第11話 お強敵だちと私
森ガールデビュー!
私は今ススキノから徒歩10分、西の森へ来ています。
まあ、危険といえば多少危険だけど、私に失うものはない!あるのか?
デスペナってどうなってるんだろう。ニーズヘグにまた聞かないと。
寂れた門から出ると直ぐに森だ。
どういう森かと言うと、森を思い浮かべた時に出てくる森っ!という感じの森だ。
私の森感がズレてた場合は各自で補填して欲しい。
うろうろとしながら鬱蒼としたシダ類を眺めていると、森に入れそうな獣道を見つけた。
獣道があるということは人も来たりするのだろうか?少なからず最近はないか。
植物図鑑を片手に森へ侵入する。これが地味に重い。
しかし内容は素晴らしい。植物の分布から特徴、図解、簡単な利用法まで載っている。
試しに引きちぎった草を調べる。…オオバコ。却下だ。ゲーム種が良い。
だが周りを見ても全体的に見たことがあるような感じの草ばっかりだ。
いや、草は全部似たような感じだからか?
ミツリクサ。…多分ゲーム種だろう。薬効は止血、殺菌。かなり普通な薬効である。
なんかすごい草とか無いかな。傷の治癒とか。
そんなんあったら回復薬いらんか。
こんな草と草を混ぜて本当に回復薬なんぞ作れるのだろうか。
それこそ魔法だ。あ、魔法か。あー、魔法使うのかぁ。
どうやったら使えるようになるんだろうか。
そんな事を考えながら草を抜く。根っこやらも丁寧に掘り出すのが良い。
こういう細かな仕事がいい薬には必要になる。はずだ。小説とかによれば。
取り敢えず草をリュック(拾い物)に入るだけ詰めて帰ろう。
ざくざくと山へ分け入っていく。次第に道はなくなり、大きな木が増えてくる。
ピッピッピと鳥の鳴き声がして、森を見上げるが姿は見えない。
風を受けた森が、ざざざ、とざわめいて草の匂いが吹き抜けた。
山、ええやん。
生まれてこの方ハイキングとかは学校行事でしか行ったことがないわけだが意外に良い。
リアルでは山菜を獲るのも山の権利とかで難しいわけだがゲームなら問題ないだろう。
もし地権者が居たとしても、ここはススキノ。
もはや法も秩序も存在しない世紀末無法都市なのだ。
私は心持ち隠れながら草を採取していく。バレなきゃいいのだ。リアルでもそうだ。クケケ。
「チッ!チチッ!」
私の頭上からまた鳥の声がする。また上を見るが鳥は居ない。
そうそう人間に見つかるもんでもないのだろう。と思っていると
「イタッ!」
顔になにか当たった。だがまあ言うほど痛くもない。
あっ、また降ってきた!
私の顔をめがけて落ちてきたそれをバシっと掴む。
どんぐりだ。私の顔に向けてどんぐりが落ちてくる怪現象が起きている。
いや、よく見れば木々の枝の向こうに走り回る影。
これは…!
「チチッ!」
栗鼠だ!栗鼠が私に向かってどんぐりを投げているのだ!
なんたる可愛さ!お友達になりたい!
「チー!」
どんぐりが凄い来る!可愛い!
あっ痛い。痛いぞ。明確に痛くなってきた。
えっなに。うわ、ちょっと。
「ヂュッ!!」
うわっ栗鼠の投球フォームがすごい!メジャーリーガーのやつだ!
明確な殺意!野生のトルネードだ!
「え゛ゔッ!」
私は決して誰にも聞かせられない乙女の秘密の声を出しながらどんぐりを腹部に受けた。
重いっっ…どんぐりのはずなのにまるで鉄球のようだ。控えめに言って死ぬ。
ゲームの痛覚設定のおかげで鈍い衝撃のみが来るが、ヤバい感じがすごいする。
「ヂュアッッ!!」
どんぐりが私の頭部を捉えた。
ゴンッという鈍い重みが頭を振ったと思ったら、真っ暗になった。
【exzncdw onlne】
あっロゴが出た。強制ログアウト。これは多分死んだのだ。
森で、私は栗鼠に…げっ歯類に…。
しばらくゴーグルを着けたまま椅子に座ったままになっていた。
恐怖とか放心とかではない。霊長類としてのプライドが怒りを訴えていた。
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