『名探偵夢水清志郎事件ノート/名探偵夢水清志郎の事件簿』

 ミステリーの児童書といえば外せないのが、「名探偵夢水清志郎事件ノート/名探偵夢水清志郎の事件簿」著:はやみねかおる、青空文庫、講談社から刊行である。


 はやみねかおるといえば、「怪盗クイーンシリーズ」や「虹北恭助シリーズ」や「都会のトム&ソーヤシリーズ」、「モナミシリーズ」や「大中小探偵クラブシリーズ」や「ディリュージョン社の提供でお送りします シリーズ」などもあるのだけれども、やはり夢見清志郎シリーズは外せない。

 なぜなら、最初に手にとった作品だからである。

 謎が面白い、わかりやすい、だけではない。

 特筆すべきは、登場人物が誰ひとり死なず、みんなが幸せになれるというところだろう。

 ミステリー小説を書くなら「必ず冒頭に死体を転がせ」と言われるほど死人と相性がいいジャンルであるにも関わらず、児童書であることを加味しても、人が死なず結末がハッピーエンドになるミステリー作品は多くはない。

 見習いたいものである。

 しかし、人が死なないミステリー小説なんか面白いのかという意見もあるだろう。

 見た目は小学一年生だが中身は高校生探偵をかれこれ二十七年もやっててメガヒットを出している名探偵コナンをみればわかるとおり、やたらと人が死に、毎度のごとく殺人事件が発生している。

 はじめの頃、死体を目の前にしたら悲鳴を上げていた同級生たち。

 いまではすっかりたくましくなって事件解決に協力を惜しむどころか、率先して解決しようとしている。

 そんな小学一年生がどこにいるのやらと思いつつも、みんな楽しんでみている。そう考えると、ミステリーを面白くしているのは殺人トリックなのは間違いない。

 元ネタである江戸川乱歩の少年探偵シリーズにおいて、少年探偵団と明智探偵のライバル怪盗二十面相は、不必要な殺生をしない盗賊として暗躍するも、あまり人が死なない。

 江戸川乱歩は子供たちになにを読ませたいのかを考えて、殺人を多くは書かなかったのだと思う。

 はやみねかおるもまた、読者である子供になにを読ませ、なにを与えたいかを考えて名探偵夢水清志郎シリーズを書かれたのだろう。


 お話を書くとき、読み手になにを与えるのかを思い出させてくれる、そんな作品である。


 

 

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