第66話 ダンジョンコア
火竜を倒し終えると、どこからか声が聞こえて来た
「攻略おめでとうございます」
「攻略した皆様には、攻略の証としてギルドカードに記録が残され」
「報酬が贈呈されます」
「俺は報酬はいらないから、ダンジョンコアを見せてもらえないか?」
ワタルの声の主に提案する
「それはダンジョンマスターの権限となり、私にはお答えできません」
と却下された
「そのダンジョンマスターってのはどこにいんの?」
「器を失い神界へと帰還されました」
(ダンジョンマスターは器を失った神という事か)
「じゃあ 別にいいんじゃない?」
「再度申し上げますが」
「それはダンジョンマスターの権限となり、私にはお答えできません」
「そっかぁ それは残念だなぁ」
「俺ならコアのメンテナンスも出来るんだけどなぁ」
ダンジョンが誕生して、数万年の時が経過している
魔物の異常発生などを考えると、何らかの問題を抱えているはず
と推測し食い下がってみた
「なんですと!?」
「では魔方陣を出しますので、それで転送してください」
手のひらを返したように了承された
現れた魔方陣で転送すると全体が黒曜石で出来たような、黒一色の部屋へとたどり着く
広さはそれほど広くない
かと言って、『魔導兵団』と『漆黒の守護者』の6名が居ても、狭く感じる事はない
ジャストフィットな広さ!
アトラスも『魔導兵団』の面々も物珍しそうにあたりを見渡す
と言っても部屋の中にはそれほど多くの物は存在しない
部屋の中央に台座があり
その上に神秘的な光を放つ立方体が浮かんでいる
台座の横には、少女が立っていた
金髪ツインテールでメイド服姿の美少女だった
(これってダンジョンマスターの趣味なんだろうか?)
「こちらがマスタールームになります」
「本当にメンテナンスをしていただけるんですしょうか?」
「ああ 構造を解析する必要があるけど構わないか?」
「正直申し上げると、かなりの不具合が出ておりまして」
「ダンジョンコアの簡易的なメンテナンスシステムでは対処できない状況なのです」
「どうかよろしくお願いします」
悲痛な面持ちでそう訴える、金髪ツインテールでメイド服姿の美少女
彼女は作業用代理構成体で思考はダンジョンコアと共有されている存在らしい
「構造を解析するから、少し時間がかかると思う」
「俺もこれ程の存在を『走査』したことが無い」
「最悪、意識が飲み込まれ、戻ってこれないかもしれない」
「その時はほかの人たちを、地上に返してやってくれ」
そう言い残し、ワタルは『走査』スキルを発動する
ワタルの中に膨大な情報が流れ込んでくる
神のテクノロジーで作られたダンジョンコアの組成情報
それ以外に、ダンジョンコアの記憶と呼べる光景
数万年と言う悠久の時を経た
ダンジョンで起こった出来事が走馬灯のように映し出される
その中でワタルは見た
この世界で起こった真実の数々を
かつて神は人と共にあり、彼らに神の加護を与えた
人族はその加護に守られ、ダンジョンへと挑んだ
数々のダンジョンを攻略した人族は大いなる力を得ていく
力を持った人族は、次第に権力を求めて争い始める
『神々の大戦』は神々が始めた争いでは無かった
人族の欲望が招いた災厄だった
戦いの中、器を失い龍神を除く神々は失意と共に神界へと戻り
以後現実世界への直接的な干渉を止めた
神々は人を見限ったのだ
それからもダンジョンに挑む人々はいた
ある者は金の為
ある者は名声の為
ある者は力を求めて
だが、神の加護を持たない者たちはダンジョンを攻略する事が出来ず
次々と命を落としていった
最後に伝わってきたのは孤独
主を失い、数万年を過ごして来たダンジョンコアの感情だったのだろうか?
そこでワタルの意識が覚醒する
『ワタル ダンジョンコアの組成情報を分析した結果『核』のアップグレードが可能になったわ 実行しますか? YES/NO』
『もちろんYESだ』
体内にある『核』が作り替えられていく
ダンジョン全体を管理するほどの処理能力を持つダンジョンコアと同等の性能をもつ『核』へと
それによってワタルの『核』は、これまでとは比較にならない性能を得た
ダンジョン内にあるもの全てはダンジョンコアが創造し管理している
それ故に『空間操作』そして『錬成』の能力も飛躍的に向上する
『核』のアップグレードが完了した
ワタルは『走査』の結果を報告する
「何とか戻ってこられたよ 378の不具合を確認した」
「私には127の不具合しか認識できていませんでした」
ダンジョンコアですら認識できない不具合まで見つけ出せる
相当な分析力も身についたようだ
「それじゃあ メンテナンスを開始する 『修復 レストア』」
以前ならばこれほど高度な構成物を修復するのは不可能だった
しかし、アップグレードによって得た驚異的な処理能力は、確認された不具合を瞬時に修復してのけた
「修復完了 全ての不具合が改善されたはずだ確認してくれ」
確認には、それほど時間はかからなかった
「全ての不具合の改善を確認」
「あなたのお名前をお聞きしてよろしいでしょうか?」
「俺の名はワタル 冒険者で『漆黒の守護者』と呼ばれる者の一人だ」
『神速の薪割り師』『進撃の開拓者』『必殺の下水道磨き人』『奇跡の整体師』とも呼ばれているが割愛された
「現在ダンジョンマスターは神界へとお戻りになり不在となっております」
「あなた以外に次代のダンジョンマスターに相応しい方は存在しません」
「ダンジョンコアの権限により あなたをダンジョンマスターとして承認いたします」
その瞬間、ワタルにはこのダンジョン内の全てを感じられるようになる
『ワタル 『核』のアップグレードとダンジョンマスターになった事で進化が可能になったわ』
『進化しますか YES/NO』
『いきなりダンジョンマスターにされちまったけど、強くなれるなら大歓迎だ』
『棚から牡丹餅ってのはこの事だな もちろんYESだ』
肉体が作り替えられていくが、以前のような痛みはない
程なく『進化』は完了する
彼は『進化』した『ダンジョンマスター・ゴブリン(新種)』へと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます