第85話 真の姿と本当の気持ち

イーフリートは決死の覚悟で罪を償おうとしている


ワタルたちもその一助となるよう


出来る限りの事をした


負傷者を癒し


破壊された品々や家屋などを片っ端から


破損の少ないものは『修理 リペア』し


大破したものは『修復 レストア』した


エルフの森が落ち着きを取り戻すまでに数日を要した


残された者たちの心が癒えるには更なる月日が必要だろう




その後、長老に仲間たちを復活させる為に


世界樹の樹の力を借りたい旨を願い出た


「管理者であるハイエルフにお伺いを立ててみます」


「ワタル殿たちは、森を救ってくだされた恩人です」


「必ず良い返事をもらって参ります」


ハイエルフとの謁見に時間がかかるとの事だったので


ワタルたちはかねてからの疑問を追求することにした




「アトラス」


「そろそろ、その姿について説明してほしいんだ」


復活後のアトラスは


すっかり姿かたちが変わってしまった


アトラスは灰になってから復活までのいきさつを


詳しく話してくれた


「なるほど、魔導兵は器の役目を果たしていた」


「本当の正体は神にも匹敵する不滅の盾」


「そしてフェニックス・ナイトと言うもう一つの姿になれる」


「のは分かった」


「で、その姿は一体?」


「正体はともかく、その姿は私も気にになってました」


ドライアドさん


正体はどうでもいいのだろうか?


『私もかなり興味があります』


最近口数少なめのエヴァも関心があるようだ




口数が少なくなるほど


エヴァは忙しかった


現在進行形で


何故ならギルドに卸す、魔道具の製作と補充を


一手に引き受けてくれていたのだ


マクロ機能とお手軽に言っても


その処理はエヴァが一手に担っているのだ


(これは本格的に生産拠点を設けないとまずいな)


(エヴァに何かお礼しないと!)


ワタルはエヴァにずっと丸投げしていた


それを愚痴もこぼさずにこなしてくれていたのだ


お礼は必須であろう




そして気になるアトラスの姿だが


全身に深紅の鎧を身に纏い


その手には金色に輝く不死鳥が描かれている深紅の盾を持った


燃えるような赤い髪に真紅の瞳


だった


鎧の所々からは炎が燃え上がっているが


近寄っても熱くはない


「これは不死鳥の闘気です」


との事だ




「この姿についてですが」


「理由があります」


「でその理由とは?」


「私はワタルに特別な感情を抱いています」


「特別な感情!?」


「私はワタルを愛しています」


「「『なん・・・だと!?』」」


これには3人とも驚愕せずにはいられなかった


「そう言う訳で」


「ワタルにも、わたしに好意を持ってもらいたいと思いました」


「ワタルが、街にいる際に興味を示した女性の特徴を統計的にまとめ」


「理想的に統合した結果」


「このような姿になりました!」


ジャジャーンと効果音が成りそうな


モデル的なポーズを取るアトラス


抜群のプロポーションにその美貌


とても様になっている


だが




「アトラスって男じゃなかったのか!?」


ワタルはショックだった


自分の好みを統計的にまとめたとか言うくだりには


恥ずかしさの余り転げまわりたくなったが


なんとか堪えた


それよりも彼の中で


アトラスは頼れるお兄さん的イメージだったのだ


それが、女性の姿で


ましてや自分を愛していると言う


「魔導兵に性別はないはずでした」


「ですが、私はワタルを好きになりました」


「その思いが私の形態の一つである」


「フェニックス・ナイトの姿にに反映された訳です」




「アトラス 気持ちは嬉しいんだが」


今の自分には色恋に現を抜かす余裕などない


それをアトラスに告げようとしたが


その思いを悟ったかのように思いを語る


「分かっています」


「今の状況も」


「自分の立場も」


「これは私の一方的な思いである事も」


「でも言っておきたかったのです」




「私は邪炎に焼き尽くされ灰になりました」


「あの時、思いを伝えられなかった事を本当に後悔しました」


「私たちはいつまでも一緒に居られる保証がありません」


「だから、もう二度と後悔はしたくないのです」




エヴァとドライアドも同じ気持ちだった


彼と、明日も一緒に居られる保証はどこにもないのだ


彼女たちも自分の思いをワタルに伝えた


アトラスと同じように


答えを求める為ではなく


後悔しない為に




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