『谷川俊太郎詩集』

 詩で覚えがあるのは、『谷川俊太郎詩集』著:谷川俊太郎である。


 厳密には、この中に記載されている『朝のリレー』である。

 さらに詳しく述べるのなら、最初に目にしたのは国語の教科書だったが、耳にしたのはもっと前。

 子供の時分、朝食にラジオが流れていた。

 なぜラジオだったのかは知らない。

 のちにキッチンにテレビが置かれるまで、朝食時にはラジオから流れる声や音が響いていた。

 毎日かかさず聞いていた番組は、『心のともしび』という、宗教法人「カトリック善き牧者の会」によるカトリック系布教番組だった。

 ちなみにうちは、キリスト教ではなく浄土真宗である。

 補足するなら、日本人は無宗教ではなく、神道だと思う。

 それはさておき、『心のともしび』という番組はベートーベンの交響曲第6番「田園」の第1楽章冒頭一分ほどの心地よい音色が流れる中、「心に愛がなければ、どんなに美しい言葉も、相手の胸に響かない。聖パウロの言葉より。カトリック教会がお届けする『心のともしび』」ではじまる。

 ゆえに、ベートベン交響曲第6番「田園」の第一楽章を聞くたびに、心のともしびのラジオを思い出す。

 刷り込みとは面白い。

 ともかく、谷川俊太郎である。

『心のともしび』のラジオを聞いていたとき、あるいは前後だったかもしれない。

 あるCMが流れていた。

 それが谷川俊太郎の『朝のリレー』だった。

 ネスレのテレビCMを見たことがある人もいるだろう。

 あの、朝のリレーが朗読されていた。

 聖教新聞のCMだった気がする。

 ちなみに当時は地方紙を読んでいた。

 眠い目をこすりながら朝食を食べつつ、『朝のリレー』を拝聴する。

 これほど最適な時間はないだろうと思って、毎朝『朝のリレー』を聴いてきた。

 なので国語の教科書で、朝のリレーの詩をはじめて活字で見て、「谷川俊太郎という人の詩なんだ」と思ったことを覚えている。

 以来、わたしの中で詩人といったら、谷川俊太郎となった。


 作品に詩的なものをいれようと思うようになったのは、谷川俊太郎の影響である。

 

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