『ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉』

 小説で覚えているのは、『ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉』著:村上龍である。


 断じて、村上春樹ではない。

 村上といったら龍である。

 断じて、隆でもない


 村上作品なら、『限りなく透明に近いブルー』とか『海の向こうで戦争が始まる』とか『コインロッカー・ベイビーズ』、それとも『69 sixty nine』とか『愛と幻想のファシズム』とか『音楽の海岸』、もしくは『五分後の世界』とか『KYOKO』とか『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界Ⅱ』などいろいろあるのになぜ。

 図書館にあったから、に他ならない。

 とにかく、最初に村上龍の小説を読んだのが『ラブ&ポップ』だった。

 内容よりも文体に驚いた。

 なにこれー、というのが最初の感想だった。

 読みやすかったけれど、会話の羅列だったり、カギカッコがなかったり。

 これまで、小説はストーリーとして楽しんできた。

 要するに読みやすいものを読んできた。

 絵画にしろ書道にしろ音楽にしろ、それぞれ作者の表現が形にされる。

 小説にも作家の表現が如実に現れる。

 むしろ表現しないといけない、ということを見せつけられた。

 のちに『村上龍自薦小説集』全8巻を読み、また一冊一冊読んでいき、エッセイや対談も読み、絵本にも手を出したものの、『すべての男は消耗品である。 最終巻』はまだ読んでいない。


 他の作家さんを読むきっかけになった。

 お話を読むのではなくて、「この作家さんはどういう表現をしているのか」というものの見方になり、読み方が変わってしまった。


 庵野秀明監督が新人(?)映画監督として映画を撮った原作でもある。

 上映当時は見なかったし、その後も長らく見ることはなかった。

 紹介されていた雑誌や、村上龍と庵野秀明の対談など、書籍としては目にしたことはあったので、どのようにこだわって作ったのか活字で先に知っていた。

 シン・エヴァンゲリオン劇場版が上映されたのを機に、『ラブ&ポップ』の映画を見てみた。特典映像もみた。

 当時の空気感がフィルムに焼き付いていたし、エヴァ旧劇場版でも使っていたようなアングルを多用して撮られていた。

 これを普通のアングルで撮影していたら、指輪がほしいから援交して稼ごうとしてちょっと痛い目見たけど大人の階段を登った気がするひと夏の思い出、といった凡庸なものになってしまっていただろう。

 アングルの面白さで見れた気がする。

 

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