第8話 植物と私
お姉ちゃん、元気にゴールドラッシュしてますか?
私は今、路地裏の廃墟で草を干しています。
私は結局バーサーカーにもならず、街を出ることもせず、一人廃墟で草を干している。
理由は単純だ。これは多分右からトリカブト、ヨモギ、タンポポ。
トリカブトらしき草を広場で大量に食べたところ、死んだ。つまり暫定トリカブトにはそれらしい成分が入っているということだ。
このゲームは作り込まれている。作り込まれているというレベルではない。
草を食べると味は苦く、口は痺れて、呼吸が苦しくなった。トリカブトに含まれるのはそういう毒だと聞いたことがある。
パラケルスス曰く、毒は用量が作る。漢方ではトリカブトを微量だけ薬として使用するとも聞く。
つまりこのトリカブトは薬になる。詳しいことは調べなきゃならんが、なる可能性がある。
世の薬を作る錬金術師やら薬師やら調合師やらがどう薬を作っているかは分からないが、ここから始めて間違うことはないはずだ。
紐を柱と柱に結びつけて草を吊るす。外見より廃墟の中は存外綺麗である。この街が世紀末になったのも最近なのかも知れない。
夕暮れの廃墟の中で作業を終えると、私はステータス画面を開いてログアウトした。
『ログアウトします』
『……【exzncdw onilne】……』
あ、ロゴかっこいい。
プン
バイザーを外して椅子の上から起きるとすっかりと昼。向こうは日が暮れていたから変な感覚だ。
すごい、日が暮れるまでゲームをしてたのにまだ昼だ。
ゲーム内だと時間が4か5倍というのは本当だ。3だっけ?またニーズヘグに聞こう。
椅子型筐体から体を起こしパタパタとキッチンへ向かって冷蔵庫の扉を開く。
お昼ご飯はコンビニのとろとろ親子丼だ。レンジにインしてチンする。
スプーンが無、ある!良かった。
最近のコンビニご飯は美味しいなぁ…あ、草と薬について調べなくては。
ネットで調べてみるも、私が広場で見かけた正八角形の葉っぱの植物も、葉が二重螺旋になった植物も検索には引っかからない。
にわかに不安になる。アレは本当にトリカブトだったのか…?いやトリカブトは合ってるぞ。
じゃあ私が見かけた植物たちは何だ…?
新種?いや、ゲーム内にのみ存在するゲーム種と言うべきか。
あ、なんか出てきた。
【exzncdw植物学会】
学会?なんかすごい論文っぽいのが並んでる。
『exzncdwの生態系は一部が現実世界と似ているが、大部分で完全に独自の様相を持っている。』
『この学会はその仮想生態史を研究する有志の集まりである。』
なるほど。よく分からんが、ちょっと分かる。シュミレーター生物学とか言うやつだな。
一応、大学は理系なので薄っすら分かる。
八角形のあった。二重螺旋も。はぁ~。ナルホド。分からん。
まず薬効とか書いてない。そりゃそうか。こいつら分類学だ。
『そういう資料』が欲しい。無いのだろうか。
いや、薬物生産職のツールとかはそういうもんだろう。
植物図鑑とかレシピの共有とかができるなんかだ。多分。
あ、レシピなら掲示板とかにあるのでは!
と思いましたが、見てみると『赤の3』やら『黄色の1』やら『結合』だの『分離』だの
専門用語が多かったです。ツールのねぇやつには分かんねぇなこれ。まず錬金術師のスレが【ヘルメス】と【インヤン】に分かれている。
何だそれは。あ、【ダーマ】とか言うのもある。何で3つもあるんだ。
「……よし!」
理解を諦めてリサーチを終えてログインする。あ、トイレ。…ジャー。
「よし!」
ログインする!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます