まさかイカサマ

 賭博を題材にした作品にイカサマはつきものだが、現実のものはあんなに派手ではないし、成功したからと言って必勝というわけでもない。


 それになんというか、雑なのである。


 UNOで賭けをしている時、何人かが便所に行き、休憩になったのだが、ワイルドカードを何枚か抜き取ってみたりとかそのレベルだ。これは私ではない。確かにUNOなら、何枚か抜き取ったところで、まずバレはしないだろうが、だからといって……。


 麻雀なら左手芸とか、積み込みだろうが、前者はともかく、後者は並大抵のことではない。ノーレートでやってみたことがあるが、それも、賽子がないので、適当に親が山を切っていたから出来たことだ。自分ではなく、人の手に字一色を積み込んだ……つもりだったのだが、目に付いた字牌を適当に拾っていたので、聴牌はしていなかったらしい。


 チンチロのイカサマが一番雑であった。賽子を転がすだけなのでイカサマの入る余地が無い、と諦めてはいけない。どのギャンブルでも数をこなせば疲れが出る。そこをつけば何事も容易い。賽子を振る。この時、賽子を手で覆うようにして、相手から出た目が見えないようにする。そうして出た目がたとえば一二三なら、一の目に指を引っ掛け、手をどかす。一の目なら変わらず倍払いだが、二三なら取り敢えず役になる。四五六なら振り直し。六分の五の確率で前より良くなるのである。言うのは簡単だが、相手に見せないように自分だけ目を確認し、どの賽子を引っ掛ければ良いか判断し、不自然にならないように引っ掛ける。これを賽子を振って手をどかすまでの、たかだか一、二秒でやるのはコツがいる。


 種を明かせばこんなものだが、疲れていると見落としてしまうものだ。

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