第64話 ダンジョン攻略合同作戦(後編)

深層へ降りるとそこは雪国・・・ではなくマグマ地帯だった


地獄の深層とはよく言ったものだ


流れる溶岩


噴き出す溶岩


高まる気温


猛暑地獄


「アトラス殿の『温度安定術式』が無ければ暑さでやられていた」


『魔導兵団』の団長の言葉はお世辞でもおべんちゃらでもない


プレートアーマーなど着ていようものなら火傷を負うほどの高温


装備に『温度安定術式』が施された一行は汗ひとつ書いていない


環境に応じて適切な術式を付与できる能力の素晴らしさを実感する一行




魔物に対する備えも完璧だ


マグマフィッシュが吐き出すマグマやフレイム・リザードのブレスを探査型女性兵士の防御結界が防ぎきる


「やはり今まで結界とは防御力も耐久性も段違いです」


「これならベヒモスの突進にも耐えられそうです」


変なフラグを立てないで欲しいと思うワタル


だがそのセリフなんだか懐かしい響きがする




通常の武器で攻撃すれば彼らの体液で溶けだしてしまうが、氷結魔法をを付与した手裏剣がマグマフィッシュに突き刺さり凍り付かせた


「この手裏剣って武器は、最初は扱いが難しかったが」


「魔法を使えない俺には有難いぜ」


斥候型兵士は魔石付き手裏剣を気に入ったようだ




「まさかマグマゴーレムと殴り合いが出来るようになるとは夢にも思わなかったぜ」


近接戦闘特化の兵士には相性が悪いマグマゴーレムも、インパクトの瞬間に氷撃魔法を発動させれば、動きの鈍いただのゴーレムと大差はない


『アイシクル・インパクト』


殴った拳から鋭い氷柱が飛び出しマグマゴーレムを串刺しにしていく




「俺にも出番を残しておいてくれよ」


鋭い氷の刃を纏った大剣でフレイムリザードのブレスを防ぎ切り


彼らの熱い外皮をものともせずに斬り刻む


外皮を持ちかえれば、ギルドで高値で買い取ってもらえる事だろう




『モードチェンジ:スペルキャスター』


ワタルは在りし日の魔術師に姿を変える


(マコ お前の魔法は凄かったよな)


『メガ・フリーズ』『グレートストーム』


『極寒地獄 コキュートス』


氷と風


二つの上級魔法を掛け合わせた融合魔法


マグマ地帯が、一面氷結地帯と化した




「魔物の死体を掘地出すのが手間ですね」


折りたたまれた高周波ブレードを展開し高速回転しながら『飛行』『推進』で飛翔する


『ブレードサイクロン』


刃の嵐と化したアトラスが、縦横無尽に飛び回り


凍り付いた一帯から器用に氷漬けになった魔物死体を掘り起こしていく


「ほんと いつもお手間をおかけします」


「どういたしまして」




自分たちは強くなり喜んでいたのも束の間


ワタルとアトラスの規格外なやり取りを、無言で見つめるしかない『魔導兵団』の面々だった




猛暑とマグマによる高熱の攻撃さえ対処してしまえば難易度は高くない


この環境に対応する事が難易度とも言える


順調に踏破していく『魔導兵団』と『漆黒の守護者』合同パーティー


『魔導兵団』が数年をかけて目指していた最下層


地下50階層へとたどり着く


そこに待ち受けていたのは最後の階層主


それは世界最強の生物


「火竜だと!?」




(でも何だか行けそうな気がする~!)


思わず吟じてしまう団長だった

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