4.引っ越し?

「よし、皆集まったな?」


お父様が入っていらして、空気が一変しました。

ガヤガヤしていたものが、すっと緊張感を孕んだものに。


「皆知っての通り、月乃は皇子の許婚だ。それで、馬鹿兄が后教育の為に月乃を

 寄越せと言ってきたのだが、どう思う?」


「お父様…?今、何と?」咲楽姉様。


「月乃を寄越せと、聞こえた気がするのですが?」夕香姉様。


「どうですって?そんなの、武力行使オ・ハ・ナ・シに決まっているじゃない!」お母様。


「父上、殴り合い直談判してきていいですか?」お兄様。


「おねえさまをわたしからとりあげる…?おじさまもいできていい?」菜乃ちゃん。


「あの、わたくしはかまいませんよ?」


「「「「「「え?」」」」」」


黒い笑顔から一転、絶望的な顔をする家族。不思議です。


「つーつつつ月乃ちゃん!?わたくし達と会えなくなっても良いの!?」


「え…?なぜあえなくなるのですか?」


「だって、つれていかれるんでしょ?じゃあ、あえない」


成る程、皆と考えている事が違ったのですか!

皆は、連れていかれる=皇城で暮らす、という発想になって居たのですね。


「きさききょういくだけなら、なにもすまずにかようだけでも

 かまわないのではないでしょうか?

 といますか、みなさんはなぜそのようなななめうえのはっそうにいったのです?」


「あっ…」「あっ…」「あっ…」「あっ…」「あっ…」「あっ…」


          『あぁーーーーー!!!』


「勘違いしていた。馬鹿とか言ってすまない兄上!!」


「はぁ、皇帝殺害する前で良かった…」


…お母様、着眼点がずれています。

と言うか、その話し合いの為だけの集まりだったのですか?

時間の無駄な気が。



<><><><><><><>



「おひさしゅうございます、こうていへいか。

 はいえつのえいよをたまわり、こうえいしごくにございます」


翌日、誤解が解けたので早速后教育を受けに参りました。

目の前にいるのは伯父様、皇帝雅仁様です。この国は日本に近くはあるのですが、

着物が普段着でドレスが正装、建築物は和洋折衷と言う、良く分からない世界

なのですよね…。たぶん、大正とか、それくらいの世界観?だと思います。


「おお、久しぶりだな!もっと近こうよりなさい。

 大きくなったなぁ、あいつは会わせてくれないからな。はっはっはっは!」


豪気で器の大きい方ですがこう見えても学園を首席で卒業された凄いお方なのです。

まあ、皇帝陛下なので凄いのは当たり前なのですが。


「あの、きさききょういくとは、ぐたいてきにはなにを?」


「礼儀作法や、世界史、魔法学、后の心得や、要人に対する受け答えを教わるのよ!

 それはそうと月乃ちゃん、あの女ごころの分からないバカ息子に

 ガツンと言っていやってくれたそうね!」


「こうごうへいか!?あぅ…それには、ふれないでくださいませ…!」


「あらあらごめんなさいね。ダイジョブよ!怒っていないから」


うぅ、この方は現皇后梨咲様。元は侯爵令嬢で、とてもご気さくな為、国民に人気のあるお方です。可愛い子は弄りがいがあるのよねって、良く弄られます…。


「あの、そろそろごぜんをしつれいしますね。そろそろじかんですので」


「まぁそうね!教師は小百合様よ、頑張ってね」


小百合様…、小百合叔母様ですか!?お厳しい事で有名な皇妹、小百合様。

完璧なる淑女と諸外国に名高い外務大臣洸丞様の奥方様です。

うぅ、お后教育、前途多難そうですね…。

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