第43話 最終決戦(孤高の戦士VSツヨシ)

(強いなんてもんじゃないな まるで歯が立たん)


全身鎧と大楯に大剣を持った戦士とツヨシは一進一退の攻防を繰り広げ、一見両者の力の差はないように見えるが実際はまるで違っていた


相手は、ツヨシの攻撃を盾で受け、剣で斬りつけるのみ


対するツヨシは自分の持てる全てを使ってようやく渡り合っていると言った具合だ




それもそのはず、この大剣を軽々と振り回す剣士


彼は、この世界で最強謳われた戦士 シグルズ 


単騎で竜に挑み打ち倒した正真正銘の『ドラゴン・スレイヤー』


冒険者時代、彼は1人で全てのクエストをこなし達成していた


しかしさすがの彼も、魔王にだけは勝てなかった




その威力を『スライムコーティング』で軽減しても腕がしびれる大剣の威力


雷の魔法を纏わせた戦斧をものともしない大楯


彼の身に纏う装備も、最強と言われた品々だった



最強の剣:ティルフィング 鉄をも切り裂き、持つ者に勝利をもたらすとされる


最強の盾:アイアス その防御力は歩く城壁と噂されるほどの強度を持つ


最強の鎧:アキレウス 非常に強固で、装備した者の俊敏性を著しく向上させる能力を持つ



だがツヨシの装備も負けてはいない


その戦斧は、『硬度強化』『超再生』『耐久性強化』を施され、火、雷、風、土のいずれかの攻撃魔法を追加ダメージとして与えられる


その鎧は、堅牢さだけでなく、魔石によって駆動力を発揮しツヨシの動きを加速させる


その楯は、今まで相まみえた強敵たちの素材と強化スキルを複合させた逸品


更に小型ではあるが魔導砲まで装備されていたがツヨシはこの戦いで、この必殺の遠距離兵器を使うつもりは無かった


如何に魔物に姿を変えられ、理性を失おうとも、彼らは、人々の為に魔王に挑んだ強者たち


唯の強がりそう言われてしまえばそれまでのこだわり


だが自分なりの、敬意を示したかった


信頼する仲間があつらえてくれた装備に、己の力と技


自分の持つ全てのカードを出し切って戦う


そして必ず勝つ




ツヨシはここで最強のカードを切る


『闘気 バトル・オーラ』


身体能力強化の極致に至った者だけが纏う事を許されるその力


通常の身体強化とは桁違いの瞬発力と耐久力を発揮できる


自身を白竜と名乗る、黒い竜との戦い


その中で竜が纏っている闘気『竜闘気』をツヨシは強く感じていた


ただの一度、感じた力を己の物として発動させた


だがまだ及ばない




戦斧に込められた4つの魔石全てに魔力を込めて放つ斬撃


『フォーエレメンタル・スラッシュ!』


まだ足りない




『ボルテックス・オーラバッシュ』


シグルズの力に、闘気を纏った腕が、鎧の駆動機関が悲鳴を上げる


(例え、この腕が引きちぎれようとも構わない!)


ツヨシの不屈の闘志で力を増した闘気と斥力を込めた大楯は、最強の盾を弾くことに成功した




この戦いで初めて訪れた攻撃の機会


「この機会を逃さない!」


「俺が持てる全ての力をこの一撃に込める!」


4つの魔石全てに魔力を込めて放つ斬撃が最強の鎧に衝突するその一瞬


全身の闘気を刃に集めて爆発させる


『フォースエレメンタル・オーラインパクト!』




彼のまさしく全身全霊を込めた一撃が、最強の鎧に打ち勝つ


戦斧は最強の鎧を切り裂き、最強の戦士を大地に沈めた


「完敗だ」


シグルズはツヨシの戦斧を受けるたび、己が剣を彼に打ち込むたびに次第に意識を取り戻していたのだ


傍に駆け寄り『核』で治療を施そうとするツヨシを押し止め


「俺の名はシグルズ 戦士だ」


彼はは自分の名前を名乗った


その名は、ツヨシも耳にした事がある


彼が噂に名高い世界最強の戦士だと分かり驚愕する


「俺は自分が最強だと思っていた 実質これまでの戦いの中で負けた事は一度も無かった」


「だが俺の力など魔王に負けてあっさりと、へし折られてしまうようなちっぽけなものだった」


「あれは戦いと呼べるようなものではなかった 奴には相手に無いする敬意が微塵も感じられなかった 俺は物の様に壊されただけだった」


「だが今日の戦いに俺は興奮した、我を失い操られた心が正気を取り戻すくらいにな」


「全てをぶつけ合えたと感じた お前の一撃には俺に対する敬意が込められていた その上で必ず勝つと言う強い意志も」


「俺は嬉しかった このような姿に身をやつしても 戦いに敬意を払うことのできる強者と出会えたことに」


「特にの最後の一撃には魂が震えた」


「これこそが俺の求める戦いだった 俺が探していた力だと感じたんだ」


シグルズは命が尽きようとしているにもかかわらず満足げに語った




「俺が今戦えているのは、仲間のお陰なんです」


ツヨシは謙遜ではなく、本当の事を話した


「もし仲間が居なかったら、俺はここまでたどり着けませんでした」


「そうか お前には、素晴らしい仲間がいるんだな」


「俺は一人で何でも出来ると思っていた」


「だが、そうか 敗れても立ち上がる力を与えてくれる」


「仲間とは素晴らしいものだな」


「俺も生まれ変われるのなら、今度は仲間と冒険がしたくなった」


遠くを見つめながら彼は独り言のように呟いた


「名前を聞かせてくれるか?」


「ツヨシと言います」


「世界一と言われた俺を倒したのだ ツヨシ 今日からお前が世界一の戦士だ」


「これをお前に託す 俺の思い そして魔王に敗れていった者たちの思いを」


そういって彼は鎧の傷の隙間から『核』を抜き取ってツヨシ手渡す




彼の目から命の灯が消えた


だがツヨシにはその顔がとても穏やかなものに思えた



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