は、急遽父親の仕事の都合で東京にいくことになる。親には内緒、お金もないところをいろんな工夫で乗り越えて大人になった結婚前の回想「十四歳の遠距離恋愛 」について、あーでもないこーでもないと嶽本野ばらについて語り合った恋愛小説……ではない。
【エンキョリレンアイ】
携帯やSNSがなく、PCメールがただ一つの通信手段だった時代。(国際電話と国際郵便も、連絡手段としてはあるのだけれど)
京都の書店で学生バイトをしていた桜木花音は、二十二歳の誕生日だったバイト最終日に絵本を探しに来た井上海晴と運命的に出会う。彼は銀行をやめてシェフになるためにアメリカに渡ろうとしていた。どうしても彼に会いたくて成田空港で再会。黒いマントのようなコートに花音を包み、キスを残して海晴はニューヨークへ旅立っていく。花音は東京の出版社で働き、海晴からのメール文で話が進んでいく。
父親が事故で亡くなったとき偶然、運命的に電話で話す。互いに思いあい、繋がっていると思う反面、物理的な距離に不安でたまらなくなる。思いきってアメリカに向かい、海晴の部屋のいたのは妊娠している中国人学生チュンユー。彼女の企みにより、十二年もの不通な日々が続く。
再会するのは十三年後、花音三十五歳、海晴四十一歳のときである。
恋愛小説三部作の第一弾ということで、第二弾「サンカクカンケイ」第三弾「レンアイケッコン」と読んでいくことになる。
続きものではない。
少女漫画は読んでいたものの、恋愛小説は好んで読んでこなかったような気がする。気がするだけで、読んでいたのかもしれない。しれないけれど、意識的に「恋愛小説を読もう」と思って読みはじめたのはおそらく、小手鞠るいの本作からかもしれない。
川上弘美の「センセイの鞄」もたしかに恋愛小説を求めたからだ。けれど、ラジオドラマで聞き、芥川賞作家だからというジャンルから手にしたところがある。
小手鞠るいの作品は、図書館のおすすめだったのが、一番の理由かもしれない。
【サンカクカンケイ】
主人公の広瀬あかねは、中学の頃から堂本龍也に恋焦がれていた。強引で傲慢に役者になる夢につきすすむ龍也が京都の劇団に入るといえば、自分も父親を説得して岡山から京都の大学へ進学する。実は龍也は、学校時代の教師を追っかけて京都に来たのだ。
一方、あかねには幼馴染で何でも相談のできる武藤俊輔がいる。シングル同士の親が高校の元同級生だったことから、子育てを助け合い、まるで兄妹のようにして育った間柄だ。
振り回され何度も悲しい思いをしても龍也への思いは消えない。自由奔放な龍也、幼馴染みで自分の気持を隠し暖かく笑顔で見守る俊輔の、ドロドロした三角関係じゃなくって、爽やかなサンカクカンケイ。
さよなら三角、またきて四角~。なつかしい童歌にのせて、過去の恋を乗り越え現在の愛を輝かせる物語。
【レンアイケッコン】
恋と結婚は一度きり、そして二つはつながっている。自分の未来をそう占う八木雪香はニューヨーク、マンハッタンのブライアントパーク「夢見るベンチ」で運命の人黒柳と出逢う。これが最初で最後の恋? 結婚の約束をした人との突然の別れ。失意の雪香は、偶然に見つけた「黒やぎ絵本館」に恋する白ヤギさんとして黒ヤギさんに手紙を送り続けるも、最初の黒ヤギさんは手紙を食べてしまったのか返事が途絶えてしまう。その後偶然ネットで出会った黒ヤギさんと手紙のやり取りをする。この黒ヤギさんも優しい人らしく、白ヤギさんの感性ともぴったり。もしや、この黒ヤギさんは消息不明の黒ヤギさん? 白ヤギさんのそんな思いを感じつつ、メルフェンチックな王道の爽やかな恋愛物語。
全体的にきれいで丁寧な文体。
少女漫画っぽさを感じつつ、大人の恋愛を書いている。
手垢のついた使い慣れている題材、遠距離恋愛、三角関係、恋愛結婚をつかってまとめているところは、かなり大変で、こんなことも世の中にはあるかもしれないなと思い、関心した。
こののち、小手鞠るいの作品をいろいろと読んでいくことになる、きっかけとなった作品。
ふむふむなるほどねと感じ入った作品の一つである。
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