『鴨川ホルモー』
ちょっと変わった面白い青春作品といえば、「鴨川ホルモー」著:万城目学である。
「思い出の食、捜します」の一行広告を頼りに、京都府京都市下京区烏丸七条にある真宗大谷派の本山真宗本廟、通称東本願寺を背に正面通りを歩くと門前町あたりに看板ものれんもなくひっそりと建つ食堂がある。訪れるのは仕事や家族、恋や人間関係など様々な悩みを抱えた人達だ。看板娘の鴨川こいしは依頼客の悩みを真摯に受け止め、元刑事だった父の鴨川流は刑事の勘と洞察力を駆使して、本当に望む思い出の食を突き止め、一流の京料理人としての腕をふるって再現する『鴨川食堂』について、あーでもないこーでもないと、生きる勇気と人生の喜びを見つけていく物語……ではもちろんない。
第四回ボイルドエッグズ新人賞受賞した万城目学のデビュー作。
京都大学に入学した安倍は葵祭りのエキストラのアルバイトをしていた。その帰り道、京大青竜会なる怪しげなサークルの新歓コンパで美しい鼻を持つ早良に一目惚れし、うっかり入会してしまう。そこには大木凡人にそっくりの冴えない女子の楠木、日本オタクの帰国子女の高村、俺様オーラ全開なイケメン芦屋など一風変わった奴らがいた。実は彼ら青龍会は、オニと呼ばれる式神を操り戦わせる謎の競技「ホルモー」を行うサークルだった。安倍と彼女彼らの二年間の青春と恋愛を描いた作品である。
陰陽道を取り入れた奇抜な設定とテンポのよい作風。筋は通っているし、主人公や個性あるキャラクターや甘酸っぱい青春もの、あるいは恋愛ものとしても読める。
数々作品があるなかで、一番面白い彼の作品はやはり「鴨川ホルモー」であろう。
この作品は発売してまだ間もない頃、面白い青春モノを探していたとき、図書館で手にした。タイトルから関西、京都を舞台にした作品だというのがわかった。そうでなければ手にしなかったかもしれない。
陰陽師や式神を使った作品は、これまでいくつもある。それこそ手垢まみれの題材にも関わらず、奇抜で面白いとおもえる。
はっきりいうと、本作は「バカバカしい面白さ」である。
印象に残る登場人物もさることながら、面白さは作品の肝である「ホルモー」にある。断じてホルモンではない。
ホルモーとは何か。これだけで前半は読者を作品に引き込んでいる。ゆえに後半は前半にくらべると、普通に感じる。
ちなみに「鹿男あをによし」は逆に、前半は普通で後半が面白くなる。
物足らなければ、鴨川ホルモーのスピンオフ的な短編集「ホルモー六景」がある。こちらはバカバカしさではなく、青春もの。物語としては、本編より面白いかもしれない。
正直いって、こういうバカバカしくて面白いものは書けないかな、と思った作品の一つである。
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