第72話 勇者抹殺部隊 4/4
『竜殺しの魔導兵団』with『中層の覇者』との作戦会議も終わり
ワタルたちはハジメーテの門をくぐる
門は固く閉じられ
城壁の上には冒険者たちが戦いを見守っている
状況によっては、自分たちも撃って出て、この街を守る覚悟だった
街から出て来たのはたったの12人
国軍の兵士たちは、勇者とその関係者が投降してきたものだとばかり思っていた
しかし彼らから発せられた声に驚愕する
「城の地下の祭壇と天井それから少しばかり城壁を破壊してみたのですが」
「私の警告は無駄だったようですね」
城が襲撃に合った事は聞いていたが、それを一人でやったように話す戦士
その声はそれほど大きくないにも関わらず、兵士たち全員に届いた
別の男が名乗りを上げる
「俺達は『魔導兵団』」
「この二人には恩義があり助太刀する事になった」
たった10人で国を滅ぼしたと言われる『魔導兵団』を相手にするなど聞いていない
臨戦態勢に入った彼らの魔力の波動が大地を伝い兵たちにまで届いた
「何と言う凄まじさだ」
「これじゃ、まるで災害級の魔物でも相手にしているようだぞ」
「俺この任務が終わったら結婚する予定なのに」
それだけで兵士たちは、士気は下がり、浮足立ってしまった
さり気なく、死亡フラグを立ててしまった者も居る
「落ち着きなさい 私たちには切り札があるのを忘れたのですか?」
「『勇者抹殺部隊』を
(まったく これだから無能供の相手は疲れる)
司令官の言葉に動揺が収まっていく
そうだ自分たちには彼らが居る
勇者を超える力を持った元勇者達
『勇者抹殺部隊』が
「
4人の戦士の姿が現れる
その存在感もさることながら
人間離れしたその姿は、何度か目にしている者でも嫌悪感を抱いてしまう
「あの4人は唯の兵士とは次元が違うな」
一目見てその力を見抜く『魔導兵団』の長
「どうも俺と同じ境遇の奴らみたいだ」
「団長 あの4人は俺たちに任せてもらっていいかな?」
ワタルから発せられた言葉の意味
それは、残り1万の軍勢を10人で迎え撃てと言われているに等しい
「残りの兵士たちは任せてくれ」
「今の俺達なら他愛もない事だ」
ワタルは心配だった
「みんなかなり強くなってるから加減を間違えないでね」
『魔導兵団』は以前よりも遥かに強くなっている
蹂躙する事は容易い
力の全てを相手にぶつければいいのだから
だが一万の軍勢を殺さずに無力化するとなると話が変わってくる
力は大きくなるほど、その加減が難しい
誤って兵士を殺してしまいかねない
「これでも俺たちは元軍人だ」
「自分たちの戦力の把握は十分に出来ている」
「お前に作ってもらった秘密兵器が火を噴くぜ! ヘヘヘ」
斥候型兵士がステルスに移行し姿を消した
彼はどこに向かったのか?
それはしばらく後になって判明することになる
団長は大剣を上段に構え、無造作に振り下ろす
身体強化機能で高めた膂力と『推進』で加速された斬撃が大地に裂け目を作っていく
裂け目は、1万の大群を半分に割った
以降、彼に近づこうとする兵士はいなかった
団長は反省した
「張り切ってやりすぎてしまった」
仕方がないのでこのまま敵の本陣まで向かうことにした
「俺は射程が短いので、お先に行かせてもらいますよ」
近接特化型兵士は国軍の中でも鉄壁の防御力を誇る重戦士たちに向かっていく
巨躯に似合わぬその突進力
あっという間に距離を詰め、その拳を振るう
『グラビティー・インパクト』
斥力を秘めた拳は重兵士を軽々と吹き飛ばす
その威力で吹き飛んだ重戦士は後続の戦士たちを巻き込みなぎ倒していく
「死んでないよな? 大丈夫だよな?」
予想以上に派手に吹き飛んでしまった重戦士たち
彼らの命運やいかに!?
近接特化型兵士は、少し自信が無くなった
「私も参加させてもらおうかしら」
探査特化型の女性兵士
彼女が使う、攻撃魔法は強力過ぎて加減が難しい
そこでワタルが用意してくれた新しい魔法を使わせてもらうことにした
「重力を宿し宝珠よ我を守り踊れ グラビティー・オーブ」
斥力を秘めた宝玉が、まるで彼女を守るように周囲を廻り始める
鎧は纏っているが杖を持ったその姿に相手は魔術師だと判断した兵士たち
接近戦に持ち込めば容易に倒せるとふんで、彼女を取り囲み一斉に襲い掛かる
しかしその結果、彼女に近づく者から次々と宙を舞って行く羽目になった
『自立式重力防御魔法 グラビティー・オーブ』
「彼の仲間は4つの属性を秘めた宝玉を操れたそうだわ」
「私もそうなれるように努力しないと」
そう彼女が呟く間も
兵士たちは絶叫を上げながら吹き飛ばされていった
『中層の覇者』たちはいつもの3人一組ではなく等間隔で軍勢へと向かっていく
連携を取る必要もないという事だ
全員が剣と盾を装備している
『激振斬乱れ打ち』
高周波の刃が
兵士たちの盾を
剣すらも切り裂き
『グラビティー・シールドバッシュ』
盾が剣と盾を斬り刻まれ、丸腰となった兵士を次々と吹き飛ばしていく
それを何度も繰り返していく
彼らの歩みを止められる者は居なかった
「何をやっている!? 魔法師団 攻撃魔法を放て!」
司令官は苛立ちを隠せず声を荒げた
肝心の魔法師団の団員たちは
目の前で起こっている惨事に驚き我を忘れていた
ようやく自分たちの役割を思い出し、攻撃魔法を発動しようとするも
「そうは問屋が卸さねぇぜ! へへへ」
そういって斥候型兵士が姿を現す
姿を現す必要は全くなかった
用心深い彼があえて姿を現した
それは、ここには彼を害する者はいないという事だ
『スライム・ブレス』
説明しよう、『スライム・ブレス』とはワタルが調整した特殊な働きを持つスライムを噴出する魔道具である
その働きとは、アダルトなあれだ!
すなわち『服を溶かす』である
何故かその製法は、賢者の石の中に記されていた
だが古の錬金術師の名誉を守るためにあえて言わせてもらおう
彼はこの魔道具を使っていない!
使おうと思っていたかは不明だ
だが、使ってはいない 断じて!
魔術師団は全員が全裸になった
魔法の杖を持った裸族と化した
かなりシュールな光景だ!
「あいつ 着痩せしてたのか? いい体してるなぁ うぉ? やべぇ!」
突然、股間を抑える団員
「彼のおしりセクシーだわ」
「お前 俺に内緒で密かに鍛えてたな?」
「一人でモテようと思ってたんだろう!?」
「フフフ これからは魔術師もマッチョな時代さ!」
ボディビルダーよろしくポージングを決める者もいた
良く分からない会話が交わされ
もはや戦闘どころではなくなっていた
「作戦成功! 目の保養にもなったぜ! ヘヘヘ ん?」
彼は、出会った事もないはずの古の錬金術師がサムズアップしている姿を幻視した
「相手はたった12人だぞ!」
「一体何をやっているんだ 能無しどもが!」
「お前たちの出番だ行け!」
司令官の言葉には逆らえない
彼のひところで、隷属魔法が発動するからだ
忌まわしい魔法は、彼らの意思を無視して
再び望みもしない殺戮を強要しようとしていた
そんな彼らに突然声がかけられる
「ああ やっぱりお仲間だったか」
「しかし、ひどい目に遭ってるな」
「直ぐに解放してやるから」
「なんとむごいことを」
「これは、城を消滅させるだけでは済ませられませんね」
そこに現れたのは『漆黒の守護者』と呼ばれる者たち
ワタルとアトラスの姿だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます