「悪」とは何か。小学生の場合

 悪について最初に考えたのは小学生の頃で、あまりにも漠然としているので「悪人」を定義することから始めた。漠然も定義も、当時の私はその言葉の意味も存在も知らなかったはずだ。


 小学生の私はこう考えた。薬をやっている人にとっては、売人こそが「善人」ないし、「良い人」であり、取り締まる人は「悪人」だと。しかし、社会的には正反対だ。一言で悪人を言い表すには何かあるだろうか。


 そこで考え付いたのが、悪人とは「自分にとって都合が悪い人」という結論だった。今なら自分を発言者と言い換えるが、なかなかいい線いっていると思う。


 近頃の私は、こんなテーマで真面目に考えることもないし、脊髄反射で「善人なんて居ない。全員が悪人だ」とか、「私こそが悪人だ」とか、どうしようもないことを言うに決まっている。あの頃に比べて、多少の知識はついただろうが、それは贅肉のようなもので、動くことをやめただけのことかもしれないと、今更ながら思うのだった。

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悪文集 石嶺 経 @ishiminekei

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