第60話 中層の覇者(中編)

「団長そして『漆黒の守護者』のワタル殿 今回のダンジョン攻略から俺たちを外してください」


『魔導兵団』のうち汎用型6人が頭を下げる


「どうした? 破損個所も修理してもらえた 何か問題でもあるのか?」


団長の問いに


「俺たちも、もちろん同行したいんです」


「でも俺たちの性能では中層までが限界なんです」


「それ以降は足手まといになってしまう」




ハジメーテの街にあるダンジョンは4つの層に分けて呼ばれている


地下1階層から10階層が上層


地下11階層から30階層が中層


地下31階層から40階層が下層


そして41階層から50階層が地獄の深層と呼ばれている


ちなみに『魔導兵団』は下層に入ってからほとんど攻略の成果が出ていない


汎用型の自分たちでは下層の魔物に攻撃が通らない上に防御もままならない


6名が団長たち特化型4名に守られる形になってしまうのだ




「お前たちがそんな思いでいたとは」


「気づいてやれなくて済まない」


団長は彼らに頭を下げた


「申し訳ないのは俺たちです」


もっと自分たちに力があれば、彼らは自分たちの力の無さを嘆いた


「いや、その辺は、強化すれば全く問題ないですよ」


ワタルはさも簡単な事のように答える


「そうですね、ワタルが強化すればみなさんの戦闘力はこのダンジョンの攻略に十分耐えられます」


更に、アトラスのお墨付きだ


「でも、確かに12人ってのは過剰戦力だと思ってたんだよなぁ」


「そこで6名の皆さんには攻略を円滑に行うための助力をお願いしたいんですよ」




そこで彼らにお願いしたのが、日ごろ行っている人助けの代行だ


上層は、『冒険者れこーだー』の普及に伴い、冒険者同士での相互扶助が機能している


問題は中層だった、これまではほとんどの冒険者が上層のみで活動していた


冒険者が冒険をしない


嘆かわしい現実だった


それが最近になり中層に挑戦する冒険者が増えたのだ


真の意味で冒険する者が増えるのは喜ばしい事なのだが、それにはリスクが伴う


ついついピンチな場面を見つけては救助に向かってしまうワタル


彼らの攻略は中層で停滞してしまった




中層なら6名でどうにか対応できると考えた汎用型組だった


だが、わたるの提案はその上をいくものだった


「今俺のもつ技術で皆さんを強化しますんで」


「3人一組で中層の巡回をお願いします」


「いくら最高の錬金術師に強化してもらったとしても 流石にそれは・・・」


出来た


出来てしまった


と言うか楽勝だった


汎用型組はワタルの強化を少々いやかなり侮っていた




先ず装甲を鋼鉄製から、WAW謹製の上位モンスター外皮や外殻を張り合わせた積層構造装甲に変更することで大幅な軽量化に成功


動力用の魔石に付与された術式をアップデートした事により


燃費の向上及び駆動力も大幅に向上


『吸収』スキルを術式化し付与した事により『魔石』が魔力の供給だけでなく自身の強化にもつながることになった


『超再生』は魔力の燃費の問題で採用を見送ったが、本体に『再生』を付与することにより、大破しない限りメンテナンスは不要


『収納』術式により勇者のような制限なしとはいかないが、大量の物資の運搬が可能になった


※WAWは(ワタル錬金工房 ワタル・アルケミスト・ワークショップの略である)




さらに錬成の拡張スキル『モードチャンジ』を機能として組み込むことを思いついく


現状では、ステルスともうひとつ役割に合わせた形態の2モードにしか形態変化しか出来ない


だが、3人で役割を分担することで中層最強クラスのパーティーと化す


汎用型と侮るなかれ


かつて『10人で一国を滅ぼした兵団』の団員である


連携はお手の物だった




モード:アタックには 『超振動』スキル『硬度強化』『再生』を付与した大剣


モード:ディフェンスには 『スライムコーティング』『斥力制御』『硬度強化』『再生』を付与した大楯


モード:スペルキャストには 4つの魔石をはめ込み4属性の攻撃魔法を発動可能な杖および『魔導砲』発射形態『多脚砲台』への変形機能


以上の装備と機能を組み込んだ




6名に3人1組になってもらい、『冒険者れこーだー』の救難信号の受信範囲を加味して


1組を16階付近、もう1組を26階付近で巡回してもらう事により中層全域をカバーしてもらう




ここに中層最強戦力が2パーティー誕生したのである



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