第33話 魔導兵奪還作戦(中編)
部屋に入るなり、何だかカッコいいポーズを決める、全身が銀色に輝くミノタウロスに
「今までの改造モンスターとは一味違うな」
油断なく大楯を構えるツヨシ
「特に右脚は他の部分とは全く違う力を感じる」
居合の構えを取り、迎撃態勢のアオイ
「おお! よく分かったな」
「あの右脚はワシが創った『魔導兵』の一部じゃ」
「いくら魔王でも一朝一夕では、創れはせんわい」
確かに、錬金術師の霊はどや顔で言うのも納得のハイクオリティーだ
「あの足で 大玉君を 飛び越えた」
シノブの言う通り、『大玉君1号』を単独で生き延びた理由は、右足の跳躍力の賜物だろう
「なかなか手ごわそうだね ぶっ飛ばし甲斐がありそう! わくわく」
回復職とは思えないセリフをニコニコ顔で言うユウジ
「かなりの素早さだったわ 上級魔法を当てるのは難しそうね」
それでも、しっかり得意の上級火炎系魔法を発動前状態で待機しているマコ
「シノブハ サカデ ツブレテイル マモノノ カイシュウヲ タノム」
「ユウジハ サカミチヲ ノボッテクル マモノヲ ハッケンシダイ プロテクションウォールデ イリグチヲフサイデ」
「アオイハ スキヲミテ ミギアシヲ キリオトシテホシイ ナルベキムキズデ」
「マコハ マモノノ ウゴキガ トマッタラ マホウヲ ブチコンデクレ」
(今回は、僕もいいところを見せよう!)
そう決意したところで
「メタルミノタウロスは俺に任せてくれ!」
マコをチラ見しながらツヨシがワタルに訴えてくる
「ソコマデイウナラ カッコヨク カテヨ!」
ツヨシの恋時の為に、ワタルは快諾した
「任せてくれ!」
こうしてツヨシVSメタルミノタウロスの戦いが切って落とされた
メタルミノタウロスは高性能の右足で飛び上がり、ツヨシに飛び蹴りを繰り出す
「ぐらびてぃ~ば~っしゅ!」
説明しよう『グラビティーバッシュ』とは、マコとお揃いの技が欲しいとツヨシ懇願され大楯に施された『斥力』の術式を発動と同時に『シールドバッシュ』を発動させるツヨシの新技だ!
ワタルはツヨシの為に一肌脱いで、マコに頼み込み『グラビティー・オーブ』を『走査』させてもらい『術式構築』して彼の大楯に付与したのだ
まさに、汗と友情の結晶!
メタルミノタウロスの高速飛び蹴りも、カウンター気味で喰らった『グラビティーバッシュ』で吹き飛ばされる
銀の牛男は轟音と共に壁にめり込んだ
敵が復活してくる前に、ツヨシが戦斧を天高く掲げる
「雷撃の力よ我の斧に力を与えよ!」
「さんだ~あ~っくす!」
轟音と共に雷が戦斧へと落ちる
その刹那に戦斧に強力な雷の力が宿る
説明しよう『サンダーアックス』とは、戦斧に雷の魔法を付与した魔法剣ならぬ魔法斧だ
これまたワタルがマコに頼み込み、魔石に『サンダーボルト』の魔法をチャージしてもらい『走査』後『術式構築』してツヨシの戦斧に付与した
まさに、汗と友情の結晶!
ちなみに呪文を唱えなくても魔力を流し込めば発動する
だが、マコみたいにカッコよく呪文を唱えたいとツヨシが言い張るので、仕方なしに一緒に考えた
ガラガラと壁の破片を周囲にまき散らしながら体勢を立て直そうとするメタルミノタウロス
そこへ、ツヨシの新技が炸裂する
「さんだぁ~すら~っしゅ!」
雷の力を帯びた戦斧がメタルミノタウロスにさく裂
戦斧の攻撃力に猛烈な雷撃魔法の威力が加わる
ちなみに戦斧には4つの魔石を埋め込みそれぞれに、火、水、雷、風系の攻撃魔法術式を付与してある
魔力を流し込む魔石を変えることによって、4属性の魔法追加ダメージを切り替えて与えれれるのだ
今回雷撃系の攻撃魔法を選んだのには訳がある
術式は魔法を発動する回路の働きをする
雷撃はその回路に負荷をかけ機能不全を起こさせたり、うまくいけば術式を破壊できるのだ
もともと魔導兵のパーツであった右脚には対雷撃の機能が働いた
だが、その他のパーツには対雷撃の機能は施されていなかったようである
現に『サンダースラッシュ』を食らったメタルミノタウロスは煙を上げて機能を停止した
「うおおおおおおお!」
愛用の戦斧を掲げ、勝利の雄たけびを上げるツヨシ
ワタルの中二病がすっかり伝染したようだ
(兎にも角にも 右脚ゲットだぜ!)
シノブが魔物の死体と『核』を回収して戻ってきて一言
「ツヨシだけ ずるい」
その一声で、他のメンバーの武器にも4つの魔石が埋め込まれる事が確定
「俺のアイデンティティーがあああああああああぁ!」
自分の技だけ地味だった悩みが解消された瞬間に、独自性を失ったツヨシ
(ツヨシよ すまん これもパーティー全体の戦力アップの為だ)
大丈夫だ、戦闘ではワタルは全く活躍していない
シノブに『大玉君1号』を回収してもらうとその後ろには有象無象の魔物たちが犇めいていた
坂を魔物たちが昇ってくるたびに『大玉君1号』を何度か転がすと増産された魔物は品切れとなったようだ
ワタルたちは未踏破部分の探索を再開した
『疾風迅雷斬乱舞』
雷撃を帯びたアオイの斬撃が『推進』の加速をもって、メタリック・オーガを沈黙させる
雷撃耐性を備えていない不用意な改造があだとなっている
その左腕は、錬金術師の霊が探していた『魔導兵』のものだった
『雷撃疾風手裏剣乱れ打ち』
マシンガンのような速さで撃ち出される手裏剣が魔物に刺さった瞬間に雷鳴が轟く
4つの魔石が埋め込まれた贅沢な手裏剣をふんだんに打ち込む超高級技だ
コスト的に!
ちなみに全ての手裏剣には、前もってワタルが魔力をマクロ機能で充填した
縁の下の力持ちアナウンサーさんの活躍のお陰だ
全身に突き刺さった無数の手裏剣から煙を上げた、メタリックの巨人の右腕も『魔導兵』のものだったのだが
(でもこの腕、大きすぎない?)
「ふふふ ワシが創り出したパーツじゃぞ? 大きさくらい自由に変わるわい」
という事でワタルの素朴な疑問は即答で解決された
『サンダージェットハンマー!』
ユウジの戦槌が、メタリックなトロールの頭を粉砕後、雷撃が追い打ちをかけた
頭を粉砕している時点で、雷撃は必要ないのではないかと思えるが
ユウジは嬉しそうなのでワタルは突っ込まないことにした
メタリック・トロールの太い左脚も『魔導兵』のものだったが、もう何も言うまい
「トロールの脚に使われるとはなんと不憫な」
そう嘆く錬金術師の霊だったが
(それでも頭が『魔導兵』の物じゃなくてよかった)
ぺしゃんこにされた頭部を眺めながら、心からそう思うワタルだった
ツヨシが戦っているのは『魔導兵』の胴体にオーガっぽい腕とトロールっぽい脚、そしてサイクロプスの頭を無理やりにを取り付けたメタリック・キメラだった
「これでよく動くな」
ツヨシが驚くのも無理はない
サイクロプスの頭が重すぎて少しふらついてる
「やっぱり ワシの『魔導兵』の胴体の性能が良すぎるからじゃろうなぁ」
と変な理屈をこねる錬金術師の霊
(そういう問題じゃない気がする)
サイクロプスの目から発射される『熱光線』を咄嗟に自身の『熱光線』スキルを目から発射し撃墜
『グラビティーバッシュ!』
『サンダースラッシュ!』
大楯と戦斧の二刀流で、メタリック・キメラを降した
「トコロデ トウブハ ドコニ アルンダロウ?」
そうワタルが思った矢先に『それ』は現れた
「二つ首の『魔導兵』?」
ワタルたちの前に立ちふさがったのは、1つは『魔導兵』の頭部
そして、もう1つは魔王製の頭部を持つ『魔導兵もどき』だった
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