くだを巻きたい

 親の飲んでいる酒を勝手に飲んだ(というより舐めた)ことはあるが、「酒を飲んだ」と胸を張って言えるだけ飲んだのは、やはり高校生の時分であった。例の修学旅行から日は浅かったように記憶している。


 初めての体験に、私はひどく興奮していた。何しろ初めてなのである。酒をレジに通す時の冷や汗も覚えている。つまみという響きだけで酔い痴れていた。ついでにその飲み会場となった知り合いの家も、始めて行くところで少し緊張していた。今でもそうだが、知らない家に入るのは落ち着かない。


 そうやって始めて飲んだ酒、というかビールは、別に美味しいものではなかったが、飲めないほど不味いというわけでもなかった。ならば、飲むしかなかろう。私のイメージはニュースで見る酔っ払いだ。あんな風に自分を失くしてしまうなんて、想像がつかない。その境地に達してみたかった。アルコールより、それを飲む自分に酔い始めた。

 結論から言えば、憧れていた酔っ払いほどに泥酔はしなかった。そもそも、そこまで多くは用意していなかったのだ。ほろ酔い、ぐらいのものだった。


 何故か飲んだ後に、公園に行こうという話になり、そこで年甲斐もなく回転遊具で遊んだのだが、体と共に酒が回り、かつて経験したことのない吐き気に襲われた。其処に居た全員が同じだったのだろう、みな苦々しい顔をしていたが、私一人、これが「二日酔い」の感覚だろうな、とニヤけていた。くだらないガキだ。

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