第16話 偉大なる進化

地下8階層へ侵入早々、強烈な洗礼を受けたワタルたち


凶弾の嵐が止むと、不気味な程の静寂が訪れた


シノブに周囲を警戒してもらったが、魔物が潜んでいる気配はない


次の襲撃が来る前に、手分けして『核』の回収をすませる


かなりの数の『核』を確保できた


さらに『固有スキル』も


スナイパーインセクトからは『気配察知』『魔力圧縮弾』『魔力感知阻害』


バレットビートルからは 『魔力感知』『推進』『硬度強化』


シャドーパンサーからは 『影移動』『亜空間認識』『暗視』


と、探知系のスキルは階層が一つの森のような、地下8階層のように障害物のある地形で生き残るには必須と言っていいスキル


『魔力圧縮弾』と『推進』は、すでにワタルなりに活用できそうなアイデアが浮かんでいる


こと『影移動』に至っては、ワタルの影からスルリと姿を現し、華麗に浣腸を決めニタリ顔のシノブをみて、既に有効活用?されていることを、身をもって確認できた




備蓄のオークとスライムの『核』を全て消費し、改めて数の多いバレットビートルの『核』の中からいくつかを備蓄とした


ランクの高い魔物の『核』ほど、補給のインターバルを長くできる上に、傷の回復力が高い為だ


数の少ないシャドーパンサーはシノブ、アオイ、マコに吸収してもらう


『影移動』で影に潜ってもらえば、シノブとアオイの場合は奇襲攻撃に、装備で防御力を上げにくいマコは、緊急避難の手段として有効だと判断したからだ


数の多いバレットビートルとスナイパーインセクトは皆で均等に『吸収』していく


すると、ワタルとしては2回目、他のメンバーは初めてのイベントが始まる


(おめでとうございます! 進化可能です 進化しますか? YES/NO)


そう『進化』だ!


メンバーに『進化』がいかに過酷なものかを説明する


(シンカハ キョウレツナ イタミデ キヲウシナウ ホドダ)


(マモノノ シュウゲキニ ソナエテ ヒトリズツ オコナッテイコウ)


ワタルの説明を真剣な面持ちで聴いていた彼らは恭しく頷いた




まずは、見本とばかりにワタルが『進化』して見せる


女子たちには後ろを向いてもらい


まずは装備をは外し、ひとつ深呼吸し、覚悟を決めて『進化』を開始


「ぐおおおおおぉ!」


前回と同じだ、激しい痛み、骨のきしみ、筋肉がちぎるような、皮膚が裂けるような不快な音が、周囲にまで聞こえているようだ


ワタルの叫び、その体から発する不快な音を耳にして、仲間たちがまるで自分の事のように、顔を歪める


女子たちは後ろを向いているはずだが、チラッチラッと視線を感じたのは気のせいだろう


そして、ワタルは前回同様、気を失った


他のメンバー曰く、ワタルが目を覚ますまでに2時間ほどかかったそうだ


その間に魔物の襲撃を受けていたらと思うとゾッとする


体長は2mを軽く超え身体能力も大幅に上昇






次はツヨシの番だ


先ほどのワタルの苦しむ様を目の当たりにして、顔は青ざめていたが、意を決して装備を外し、進化を開始した


「うおおおおお! 体中から力が漲ってくるぞ!」


体長が伸び、膨れ上がるように筋肉が膨張していくが


「ん? 痛くは無かったな」


体長は2m近く、ホブゴブリンの時よりも、更にマッチョになったにもかかわらず、彼は痛みを感じていなかった


(ん? 何でこんなにあっさり進化してんの?)




ユウジは


装備を外してもらったが、体長や体格にそれほど変化は無かった


その分何故か、ハンサム度アップ!


笑顔を浮かべた時、歯がキラッとするようになった


(何のスキル?)


彼も痛みは無いと言う




シノブは


かわいらしさがアップした!


そして素早さも


目にもとまらぬ速さであたりを駆け回る


何故か、ワタルに駆け寄るときはテテテと駆け寄ってくる


彼女の更にかわいさを増した笑顔を眺めながら頭を撫でる


そうしていると、なんだか進化の仕方の違いなど、どうでもよくなった




アオイは


体長もツヨシよりも若干低いが2m近くと高くなり筋肉量も大幅アップ


可憐な美少女から、ワイルドな美少女へと変身


しかし何だか様子が変だ


顔を赤らめながらモジモジしている


「皮鎧がきつくて、苦しいのだが」


(わわわ! 装備外してもらうのすっかり忘れてた)


ワタルは慌てて駆け寄り、皮鎧のサイズを『変形』で調節した




マコは


ローブを着ているので身体的な変化はよく分からないが身長はそれほど変化がなかったようだったのだが


まるでデジャブのような光景を目にする


顔を赤らめながらモジモジ


「私も鎧がきついかも・・・」


ワタルは、今度は何とか慌てずに対応できた


ワタルの名誉のために明言しておこう


2度も装備を外してもらうのを忘れたのは、ワザとではない!決して!




ステータスで種族名を確認してみて再度ビックリ


(なんだよ! グレート・ゴブリンって)


種族名と言うよりも、ゴブリンに形容詞をつけただけだった


だが、あながち間違いではいなかった


特に女の子たち


まさにグレートになっていた、体形的に


所謂、ボンキュッボンってやつだ


(あれって筋肉って訳じゃないよな?)


皮鎧のサイズ調整の際に目のやり場に困った


小さくなった皮鎧のせいで、色んな部分が食い込んだり、はみ出したりしている様が、妙に色っぽく見えてしまう


ワタルは煩悩を退散させるべく、ボディービル的な謎のポージングを繰り返しているツヨシの方を見た


煩悩は速やかに、はるか遠くへと飛び去った


彼もある意味グレートだ!


どうやら、職業によって変化の違いがあり


前衛職は、身体能力、特に筋力の強化に


後衛職は、精神力や魔力の増加へ変化の比重が大きくなるようだ




こうして、メンバー全員の『偉大な進化』は完了した


次は、装備の強化である

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