第14話 未だチュートリアル中?

「オソラク マダ ボクラハ チュウトリアルノ トチュウ ナンダ」


ワタルの言葉の真意が読めず、戸惑う仲間たちに、分かり易く説明していく


命の危険が何度もあったけれど、こうして仲間がみんな揃っている


おそらくこれは魔王も、織り込みの済み状況


魔王の目的はダンジョン内にいる魔物たちに殺し合いをさせて、一番強い一匹を選び出す事


それにしては、地下10階層、そして現在の地下9階層に出現する魔物の種類が少なすぎる


これは、まるでワタルたちがこれからの状況に対応できるように、魔王がお膳立てしているようなのだと


「オソラク ホンバンハ チカハチカイソウ カラニ ナルト オモウ」


(それにしても・・・なぜ皆、髪の毛が生えてる?)


それとなく聞いてみたが


「ホブゴブリンは髪が生えているものなんんじゃないのか?」


「ワタル ハゲ」


「そう言えば、ワタルだけ髪が生えてないよねぇ」


「気にする事は無いと思うぞ! 私は髪の毛があろうが無かろうが、ワタルがゴニョゴニョ」


「その方がゴブリンらしいって言うか・・・」


(フォローになってねぇ!)


(顔だけでもショックなのに、髪の毛まで)


ワタル一人だけ典型的なホブゴブリンの外見


それとは裏腹に、他の仲間は肌の色以外ゴブリン色も魔物っぽさすら無さすぎる


(どうなってやがる! 不公平にも程があるだろ!)




ワタルはこの怒りを、本番である地下8階層以降で待ち受けるであろう魔物たちにぶつけてやると心に誓う!


その為にも仲間たちの装備は万全なものにしたい


まずはアオイの武器


スライムに溶かされ手持ちの武器は、もはや使い物になりそうにないので、作り置きした剣を、刀をイメージして『変形』させる


最近では『変形』後のイメージが、3Dモデルの様に頭の中に浮かべられるようになってきた


形だけでなく長さや重さのバランスをアオイと二人で話し合いながら納得できるまで突き詰めた


「うむ これならば実戦にも申し分ない」


目にもとまらぬ素早さで抜刀し、鮮やかに鞘へと納める


アオイのお墨付きを貰えて大満足のワタルだった


兜は視界の邪魔になるという事で、皮でベルトを作り額部分を鋼で補強した額当てを装備してもらうことにした


鎧は、俊敏性を考慮して、今回は修理した皮鎧をそのまま装備してもらう




マコの初期装備は損傷は少ないとはいえ、ローブに木の棒と言っても差し支えの無い杖のみと、粗末としか言えないものだった


ローブは『修理 リペア』で新品同様に


魔術を操る者たちは、魔力の操作を阻害されるためオリハルコンやミスリルなどの例外を除いて、金属を多くは身に着けられないらしく、皮鎧をローブの中に着込んでもらった


杖の先には、魔力制御と増幅を補助する働きがあるという事なので、今現在一番強力なオークの『核』を融合で取り付けた


これでパーティー全員が現状用意できる最高の武装を装備できた


後は装備の試験運用と連携の確認


その為に、地下9階層に存在する魔物供は・・・コード37564


ミ・ナ・ゴ・ロ・シだ!




結果は、完全なるオーバーキル!


オークは、


大楯に押しつぶされ


短剣で首を撥ねられ


刀で袈裟懸けに両断され


メイスで頭を粉砕され


呪文で焼き尽くされた


ワタルはそれを見守っている


(あぁ、連携の確認出来なかったなぁ・・・)


そう心の中でつぶやきながら


スライムの対処も鮮やかなものだった


シノブがスライムに駆け寄る


反撃の酸の噴射を華麗に飛び越え、スライムの頭上すれすれを行き違う


その瞬間、右手がブレた様に見えた直後には『核』が握られている


そして宙返りして着地


テテテとワタルに近づいてきて、頭を擦り付けてくる


撫でてとの催促


「シノブハ スゴイナ テハ ダイジョウブカイ?」


「ん! 平気」


頭をなでられて目を細めながら、ご満悦で答えるシノブ


スライムの体内を貫いたはずの右手は全くの無傷だった


『スライム・スレイヤー』の称号は、間違いなく彼女のものだった


「ユウジニモ ナデテ モラッタラ ドウダイ?」


悪戯っぽくワタルがそう言うと


「絶対 無理!」


顔を真っ赤にしてポカポカ叩いてくる


「ジャア ナンデ オレナライイノ?」


「ワタルは お兄ちゃん みたいだから」


そう言って、はにかみながら笑う


もうそれ以上の答えは必要なかった


「シノブ 凄いねぇ! 僕にも頭撫でさせてよ!」


「無理! 絶対無理!」


笑いながら追いかけるユウジ、真赤になって逃げるシノブ


二人はワタルの周りをクルクルと走り回る


そんな二人を見守りながら


(彼女の為なら、何回でも何万回でも頭を撫でてあげよう)


そう思うワタルなのだった




『核』はレベルの平均化を図るために、備蓄用以外はほとんどをシノブ、アオイ、マコに吸収してもらった


残念ながら『進化』には至らなかったが、かなりのレベルアップが出来た


更に!


ワタルの『錬金』発展スキルに『術式構築』と『術式付与』の二つが加わった




『術式構築』 走査で手に入れた『固有スキル』を術式として構築できる


『術式付与』 構築した術式を対象に付与できる




ワタルは、『固有スキル』とは一種の魔法であると考えた


魔法であれば、その術式を構築できる


そして魔物には『固有スキル』を発動する術式が、その身にに刻まれているのではないか、と推測している


つまり彼の推測が正しければ、魔物とは魔道具『アーティファクト』をその身に宿した生き物なのである


『術式構築』と『術式付与』この二つがあれば、武器や防具へ術式化した魔物の『固有スキル』を付与することにより『炎の魔剣』『雷の斧』『龍の息吹を凌ぐ盾』『不可視のマント』『魔封じの鎧』など、おとぎ話に登場するような装備に変えることが出来る


強力な『固有スキル』を手に入れ、それを付与できれば、『国宝級』どころか『伝説級』の魔道具にも匹敵する兵器が誕生してしまう可能性もあるのだ


今のところ大した『固有スキル』を手に入れられていないので、宝の持ち腐れではあるが、地下8階層以降の敵が強力であるほど、こちらも強力な力を手に入れるチャンスになる


「ヨシ イコウ!」


「「「「「魔王を倒す力を手に入れに!」」」」」




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