幕間
世界の中枢にて比類なき絶対性を有する唯一無二の存在が二つ並び立っている。
常人であれ異常者であれ、彼ら二人を見れば間違いなく一角の頂点に君臨するモノ、即ち王者としての威勢を見出すだろう。
片やあらゆる恒星を飲み込む黄金の輝きを放つ魂と。
片やあらゆる宇宙の闇を蝕む純銀の暗さを内包する魂。
双方は全く真逆の在り方をしていて、空を住処とする神と地の底を住処とする悪魔が同じ地平に立てないように本来ならば同じ領域に同在する事は叶わない。
しかし何事にも例外はある。この領域では一定の条件さえ満たせば、どれだけ相反する性質を宿していようと共存を可能にする。
「此度の事象はこのようになりましたか。はてさて…彼らの奮闘ぶりは如何でしたか?」
「悪くはない」
天元真理と聖条真也、二人の少年少女による吸血鬼討伐の一部始終を観覧していた二人は先の戦闘を映画を見るような感覚で楽しんでいた。
「彼女の仕上がりも中々ですな。天元の家は古来より人外を相手に戦い続けてきた怪異殺しの
「ああ―――」
帰ってくる返事にはどこか覇気がない。
生まれついて覇者の気質を持つ黄金の存在。
この世に存在するあらゆるモノを踏みにじり、制覇する事を至上の愉しみとする彼にしては妙に落ち着いている。
自身の愉悦の感情を表に出す事を渋るような性分でもないというのに…ともすればこれは、
「悪くはない…しかし満足はいかなかったというところですかな?」
先の二人の戦いぶりについて、些か物足りなさを感じているという事だろう。
「そうだ。確かに貴様の言う通り、双方共に悪くない仕上がりだ。年齢や境遇を鑑みれば相応の仕上がりと判断する事にも
「それはそれ、これはこれ。という事ですな?」
「ああ」
今回の事件を手引きし、画策した側としてはそれなりの成果を得られた。
しかし満足感を得られるほど素晴らしい結果だったかと問われれば、それは―――
「もう少し、奴らの成長を見たいところだが…なぁ、友よ。この場合、我々が取れる行動の中で最適なものなんだと思う?」
「ふむ、そうですね……」
黄金からの問いかけに白銀が真摯に答えようとする。
二人は気心を知り合った、いわば莫逆の友である。
友からの求めには答えてやりたいと思うのが人情というものだろう。
今回の催し物は幕引きと相成ったが、しかしもう一つ何かを付け加えるとするなら―――。
「そうですね…では、こういうのはどうでしょう?」
何事かを閃いた白銀からの答えに耳を傾ける黄金。
「一度だけ、アナタが直接彼らと会うというのは?」
その言葉を聞いた時、黄金の魂から喜びの感情が爆発した。
常人ならばその覇気でショック死しかねない程の衝撃を伴う感情の激流は止むことを知らず。
思いもよらぬ邂逅の提案に黄金の魂から歓喜の情が止めどなく溢れてくる。
「フフフ、アハハハハハハハハハ!!! 正気か!? 本気か!? 今のこの状況で俺と
「それで終わるのであれば、彼らも所詮はその程度だったという事…そうでしょう?」
「あぁ―――確かに、そうだな」
黄金の口元に歪な笑みが浮かぶ。
それは獲物を前に舌なめずりをする獰猛な獣の淫靡な笑みだった。
「事と次第によっては、その場で喰らうのも一興か」
「貴方の欲するままに為されるがよろしいかと」
「そうだな……お前はどうする? 共に来るのか?」
「私はココより離れるわけにはいきませんので分身を貴方に同伴させましょう。これが見聞きしたものは私にもリアルタイムでフィードバックされますので」
「ふむ。ただの物見であれば、それで十分か」
太陽と月が不吉に笑う。
双方共に宇宙の様相を容易く変えてしまう程の力を有した者達だ。
強大な実力者が善意であれ、悪意であれ、事を為すために行動を起こすとなれば世界の内側に住まう者達は一体どうなるのだろう。
間違いなく、特級の災禍に見舞われることは避けられないだろう。
これより先において命あるものは生きている事そのものが難しくなる。
人間世界にとっての癌細胞、悪質存在たるものが世界を蝕んでいくのだから。
「では―――征くか」
これより、更なる災禍が真理と真也に襲い掛かる。
世界諸共、喰い殺されるか。
それとも――――――
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