『死ぬことと見つけたり 上・下』
勧められた時代小説といえば、「死ぬことと見つけたり 上・下」著:隆慶一郎である。
二〇〇八年、高校二年生になったさくらは東京のアイドルオーディションを受けようと決意し、郵送する応募書類を片手に登校しようと自宅を出た途端、軽トラックにはねられてしまう。
十年後、とある洋館で記憶を失ったまま目覚めると、ゾンビの少女たちに襲われ逃げ出すが、自身もゾンビ化していた。そこに現れた巽幸太郎から、佐賀県の認知度を上げるご当地アイドル企画のために甦ったことを知らされる。
蘇った少女たち七人でフランシュシュを結成。様々な活動をしていくが、単独ライブ前に再び軽トラックにはねられたさくらは、ゾンビ後の記憶をなくし、活動意欲もなくしてしまう。
メンバーたちの励ましでステージに立ち、豪雪でステージが崩壊する大ハプニングにも負けず、フランシュシュは歌い続ける。さくらは記憶を取り戻し、メンバーと和解。アンコールの声に応え、再び歌い始めるアニメ・ゾンビランドサガの最終回アイキャッチ「アイドルとは死ぬことと見つけたり」についてあーでもないこーでもないと毎日死地にいるつもりで語り尽くすお話……ではない。
佐賀鍋島藩の斎藤杢之助は、死人として生きる典型的な葉隠武士である。島原の乱では、莫逆の友、中野求波と敵陣一番乗りを果たす。だが、鍋島藩を天領としたい老中松平信綱は彼らの武功を抜駆けとみなし、鍋島藩弾圧の策を練る。
鍋島三支藩・親類四家とのいつ果てるともない確執の中、牛島萬右衛門と中野球馬、杢之助ら葉隠武士三人は名君の誉れ高い藩主鍋島勝茂を助けながら、ことあるごとに佐賀鍋島藩を潰そうとする老中松平信綱の謀略に対して胸のすくような活躍をみせていく。そんな男の死に方を問う葉隠武士道物語だ。
藩主亡き後を狙う老中の暗躍と、江戸幕府からの圧力、次期藩主の脆弱さも絡み合いながら、いよいよ藩主勝茂が死の床につこうとするまさにそのとき、悲劇が起こる。
作者急逝のため未完となり、読者は生殺しとなるのだった。
文庫本の編集あとがきには、作者隆慶一郎の創作メモによる完結までのあらすじが記載されているため、どのように締めくくられるつもりだったかを窺い知ることはできる。
勧められた際、「作者が途中でなくなって未完に終わってる」と教えてもらったけど、まさか本当に未完に終わってるとは、まったくもって残念至極、無念である。
これほど面白い作品を書きたいと思ったのは言うまでもない。
めちゃくちゃ面白い作品を書きたい、と思えた作品の一つである。
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