第42話 最終決戦(最強の剣士VSアオイ)
アオイは甲冑を身に纏った剣士と向き合う
「この剣士 強い」
上段の構えを取った剣士
それを姿を一見しただけで、相手が強者だと確信する
対するアオイは居合の構え
剣士がアオイの間合いに入る
常人では視認できない剣筋が幾重にも走り、金属のぶつかる音が絶え間なく響く
この時点で剣士の実力がアオイに勝っていると言えた
何故ならば居合とは一撃必殺の剣
抜き放った一閃で相手を討たなければならない
それが打ち合いに持ち込まれているのだ
アオイは必殺の一撃を剣士によって防がれたのだ
だがアオイの顔には絶望の色は見えない
あまつさえ、笑顔を浮かべている
自分の実力を上回る強者との勝負
弱者と幾度戦おうとも得ることのできない何かがそこにはある
(くっ! ここから更に剣速があがるか!?)
考えてから動いては反応が出来ない、それほどの速さで剣士の放つ斬撃がアオイに襲い掛かる
その窮地の中、アオイはその眼を瞑る
剣士が剣を振る度に激しい殺気が生じる
目で追わず、自分はその殺気を感じるだけでいい
故に目を瞑ったのだ
ワタルが何度も試行錯誤を重ねて生み出してくれた大刀
今はそれが体の一部のように感じられ、自然と殺気に反応し弾き返してゆく
胸にたぎるのは、仲間たちへの思い
彼らを守る剣となりたいその一念
死地において、いや仲間の為に命を懸けた戦いであればこそ、アオイは剣士としての実力を昇華させた
彼女の剣が剣士のそれをを凌いでいく
剣速が上がったわけではない
彼女の動きが研ぎ澄まされ、その度に無駄な動きが、そぎ落とされていくためだ
その証拠に剣士の身体に刀傷がみるみるうちに増えていく
剣戟の嵐が止み目を開けると、剣士はその場に倒れ伏していた
「見事だ」
信じられない事に、剣士は正気を取り戻していた
「直ぐに手当てを!」
アオイは慌てて剣士に詰め寄るが
「それはだめだ! 今は正気に保てておるが、それもいつまでもつか分からぬ」
「それよりも礼を言う」
「拙者は己の力ばかりを求めていた」
「剣の力でのし上がる事のみが、己に残された立身出世の道 そのような世の中で拙者は生きて来た」
どうやら彼は戦国時代にこの世界に召喚されたようだ
「この世界に来てからも、己の力を高める事ばかり考えていた」
「だがそれは誤りであったようだ」
「そなたの剣を受ける度、誰かを守りたいと願う強い思いが伝わってきた」
「その思いが拙者を正気に戻し、拙者にも共に戦い守りたいと願うともがらが居たことを思い出させてくれた」
「最後にそなたと剣を交えられたことを光栄に思う」
「どうか我が力が、そなたの一助となる事を心から願う」
そう言うと剣士は体内へ貫き手を突き刺し『核』を抜き取ってアオイに手渡す
満足げに笑顔を浮かべて剣士は息絶えた
「私こそあなたと剣を交えられたこと光栄に思います」
「ありがとうございました」
剣士の亡骸に手を合わせ、アオイは深々と頭を下げた
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