第62話 ダンジョン攻略合同作戦(前編)

中層で『魔導兵団』汎用型組改め、『中層の覇者』達6名が活躍する中


『魔導兵団』の4名と『漆黒の守護者』2名のダンジョン攻略合同作戦が開始された


ハジメーテの街のダンジョンには10階層ごとに転移魔方陣が存在し入り口へ転送できる


逆に入り口の魔法陣から、攻略した階層の魔方陣を選択して転移することも可能だ


『魔導兵団』は30階層にある転移魔方陣への転送が可能であるが


ワタルたちは30階層まで攻略が進んでいない為、20階層からのスタートとなる




21階層へと降りて


まずは強化した装備のテストを兼ねて、『魔導兵団』の4名のみで魔物を討伐していく


『ステルス起動』


斥候型兵士の姿が掻き消える


「私では探知できません 素晴らしい隠密性ですね!」


探知特化女性兵士が驚きの声を上げる


(へへへっ! 確かにこいつぁすげぇ性能だな 俺って最強じゃね?)


斥候型兵士はその言葉にほくそ笑むが


「ですが油断は禁物ですよ」


アトラスが自分を指さし、まるで心を読んだかのように警告してくる


『マジかよ!? 見えてんのか? ていうか、俺心読まれてる!?』


「やっぱり古の錬金術師にはまだまだ及ばないな」


ワタルは、アトラスを生み出した錬金術師 パラケルススの姿を思い浮かべながらそう呟く




「前方から5体来ます」


探査型特化女性兵士が警告を発する


それに応えるように、団長が背中から大剣を抜き放つ


近接特化型は拳を突き出し身構える


「全部倒しちまってもかまわんのでしょう?」


「馬鹿か? それでは性能テストにならんだろう」


「お前が一体、俺たちで2体ずつ倒す」


「一度行ってみたかっただけですよ へへへ」




キラーメンティスが5体


鎌鼬を飛ばしてくるが、索敵型兵士が展開した防御結界に阻まれる


その内一体がいきなり首を撥ねられ倒れふす


数々の冒険者の首を撥ねて来た自分たちのお株を奪われてしまった




「直ぐに離れろ お前ごと斬り飛ばすぞ」


「怖えよ団長! 俺の扱い酷くねぇ?」


斬られちゃ敵わんと、取って返し直ちにステルスを解除する


ワタルたちとの最初のやり取りが影響していると思われる


団長が一瞬で間合いを詰め大剣を横なぎに払う


高周波を響かせ『推進』で加速したその刃


何度か素振りしていたが、すでに使いこなしている


宣言した通り2体を輪切りにした




「次は俺の番だぜ!」


近接戦闘特化兵士は巨人族を思わせる巨躯とは思えない素早さで自分の間合いまで詰め寄る


『サンダー・インパクト』


雷撃を纏った右パンチを一体に放ち粉砕


『エクスプロージョン・インパクト』


死方向性爆撃魔法を纏った左パンチがもう一体を爆殺した




「お見事! 食らったのは初撃の鎌鼬だけか」


「それも防御結界でしっかり防いでおられましたね」


ワタルとアトラスの賛辞に


「信じられないくらいに体が軽い」


「それにこの大剣に付与してもらった機能が素晴らしい」


「まだ完全には使いこなせないが、キラーマンティスをまるで紙のように斬れてしまった」


団長は強化された自分の愛剣を見つめて満足そうだ




「打撃と同時に魔法を発動するなんて聞いたことが無い」


「拳には傷ひとつないんですから、なお驚きですよ」


「それにこれだけの攻撃を繰り出しても魔力の消費が以前より断然少ないなんて感動ものだぜ」


近接特化型兵士も自慢の拳に追加された機能に満足しているようだ




途中冒険者と出くわす


『中層の覇者』に救われたパーティーだった


「あんたんとこの団員には世話になった」


リーダーが頭を下げてくる


「『魔導兵団』いや『中層の覇者』の戦いを始めて見たが凄かったぜ」


パーティーメンバーの一人が『中層の覇者』の戦いぶりを興奮気味に話して聞かせてくれた


「そうか あんたたちが無事で何よりだ」


言葉数は少ないが、団員たちが活躍していることを聞いて


その声は弾んでいた


「おうっと! 俺達はこれから速攻でギルドに戻ってエリクサー うっ!」


そのときワタルの鋭い眼光がリーダーに突き刺さる


「に勝るとも劣らない効力を持ちながら良心価格の『マルチポーション』を買いに行くぜ!」


ワタルの眼光が和らぎ 


ほっとするリーダー


「予算が足りれば『トーチカ』も買おうと思ってる」


「それじゃ また!」


そういって一行は去って行った




ワタルはエリクサーが気に入らないわけではない


その製法を独占して暴利をむさぼっている連中が気に入らないだけだ


エリクサーが手に入っていれば危機を乗り越えられた冒険者も沢山いたはずだ


だが高価すぎて上級者でもなかなか手が出せない有様だ


だがその後、『マルチポーション』の登場で、エリクサーは売れ行きは悪化の一途をたどり


とうとう値段を下げねばならなくなる羽目になる




今まで苦戦していたのがまるで嘘のように踏破を続けていく『魔導兵団』


気が付けば、あっという間に30階まで到達してしまった


階層主であるジャイアント・スコーピオンが彼らに立ちはだかっ・・・たが瞬殺された




戦利品を均等に分配し


「今日は切りもいいし、これで戻りますか?」


「明日から本格的に下層に挑みましょう」


ワタルたちに同意し転移魔方陣を使って帰還する『魔導兵団』の面々




しかし、彼らがが驚くのはこれからだった



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