『マグローヒル科学技術用語大辞典』他

 よく覚えている。


 忘れていけないのは、『マグローヒル科学技術用語大辞典』編集:マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会である。

 ケースに入っている広辞苑さながらの大辞典である。

 当時、学校で「朝の読書週間」なるものがあった。

 授業前の10分間、なんでもいいので読書するというもの。

 ルールがあるとすれば、必ず図書室で借りてきた本を読むこと。

 借り忘れた場合は、図書委員が数冊、図書室から借りて用意してもってきた本の中から選び読むこと。

 あとで短めの感想文を書かなくてはならない。

 10分しか読む時間がないのに感想文となると難しい。

 いろいろ考えて手にしたのが、この大辞典である。

 なぜに辞典?

 当時、自分がもっている国語辞典を休み時間によく読んでいた。

 図書室においてある辞書になると、出版社が違うというだけで書いてあることが違って、なかなか興味深かった。

 なのではじめは国語辞典にしようと考えていた。

 だけど、どうせ読むなら興味がある本のほうが面白い。

 というわけで、科学について興味を持っていたのでこちらの大辞典を借りた。

 水の沸点は百度ではないとか、アンドロメダは星雲でなく大銀河だとか、実に興味深いことがいろいろ書かれていて面白かった。

 欠点としては、広辞苑なみに値段も高く、大きく、重いこと。

 借りたはいいけど、持って帰るのが大変だった。

 語彙を調べるのはいいのだけれど、読むとなると気軽さに欠ける。



 当時、家に平凡社の『世界大百科事典』があり、暇さえあればよく読んでいた。

 ただ古いので、目まぐるしく変わる世界情勢にはついていけないところもあった。

 わからないことがあれば、いまではネットで検索すればすむのだけれど、当時は容易ではなく、このような百科事典や辞書が大いに役に立ってくれたのである。

 こういう百科事典がめくっていると、たまに紙魚がこんにちはと現れる。

 虫干ししないといけないのはそのためだろう。



 家にあった岩波書店の『広辞苑』をめくるのも好きだった。

 ページが薄くて紙が軽い。

 新刊がでたときに買ってもらったものの、飛び上がるほど嬉しかったかと聞かれたら、そうでもない。

 これを枕代わりに寝てみよう、と試したことがある。

 枕にしては高すぎる。

 もっと薄い、本の背幅が3センチほどが理想である。



 誕生日に、学研の『新・古語辞典』を買ってもらった。

 もちろん、うれしくはなかった。

 なぜ古語辞典だったのかというと、古い言葉に興味があったからなのだけれど、古文のときくらいしか役に立たなかった記憶がある。

 しかも重かったので、小学館の『全訳古語例解辞典コンパクト版』を多用した。



 忘れてはならないのが、角川の『類語新辞典』である。

 帯に「わが国初の画期的シソーラス。適切なことばを使い分けるための文章宝典」と書かれている。

 シソーラスとは、もとは倉の意。

 知識の宝庫、宝典、辞典。多数の同義語や類義語などを、意味により体系的に分類し、整理された類語・関連語辞典をさしていうそうだ。

 逆字引辞典もほしかったのだけれども、類語を探すには重宝する辞典である。

 いまではネットで検索したほうが早くなったものの、いざというときの手元にある存在は、安心感を与えてくれる。


 作品を作るにあたって下調べをする必要があるのを身を持って知り、調べるための辞典や辞書の大切さを教えてくれた最初の辞典である。


 

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