『図書館戦争シリーズ』

 ラノベで思い出したのが、「図書館戦争シリーズ」著:有川浩である。


 古来から、十干十二支の組み合わせによる暦法に基づき、戦いの始まった明治元年が戊辰の年に当たるため、慶応四年・明治一年(一八六八年)に始まった鳥羽・伏見の戦いから約一年半に及んだ戊辰戦争、その終結に至った新政府軍と旧幕府軍との最後の戦闘、この戦いの最中に干支が戊辰から己巳に替わったことから己巳の役、あるいは旧幕府軍蝦夷地での根拠地から五稜郭戦争とも呼ばれる「箱館戦争」についてあーでもないこーでもないと図書館で語り合う物語……ではもちろんない。


 時は西暦二〇一九年、舞台は架空日本。

 高校三年生の時に出会った一人の図書隊員に憧れて架空軍事組織・図書隊の入隊を志した笠原郁。メディアの自由を巡る戦いをしながら郁の成長と恋愛を描いたSF作品である。

 本編シリーズ全四巻と外伝『別冊 図書館戦争』全二巻。漫画化やアニメ化、実写映画化やテレビ化もされている。


 アニメ化される前から、密かに図書館戦争シリーズを読んでいた。

 自衛隊三部作と称される、自衛隊と未知の物体や生物との接触をテーマにした、陸上自衛隊の「塩の街」、航空自衛隊の「空の中」、海上自衛隊・海上保安庁・機動隊の「海の底」を読破していった。

「図書館内乱」に登場した小説の小説化「レインツリーの国」や「空の中」「海の底」のスピンオフも収録されている「クジラの彼」、そして「阪急電車」と読み続けていく。


 初期作品にはSFやミリタリー関連の作品が多く、図書館戦争シリーズもその系譜に入る。

 ミリタリーには興味はまったくなかったし、この頃はSFにさほど興味もなかった。ならばどうして、有川浩の小説を読んだのか。

 タイトルが目に入ったからに他ならない。

 図書館の棚に「図書館戦争」というタイトルの本があったら、おもわず手に取るでしょ。取らない?

 図書館戦争シリーズを読みつつ、彼女の過去の作品も読んでいった。つまり、わたしにとって有川浩は、「塩の街」ではなく「図書館戦争」だった。


 作者が「大人向けのライトノベル」といっているように、本作の文体はラノベに近い。

 ラノベの描写文は手紙の定型文とおなじなので、読者に情報が伝わればいい。だから、作者はキャラの造形も場所の風景も簡単に済ませる。読者はそれをわかった上で、描写を読んだつもりになる。作者と読者の利害が一致して、はじめてラノベを読むことができる。

 一般の文学や文芸作品は、散りばめられた文から読者側が拾い集めるように読み取っていくので、作者は想像力を刺激されるように書く。

 双方の文体の違いを理解し、ラノベ慣れ、あるいは読書慣れをしてない人には、本作は読みにくいと思われる。

 理由は、視点の切り替えが激しい点だ。

 もちろん、視点の入れ替えの多い漫画やドラマ、映画などを見慣れていればそれほど苦にもならないだろうし、慣れれば文字数は少ないので読み進めやすい。

 

 読みながら、「この人はラブストーリーが書きたいんだろうな」と思った。郁の恋愛シーンはイキイキしている。それにスピンオフの「レインツリーの国」や「クジラの彼」を読むと、本編よりも面白い。とても読みやすい。

 その後、植物に詳しい草食男子との恋愛を描いた「植物図鑑」が出たので読むと、「あー、書きたいものを書いたんだね」と思ったことなどなど、いろいろ思い出す作品である。

 

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