『頭がよくなる思考術』

 何度も読み返す本といえば、「頭がよくなる思考術」著:白取春彦である。


〈ワトソン・システム〉と名付けた、直観的や反射的にすばやく反応して意識的な思考や努力を必要としないオートパイロット思考は「いい加減な思考習慣によって動かされる、私たちの中にある単純素朴な自己セルフであり、一生をかけて身につく、ごく自然で、最も安易な方法をとる自己セルフ」である。

 一方〈ホームズ・システム〉とは、より慎重にかつ徹底して反応に時間を要して論理にかなった思考であり「私たちの中にある向上心ある自己セルフであり、ホームズの思考法を日々の生活に応用する方法を学んだら、そのようになる自己セルフ」のことで、モチベーションが必要不可欠である。

 そんな『シャーロック・ホームズの思考術』についてあーでもないこーでもないと見るだけでなく観察し続ける本では……もちろんない。


 参考までにいうと本作は、『超訳 ニーチェの言葉 』を書いた白取春彦である。


 購入した当時、まさにわたしは精神的肉体的に困窮していた。そんな状況では正しい判断、より良い答えが出せないのは致し方なかった。何より必要なのは、静寂と安眠、その環境と時間である。とはいえ、それらは簡単には手にできない。すがる思いで書店という名の病院へ駆け込み、書籍という薬を探した。黒い表紙、文庫本よりは大きめで一二〇ページほどの薄い本作が、わたしの目に飛び込んできた。


Ⅰ「答えを出せる」頭をつくる

Ⅱ「迷わない」頭をつくる

Ⅲ「楽しく生きる」頭をつくる

Ⅳ「クリアな」頭をつくる

Ⅴ「創造する」頭をつくる


 この手の本は、はじめから読むもよし、読みたいところから読むもよし、考えもなく開いたところを読むもよし。読みたいように読めばいい。

 そもそもわたしたちは、「考える」と安易につかっているが、どう考えればいいのか、学んできただろうか。

 人は、生まれながらの天才がいるわけではない。

 考え方を身につけたとき、頭が良くなる生き物である。

 そして、自ら考えることで、自分で答えが出せるようになるのだ。


 読んでいて大事だと感じるところはいくつもあるが、勧めたいのは「『なぜ、どうして?』と問え」というところだろう。

 理由がわからなければ、何故と問うのは自然なことだ。

 そして、問われた者は答えなくてはならない。

 にもかかわらず、現実は「うるさい」「うざい」「聞いてくんな」と煙たがれる。

 ドイツ人と日本人を比較すると、ドイツ人は子供から大人まで「なぜ?」と問うのに、日本人は「なぜ?」と問うことが少ない。そればかりか問う事自体が嫌われる。

 ――なぜ?

 少なくとも、創作を考えるときや生きる上でも、問うことは大切である。


 特別すごいことが書いてあるわけではないが、頭がクリアになる。必要な人には必要である、そうでない人には重要ではないかもしれない。


 迷ったろ思い悩んだりしたときに手に取りたくなる、そんな一冊である。

 

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