第20話 来訪者たち(2)

「すみません!遅くなりました!」

アクセルはそう言うや否やマグナに搭乗した。

「ロード班全員集合。出撃するぞ!」


アクセル達ロード班はマグナに乗って戦闘海域に向けて出撃した。

「カジルと俺で敵機にあたる。アクセル、ヘッセ、援護にまわれ!」

「「はい!」」

「目標海域が近い・・・!?」

アクセルはそうつぶやいた。

まだ何も詳細は耳に入っていない。

ついさっきまでリアとフロートファイトの練習をしていて、報告を受けて飛んできたところだ。

戦闘海域と指定された場所は当初の訓練等で想定されていた場所よりもずっと近くだ。


「突然海中から現れたとだけ聞いている。巡視班は壊滅状態らしい・・・・」

ロードは通信で短くそう答えた。


――――――――――――――――――――――――――


「おいおいおいおい!なんだよあれは!」

アルゴが見た先には艦隊を背景にこちらに向かってくるラナフロートだったが、正規の規格のものではない見たことのないものも多かった。


「くそっ」

アルゴなどレーシェの一部隊員やデゴウスのフォース・ライラがまず駆け付けたが相手の方がまだ数の有利がある。


「素人の動きじゃない。軍隊並の統率力だ。」

ライラがフォースに通信で言った。

「ああ、前衛は並だが後ろで援護してる機体が厄介だ。」


前衛に乗り出している機体とフォース達が対峙している間、

後ろから的確にサポートしてくる機体のせいでフォースたちは攻めあぐねていた。


「フォース!」

通信が入った

「ロードか!?」

「ああ、ロード班、合流する。」

「頼む。後ろの機体を牽制してくれ。埒が明かない」


そう言われてロード達が後ろを確認すると、そこにいたのは鎧のようなものみ身を包んだ機体だった。

「なんだ!?あの機体は、、、」

アクセルも目を見張った。

その機体には鎧、いや、甲冑とでも言うべき装飾がされていた。


「カジル、いくぞ!」

ロードとカジルが二方向から回りこむと囲まれた機体は上昇した。

二機がタイミングを合わせて銃弾を撃ち込んだが、鎧型の機体は一つを避け一つを鎧で受けきった。

ロードとカジルが攻撃を受けきったことに驚いたと同時に鎧の一部が持ち上がり銃口が露出され追撃がきた。


――――――――――――――――――――――――――


「自治区の戦力もたかがしれてますね。」

痩せた男は満足そうに戦闘の様子を眺めている。

痩せた男に話しかけられたのは恐らくこの船の指揮を執っている人間だろう。屈強な体躯を持ち戦闘員に指示を出していた。

「奇襲だからなんとも言えんが、、、彼らの能力、これ程までとは。

だが、自治区の、、、こと帝国の戦力は、、、」

こんなものか、、、と男は思っていた。


セレモニーの襲撃の際には仕掛けた爆弾を一瞬で解除されたという話だった。

新種の索敵システムを想定していたが、そういった様子もない。

奇襲だからこそ、今こんなにも攻防を有利に進めているのだということもわかっていたが、こちらの戦力は想定以上だ。

隊列もジャミングも鎧型も全てが予想以上の動きをしている。

自治区防衛隊の中にも良い動きをする機体はあったが、今のところ圧倒的にこちらが有利だ。

あとこの場に留まり確かめたいこととすれば、それは自治区にいるはずの“彼”の存在だけだ。


―――――――――――――――――――――――――――――


「俺たちの連携にかかれば、自治区も大したことないな。」

「オルクト様がいるんだ。敵なしさ。」

「まだ俺たちもやれるな。」

そう言いながら3機の機体は連携を保ちつつ自治区陣営を翻弄した。


ロード班と鎧型との攻防は一向に続いていた。

鎧型の動きは相当洗練されている。

こちらの攻撃は上手くかわされ、あちらからの攻撃は鎧のどの部分が開くのか、

どこから次の攻撃が来るのかわからない状況だった。


「ロードさん!!」

アクセルが鎧型からの攻撃が来たタイミングでロードに通信したが、

鎧型からの攻撃はロードの機体に当たった。

「アクセル!避けろ!!!!!!!」

その瞬間ロードの声が響いた。

ロードの機体は弾が当たった衝撃で体制を崩していたが鎧型はロードを撃った後すでに標的をアクセルに定めていた。

「・・・!?」

――まずい!

アクセルが相手からの被弾を機体にかすめながらもすんでのところで避けたその時、

後ろから銃弾が鎧型の銃口を的中した。


鎧型を撃った機体は海面から急上昇して即座に鎧型にもう何弾か的中させた。

鎧型は機体の崩れた体制を整えるために一旦船に機体を近づけた。


「エクリプス!」

その機体は訓練の時にこそ見かけただけだったが、鈍く、深く深く沈み込む宇宙を思わせるその機体は、まさしく、エクリプスそのものだ。


―クラウス・エリアデスだ!


鎧型が体制を整える為に船に身を寄せた瞬間

エクリプスは周囲の機体を次々と撃ちぬいた。


「すごい、、、」

アクセルはその様子をみて呆気に取られていた。


「遅くなった。鎧型に俺もあたる。」

「アクセル。周囲を頼む。俺とカジルはクラウス指導官の援護だ。」

ロードから指示が入った。

「「了解」」


クラウスが加わったことで自治区の防衛戦線は戦局を持ち直しつつあった。

鎧型は完全に防衛手一杯になった。


「みたかあ!!!クラウスさんさえいれば百人力よ!」

別部隊にいたがレーシェのアルゴは元気さを一気に取り戻して息巻いている。


フォースやライラは引き続き前衛を相手にしつつもクラウスの登場を厳しい表情で見つめていた。



―――――――――――――――――――――――――――――

「よし、ひくぞ。」

相手戦艦の指揮官は撤退の号令を出した。

「おや、オルクト殿、もうひかれるのですか。」

「目的を忘れたか?」

「自治区に打撃を与えることでは?」

「・・・違う。威力偵察だ。」


―――――――――――――――――――――――――――――


「追撃だ。」

自治区防衛軍の艦隊からも命令が飛ぶがオペレーターから連絡がきた。

「ダメです。相手艦隊、、、レーダーで認識できません。」

「索敵反応は。」

「消えています!」

「むぅ、、、」


「ムビス司令!敵艦隊、姿を消しました!」

「な・・・!?」


その場にいた誰もが自らの目を疑った。

さっきまで目の前にいた艦隊が消えたのだ。

恐らくここにいるんではないだろうかと思える場所を撃とうとしても残った機体が邪魔をしてくる。


「ムビス司令・・・」

オペレーターが心配そうに声をかける。

「撤退だ・・・防衛を最優先とする。」


―――――――――――――――――――――


自治区内の混乱冷めやらぬ中、

「ふうっ」

そう言って一人自治区に入り込む男がいた。

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