第65話 VS炎の化身 火竜

地下50階層は一部屋のみだった


そして部屋の中央には威容が鎮座していた


ワタルたちを鋭い視線で睨みつけているが


「早く降りてこい」


と言わんばかりで攻撃はしてこない


明らかに他の魔物にはない高い知性を感じる


そして最強生物たる威厳も兼ね備えているようだ




それにワタルたちも全力で答える


『ドラゴニック・ウォーリア』


竜戦士と化したワタルは、天井すれすれまで飛びあがり落下の重力に重力魔法の威力を加えて


火竜めがけて落下する


『ドラゴニック・メテオインパクト』


まさに隕石の落下のような衝撃を火竜の頭上に闘気を集中させた拳を降り落とす


その威力は一時火竜の意識を飛ばす程の威力だった




アトラスも全力の一撃を繰り出す


ワタルと同じ軌道を描き、回転と重力さらに重力魔法を加えながら魔力で実体化させたドリルで最強生物をを穿ちにかかる


『スパイラル・メテオインパクト』


アダマンタイト、オリハルコンと同等と言われる竜の鱗を弾き飛ばし抉り飛ばす




普段から酒場で新必殺技について議論を交わす二人が考えた新技だった!




既に満身創痍の火竜


止めを刺すかと思いきや


「「後は任せた!」」


ワタルとアトラスは戦いの続きを『魔導兵団』に丸投げし


戦闘モードから観戦モードへとチェンジした!




「「「「へ!?」」」」


これには百戦錬磨の『魔導兵団』もあっけにとられる


「手負いとは言え、竜は手強いんで気をつけて!」


「『窮鼠猫を噛む』とも申しますので油断なさらず!」


(アトラスは何故、日本のことわざを知っているのだろう?)


太古に召喚された召喚者から伝わったのだろうか? 謎である


(まぁ あんなデカいネズミはいないけどな)




相手はネズミではない竜である


あまねく眷属を束ねる八大竜王


さらに、『神々の大戦』でも器を破壊されず


この世に君臨する4柱の龍神には遥かに及ばぬものの


複数の上級者パーティーないし軍隊が出動し多大な犠牲を覚悟して挑む最強の魔物


(自分たちなら倒せるところまで、弱らせてくれたのか?)


ワタルとアトラスの意図をくみ取り


「ならば期待に応えねばなるまいな!」


団長はすぐに臨戦態勢を取り大剣を構える


斥候型兵士は即座にステルスモードに移行した


索敵型女性兵士は凶悪なブレスに備え、防御結界を最大出力で展開


近接戦闘特化の戦士は、身体強化機能を限界ギリギリまで高めた


「短期決戦で押し込むぞ!」


「「「おお!」」」


『魔導兵団』対火竜の戦いが始まる




すでに火竜は戦意を取り戻し、『魔導兵団』の出方を伺っている


距離を詰めてくる敵に対して、空中からのブレス攻撃を試みる


羽根を広げはばたこうとするも


(さうは、させねぇ!)


手裏剣が羽根に無数に突き刺さり爆裂魔法が発動


羽根を激しく損傷させ、これを阻む




飛行を阻止されるも、火竜は油断なく臨機応変に対応する


何せ、自分に反撃の機会すら与えず、手傷を負わせた者達が後に控えているのだ


本来は溜めをもってして最高出力で放つブレスを、出力を犠牲にして即座に放つ


ブレスが避けきれぬと知るや、団長は大剣を氷結魔法で凍り付かせ盾とする


氷結魔法と『耐熱性』を備えた大剣は速射されたブレスを凌ぎきる


ダメージを受けたのか


すぐには動き出さない


いや動かなかったのだ




その背後から近接戦闘特化の兵士が飛び出し、自慢の拳を繰り出す


『アイシクル・インパクト』


氷撃魔法を乗せた拳はマグマゴーレムを打ち抜いた時と違った効果を見せる


竜の脚を打ち付けた瞬間に発動前の魔力を内部へと流し込み


脚の内部で魔法を発動させた


打撃の効果を体内で爆発させる


中国拳法の浸透勁を魔法に応用したような技だった


例え、世界最高クラスの硬度を鱗で身を固めていても、内部から攻撃されれば、それは用をなさない


脚の内部から氷の氷柱が無数に突き出る


さしもの竜もこの攻撃には耐えきれず膝を屈した




斥候型兵士がその膝に飛び乗り竜の背中から首、頭上へと素早く走り込み、その眼を高周波の短刀で貫いた


竜が、降り落とそうとするころには、既に飛びずさっている




止めの一撃は、探索型女性兵士から放たれた


前衛の一連の攻撃は、全ては相手の動きを制するため


彼らがが気を引いている間に、彼女はスペルキャスターにモードを切り替え


多客砲台にその姿を変えていた


ありったけの魔力をチャージし圧縮させる


兵団一魔力の扱いに秀でた彼女だからこそなし得る魔力量と圧縮率の高さ


砲口は動きの少ない胴体に狙いを定めている


『魔導砲発射!』


光の筋が竜の胴体に吸い込まれ貫通


胴体に大穴をかける


それは致命的な一撃となった


火竜は地に倒れ伏し


その眼から命の光が消えた




「お見事!」


「これで『竜殺しの魔導兵団』になりましたね」


「「おめでとう!」」


「ダンジョン攻略に竜殺しまで達成できるとは」


冒険者となり数年間の努力が『漆黒の守護者』の助力によって報われた


しかも『竜殺し』


冒険者として最高の称号と共に




こうして『魔導兵団』と『漆黒の守護者』のダンジョン合同攻略作戦は、僅か三日の内に完了した



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る