第16話 ホテル殺人事件・後編
「刑事さん。同行者一同を一箇所に集めて。それから警官に周囲を包囲させて下さい」
朧木はそう刑事に指示を出す。
「朧木さん。犯人がわかったのですか!?」
「えぇ、化け物としてもなんなのか、おおよその見当はつきました」
「わかりました! さっそく警官たちを集めます!」
刑事は勢いよくフロントバックルームを飛び出していった。
「さて、僕は一旦厨房によってみるか…」
朧木は一人部屋の中でそう呟いた。
三十分後。ホテルのロビーに人が集められた。
一同を前に朧木が前に出る。
「皆さん。よくお集まり頂きました。今回の事件。ようやく犯人を知る事ができました」
「あなたは…刑事さんと一緒にいた…」
「ようやく私達は開放されるのね!」
「じゃあ、犯人は捕まえられたのか!?」
など、どよめきが走る。
「まぁ、落ち着きください。この度の一件。実は巧妙に犯人に外部の者の犯行に見せかけられていました」
朧木は周囲をなだめながらそう説明した。
高梨が一歩前に出る。
「そうは言いますが、我々は十八時頃に被害者から夕飯の誘いのメールを受けました。それ以後はそのままその場で過ごし、誰も一人きりにもなっていない。いつ内部の人間が犯行を行うんです?」
朧木はやはりそう思うかと言わんばかりにため息をついた。
「そのメール。たしかWebメールだとおっしゃいましたね?」
朧木は高梨に尋ねる。
「そうだが、それが何か?」
「Webメールはアカウントのログイン情報があれば誰でもメールを送信できます。夕飯時に時間の指定をしたのは犯人にもわかる動向の内容、かつ事件発覚までのアリバイ工作の為でしょう。単刀直入に言います。被害者はその時刻には既に死んでいる可能性があります!」
朧木の言葉に一同は驚いた。
「そんなバカな! では松葉さんはいつ殺害されたと言うんです!」
木藤さんが取り乱している。それもそうだろう。事件が内部犯の仕業で、十八時には既に被害者が殺害されていたのならば、自分達は殺人犯と談笑していた事になる。
「木藤さん。それはですね。あなた方が松葉さんと別れてから十八時までの間でしょう。犯人はWebメールもアリバイ工作に用いようとしている」
明日が朧木と木藤の会話に割って入る。
「待った! 犯行現場はどうなるの? ホテルの従業員がやってくるまでは鍵がかかっていたのよ? 犯行現場は密室になっていたのよ。それはどう解決するわけ?」
明日が一気にまくし立てる。
「その点が今回の問題点ですね。犯人の最大の失敗は人外のモノの仕業を疑われた事」
「なんですって!?」
明日は衝撃を受けているようだ。朧木は周囲の警官たちを見回しながら口を開く。
「犯人最大の失敗は被害者の殺害方法。まずは被害者の首をねじ切るという点。さらにある痕跡を隠蔽しようと遺体を損傷した点。これは犯人が残された痕跡から特定されるのを防ごうとした為。つまり犯人にはかなり都合の悪い話となる」
誰かがゴクリとつばを飲む音がする。犯人のその所業、人間にとっては化け物はまさしく化け物だということだ。
「そういえば、あんたは一体何者なんだ?」
青木が朧木に尋ねた。
「申し遅れました。僕はこの街で退魔師をやっている探偵の朧木良介と言います」
一同にまたしてもどよめきが走る。当然だろう。退魔師というのはあまり一般的でない。そして殺人事件がただの殺人事件ではなくなったのだ。
「まて、退魔師だと? ではこの事件は初めから化物絡みが疑われたということか…」
高梨が何かを言いかける。一般人にはまだ知らされていなかったのだ。今回の事件が化け物絡みの事件であると。
「そうです。今回の事件には人外のモノが絡んでいる。犯人の最大の失敗です。その犯人は、あなた方の中にいる!」
朧木はズバッと言い切った。
「あ、あの、朧木さん。あなたは化物の正体が何なのかわかったのですか?」
刑事さんが横から朧木に尋ねてきた。
「可能性の一つですがね。その正体は西洋の吸血鬼。ヴァンパイアです。奴らは霧にもコウモリにも化けられる。些細な隙間から部屋を出入りできるのです」
朧木がそのように告げた時、被害者の同行者は皆それぞれから距離を取った。誰もが疑心暗鬼になっていた。
「お、朧木さんは誰がそのヴァンパイアであると?」
刑事が恐る恐る朧木に尋ねた。
「事件で犯人に疑われそうな関係者の中で、犯行から最も遠く疑われなさそうな立ち位置を取り続けている…明日光さん。貴方です」
その場にいた誰もが明日光を見る。
「待ってよ! 何を根拠にそんな…」
明日光は弁明しようとしている。
「メールが来たという十八時には被害者はすでに死んでいたことになります。ならば殺されたのはその前。木藤さんは外出していて街中の街頭カメラに写っているので宿泊施設にいなかった。他の二人にはアリバイがある。一人きりでアリバイもなく、どこで何をしていたかもわからないのは明日光さんだけだ。…実は僕、先ほど厨房である食材を確保してきました」
朧木は脇においてあった袋をガサゴソと漁る。中からはニンニクが出てきた。
「そっ、それはニンニク!」
明日光が驚いている。
「そう。吸血鬼が苦手なモノ。ニンニクです。ニンニクは邪悪なモノをうち払うという伝承がありまして、その影響でしょうかね」
そう言う朧木はただ取り出しただけのようだが、明日光の動揺はただ事ではなかった。
「グッ、私はニンニクが苦手なのよ!」
後退る明日光。朧木はぐいぐいとニンニクを明日光へと押しやる。
「これは伝承どおりに有効なようですね」
明日光が壁際まで追い詰められる。彼女は跳躍し、天井の角にへばりつく。
「私がこんな屈辱を受けるとは! おのれ、東洋の魔術師!」
天井に張り付いた明日は凄惨な笑みを浮かべた。目を赤く輝かせ、牙を剥いている。
「あ、明日光。大人しく投降しろ!」
刑事が銃を明日に向ける。
「人間如きがぁ!」
明日は素早い身のこなしで刑事に向かって襲い掛かる!
「月魄刃!」
朧木が放つ三日月の輪光が容赦無く明日を切り裂く。
バチィ! 激しい衝突音と共に月魄刃が弾かれた。
「アッハハハ! ヴァンパイアにそんな下等な術が効くと思って?」
月は夜の象徴。夜の眷属であるヴァンパイアには月魄刃はあまり有効では無さそうだ。どうにも相性が悪い。
朧木は術を破られた反動でよろめく。魂魄を消耗したのだ。
「なら、これはどうか!」
朧木は手にしていたニンニクをヴァンパイアに投げ付けた。
バチィ! これまた激しい音が鳴る、ニンニクは明日に当たったようだが、当たった箇所から煙が出ていた。
「グッ、おのれ!」
明日は殺意を込めた視線を朧木に向ける。
「うっ、撃て撃てぇ!」
刑事の合図で一斉射撃がヴァンパイア向けて放たれる。明日は弾丸の勢いに弾かれたようにロビーの窓ガラスを叩き割って外に飛び出した。
「むっ、これはいけない……」
朧木は危惧した。魔除けの銀の弾丸でもなければ、ヴァンパイアへの決定打にはなり得ないだろうと判断したからだ。
「おのれ、貴様ら。ただではおかぬぞ!」
外から明日の怒鳴り声が聞こえてきた。
朧木は警官たちと外へ飛び出す。
そこに明日の姿は無かった。
「どこへ逃げた? 探せ探せぇ!」
刑事の怒鳴り声。警官たちは散り散りに明日を追う。
「これはまずいかもしれない」
朧木はそう呟いて刑事を呼び止めた。
「なんです。朧木さん」
「相手が正真正銘の吸血鬼なら、警官に単独で追わせてはいけない」
朧木がそう言いかけたとき、どこからともなく男の絶叫が聞こえてきた。警官の一人の声のようだ。
やがて静かになったかと思うと、声のした方角から一人の警官が歩いてきた。
「お、おい。大丈夫か?」
近くにいた警官が戻ってきた警官に声を掛ける。
「あぁ、俺は大丈夫だ…」
戻ってきた警官はそう言うと、声を掛けた警官にふらっと近寄る……。
距離を縮めた瞬間。戻ってきた警官が声をかけた警官を押し倒す。
あっという間に喉笛に噛み付く警官だったモノ。
「ぎゃあああああ!」
噛みつかれた警官が叫び声を上げた。
ゆらりと立ち上がる噛み付いた警官。口元を血で濡らし、その瞳は赤く輝いていた。
「恐れていた事が!」
朧木が叫んだ。
にわかに騒ぎが広がり出す。警官に噛みつかれた警官も立ち上がる。既にその瞳は赤く輝いている。
他の警官たちは同士討ちに躊躇い、吸血鬼化した警官を撃てずにいる。
「い、いかん。撃て、撃て!」
刑事が指示を出すやいなや、警官たちが吸血鬼化した同僚目掛けて発砲する。
先程まで人間だったものに浴びせられる銃弾。
ドサリ、ドサリと倒れる吸血鬼化した警官達。
彼らはそのまま動かなくなった。
「彼らは吸血鬼の親玉に噛まれて生まれた下僕種の吸血鬼だ。だから銃弾でも倒せる。だが、大本の明日光はどうだ?」
朧木は周囲を警戒する。
先程吸血鬼化した警官が歩いてきた方角からかつんかつんと足音がする。
足音の主は明日光だった。服には銃弾による穴が空いているが、体にダメージはなさそうだった。
近くにいた警官が明日光に向かって発砲しようとする。
その瞬間。明日光は白い霧の姿に変わり銃弾をすり抜ける。
気がついた時には発砲した警官の背後に立ち、その首筋に歯を突き立てている。
ドサリと崩れ落ちる噛まれた警官。明日、が振り返る。一時的に月の光が雲で陰り、再び光が差し込んできた時、そこに日本人の明日光の姿は無かった。
銀色に輝く髪。紅く輝く双眸。青白く美しい肌。整った容貌の美しき姿をした吸血鬼がそこにいた。服は先程までのものではなく、黒ずくめの服装をしている。
「さすがの私も災難だったわ。予定のないコロシだったから。それが必要以上の過去の精算にもなってしまうなんて」
吸血鬼はそう独り言のように洩らした。
朧木は油断せずに構えながら吸血鬼を見据える。ただし、その瞳は見ないようにしていた。吸血鬼は魅了の魔眼を持つ。
「僕にとっても災難さ。吸血鬼が相手と知っていれば、もっと周到に準備をしてきたよ」
頼みの月魄刃は相性の問題で吸血鬼にはあまり効いてはいない。打つ手は限られる。
「そう。手ぶらで来たわけ。良い度胸じゃない。それで私の前に立つというのだから」
明日光が妖艶に笑みを浮かべた。彼女が先程噛み付いた警官が立ち上がる。彼は既に人間ではなくなっていた。
「噛んだ相手を従わせる。いよいよ面倒な能力だな。お前を野放しにするわけにはいかない」
朧木は懐を探る。あった。一枚だけ。式神の召喚符だ。
「ねぇ、あんた。私と取引しない? こちらは今後の生活もあるし見逃してもらいたいのよ。バチカンの専門家どもにまた追われるのはごめんだわ」
明日光は手をひらひらと振ってみせた。
「罪を犯していなければな。今はそうも行かなくなった。何故、このような真似を行った。一応聞いておこう」
「あらぁ、それはありがと。今回の一件、私ばかりがわりを食っているみたいでね。人間のほうが薄汚い真似をするんだもの。聞いてくれる?」
会話のさなかにも朧木は仕掛けるタイミングを計っている。
「後学の為にも聞いておきたいね。吸血鬼といえば高貴な存在、と言うイメージもあるのに、なぜ今回はこんな事件を起こしたのかが気に掛かる」
朧木は相手をさりげなく持ち上げる事を付け加えた。
「私だって元々は人間として生きようとしていたのよ。ところがある時、私には非常に困難な出来事があったわけ。松葉とは仕事の関わりでね。うちの会社は松葉に仕事の依頼をなんとしてもしようとしていたのよ。私がその交渉を担ったわ。だけどね彼は何度頼んでも依頼を受けてくれなかった。私もその仕事がうまく行かなかったら退職しなくてはいけなくなりそうだった。進退問題ね。だから何度も頼み込んだわ。そうしたら松葉は私になにを持ちかけたと思う? 枕よ」
枕。つまりは枕営業である。
「・・・それは断ることも出来たんじゃあないのか?」
「言ったでしょ。人間として生きようとしていたと。仮初の戸籍や地位を用意するのも大変だったんだから。・・・それに会社を辞めるわけにはいかなかった。だから私は話を受けたわ」
「・・・・・・・・・そこまでするのはなぜだ?」
朧木は押し黙った。
「その会社には好きな人がいて、一緒にいられるだけで嬉しかった。会社を追われたら一緒にいられなくなる。だからよ。嫌なことをしてまで自分の居場所は守った。そうしてしばらくして、好きな人と付き合うようになった。そうしたら久々に会社の仕事を受け持った松葉がまた私と関係を持とうとしてきたのよ。私が断ると、彼氏に枕営業の事をばらすと脅して関係を強要してきた。今回の事件のあった時もね」
「それは・・・」
彼女にも問題はあったが明らかに松葉が悪い。
「お前を他の男には渡さん。関係を持っていることをばらしてやるといわれて、私はそれを止めようと思わず首を噛んで吸血鬼にしてしまった。手下にした吸血鬼は見境無く人を襲って吸血鬼にしてしまう劣等種にしかならないことを忘れていた」
「そうか。それで君は彼を殺傷し、証拠を隠滅して身内の犯行と疑われないように物盗りの犯行に見せかけ、アリバイ工作も行ったのか」
「ねぇ、お願い。私は彼と一緒に居たいだけ。同行者の他の三人にもそのことを伝えてよ。私は悪くないの!」
「いや、君が殺人を犯したことには変わりない。法の下に裁かれ、しかる後にその彼と結ばれるが良い」
朧木は静かにそう伝えた。
わらわらと吸血鬼の周囲を警官が取り囲む。明日光を取り押さえようとしている。彼女は突然笑った。
「話の通じない男ね。今までずっと待ってきて、ようやく結婚についての話もしてくれるようになったのに、私に幸せになるのを待てというの? こんな目に遭ってきたのにぃぃ!」
彼女の叫び声が辺りにこだまする。
キィィィンと辺りに耳鳴りのような不自然な音がなる。周りの空気が緊迫する。全員が耳を押さえてうずくまる。
やがて耳鳴りのような音は無くなった。
「音が消えた? いや、これは!」
朧木は耳を押さえていた手を放した。
音はなくなったのではない。人間には聞こえないだけだ。超音波。
遠くから飛んでくる影。コウモリ達である。コウモリは超音波を聴くことができる。
コウモリたちは周囲の警官たちに襲い掛かった。
「うわぁぁぁ!」
周囲から警官たちの悲鳴。
明日光と朧木の間にもおびただしいコウモリが飛び交う。
そのコウモリをかき分けて、先程明日光に噛まれた男が襲い掛かる!
ダァン! という発砲音。刑事が吸血鬼化した警官を撃ったようだ。劣等種の吸血鬼は眉間を打ち抜かれてばたりと倒れた。
このままでは被害が広がる。朧木は覚悟を決めた。
「・・・諸天善神に願い奉る。陰にひなたに歩く道。市井の者の静謐を守らんが為、我が行く手に勝利を」
朧木良介は闘いに赴く前の言霊を放つ。必勝をかけて決して退転しないという覚悟の現れである。そして行うのは場を清める為の反閇。
舞台は整った。朧木は懐から式神の召還符を引き抜く。
「きみおもう こころまむねに くいのこる 交わすまくらの できごとを」
朧木は圧倒的な呪歌を歌った。それは明日光の身の上の話を聞いたうえでの彼女の呪詛を歌にした。君のことを思う胸に悔いが残る。(あなたとの)交わしたひと時が忘れられない、と言う部分を明日光に限っては枕営業をしたことが忘れられないという意味にも取れる残悔の歌にした。ただの忘れられぬひと時の恋歌なのではない。『くいのこる』の一句が離れ離れになったか、失恋したかのような歌となっていた。多重の呪いの歌だった。
「いでよ、人の心の精、
式神の召還符が光り輝き、現れたのは木の槌と木の杭を持った般若の顔の鬼、心に残す鬼、残鬼。
こうもりたちが皆空に飛び立つ。
「なに、そんなので私を倒せるとでも?」
明日光は霧に姿を変えて残鬼をすり抜けて朧木を倒さんと近づく!
「あぁ。もう終わりだ。後悔してももう遅い!」
朧木は明日光を指差し、残鬼をけしかける。
残鬼が木の杭を霧につきたて、木の槌で叩き打つ!
「ぎゃぁぁぁぁああああああああああ!」
轟くのは明日光の絶叫。
物質をすり抜けるはずの霧の状態であったが、残鬼の木の杭は狙いたがわず明日光の胸の辺りを穿っていた。
「無理なんだ。明日光。お前の胸には悔いという名の杭が既に打ち込まれている。呪歌として使わせてもらった。悔いと杭を掛けてな」
霧の姿から元の女の姿に戻る吸血鬼。彼女の胸には『杭が残っていた』
「そんな・・・・・・どうして私ばかりがこんな目に遭うの・・・・・・ようやく彼と一緒になれると思ったのに・・・・・・」
明日光は泣きはらしている。苦しそうに胸の杭を掴む。そのまま崩れ落ち、黒い霧にと帰っていく。
後には何も残らなかった。
「明日光。未来に希望を持たせた偽名だったか・・・・・・。妖怪だから幸せになれないんじゃない。君は間違った事をしたから償わなければいけなかったんだ・・・・・・だが、今回の出来事は君だけが悪かったわけではない・・・・・・僕は、僕はこんな後味の悪い歌で勝ち得るなんて・・・・・・」
朧木は膝をついて地面を見た。明日光のいた場所には何も無い。
「朧木さん・・・・・・時折こんな犯罪があるんです。それでも犯罪は犯罪ですから。我々は職分を全うします」
刑事がぽんと朧木の肩を叩いた。そして駆け出していく。事件の終息の為に。
朧木は立ち上がる。躓いたままではいられない。
「明日光。君が己自身の行いを恥じ入る『人』であったならば、呪いの歌などには敗れなかっただろう。慚愧に耐えぬ思いを抱いていた君に、同情はしないよ」
残鬼は明日光に向けた呪いの形だ。彼女を倒すべく歌われたから取られた姿だった。吸血鬼を倒すには心臓を杭で打ち抜くが、朧木は心を悔いで打った。
どちらが心に残した鬼か。残鬼は役割を終えて消えていった。
朧木も元のホテルへ戻っていく。残された人達に事情説明をする為に。きっと明日光の彼氏は彼女の帰りを待っていることだろう。
真実を告げねばならない。
彼女が枕営業をしていた事は伏せておくのがせめてもの優しさだろうか。
正直である事が必ずしも美徳とは限らないかもしれない。朧木は同行者の三人にだけ事情を説明するつもりだ。その先のことは彼らに任せようと考えた。朧木は自分自身の姑息さを恥じた。彼には慙愧の念にも耐えられぬ思いだけが残る事件となった。
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