第13話 奮い立つ魔導士

あっけなくマコは見つかった


だが様子がおかしい


「近寄らないで!」


全てを拒絶する


そんな意思を含んだ叫び


「マコ 心配するな! 」


「みんなだ! ワタル ツヨシ ユウジ シノブ みんなが見つかったんだ!」


「見たら分かるわよ!」


「だから近寄るなって言ってんのよ!」


敵だと思って警戒しているのだと思い、彼女を安心させようとしたアオイだったが、それが勘違いであったと気づく


彼女は彼らがかつての仲間だと分かったうえで、彼らが近づいてくる気配を察して身を隠したのだ


以前の落ち着いた、柔らかい物腰は見る影もない


彼女は、怒りの視線を仲間たちに向ける


特にワタルに




「 あなた達 いいえワタル!」


「 何もかも 全部アンタのせいよ!」


「あんたさえ、ちゃんとした勇者だったら、こんな事にならなかったのよ!」


「この能無し勇者!」


罵詈雑言を並べ立てる相手を悲しそうに見つめながらワタルは


「アア ソノトオリダ ゴメン マコ」


「ホントウニ スマナイ」


大きくなった図体を、うな垂れて頭を下げた




「おい! マコ! さすがに、それは言い過ぎだぞ!」


さすがに温和なツヨシにも、今の発言はとてもではないが許せるものではなかった


「ワタルがどれだけ私たちを心配していたと思ってるんだ」


如何に親友でも言っていいことと悪いことがある、とアオイ


「・・・」


シノブは黙ったままマコを見つめている


「まぁまぁみんなちょっと落ち着こうよ」


ユウジはこの場を収めようと、珍しく慌てていた




完全な八つ当たりだ、それは彼女にもわかっていた


彼女は召喚されて以来、この世界に馴染めなかった


魔物が怖くて仕方なかった、戦うのも嫌だった


そしてあっけなく魔王に殺された


魔王の強さは異常だった、あんなもの誰が予測できただろう?


しかし、なかば誘拐のようにこの世界に呼び出され、否応なく魔物と闘うことを余儀なくされ、無残に魔王に殺された


そればかりか目が覚めれば、魔物に姿を変えられているではないか!


だが、それは誰の責任でもない


少なくとも、この場にいる誰のせいでもない


それでも納得できない、くやしさ、怒り、悲しみ


どうしようもないそれらの感情を、ワタルにぶつけてしまった


彼なら許してくれる、その優しさに甘えてしまった


自分の狡さ、弱さが恥ずかしかった


「イヤ マコノ イウトオリダ」


「オレサエ モット ツヨケレバ」


「スキルガ ツカエテイレバ」


「チョウシニ ノラナケレバ」


「コンナコトニ ナラナカッタンダ」


「ウワアアアアアアアアア!」


ワタルはひざから崩れ落ちて、泣き叫んだ




「いやそれを言うなら俺も魔王の一撃さえも防げなかった 自分が情けない」


「僕は、ワタルを回復させてあげられなかった ごめんね」


「私 もっと 上手にやれた なのに出来なかった」


「私も精進が足りなかった すなまい」


みなそれぞれ自分の弱さを思い知らされ、苦しんでいたのだ




身勝手な八つ当たりをするマコを、ワタルは責めなかった


そればかりか、全て自分のせいだと頭を下げた


本当にそう思っていたのだ、今まさにこの状況も自分のせいだと


『能無し』とこの世界の者たちから、身勝手にもそう呼ばれた


どれだけ苦しかったろう、惨めだったろう


それでも仲間のの為に役に立とうと必死だった、彼の姿を思い出した


一番辛かったのは誰だったのか


その時ようやく気だ付いた


「ごめんなさいっ!」


ワタルにかけより、その大きな体を抱きしめる


「誰よりも一番辛かったのは、ワタルだったのに」


「私なんてずっと、怖くて逃げてただけ」


「アオイに、みんなに守ってもらってばかりだった」


「ワタルを攻める権利なんて誰にもない」


「だってあなたは、あんなにも頑張っていたんですもの」


「ああ! 私はなんて馬鹿だったのかしら」


「私もあなたのように、勇気を出してみんなの為に頑張りたい」


「もう一度だけ、私にチャンスをくれない?」


涙を流しながらワタルはマコを見つめた


ぎこちないけれど、嬉しそうに彼は笑った


「ジャアサ ミンナデ モウイチド ガンバッテミル?」


「私、今度は逃げないから!」


「俺も今度こそ、みんなを守ってみせる!」


「私も 上手にやる」


「それじゃあ 僕もがんばらなきゃだね!」


「魔王に目にもの見せてやろう」




みんながワタルとマコに駆け寄り、二人を包み込むように抱きしめ合った


あの頃と、姿かたちは変わってしまった


けれども、今だからこそ自分たちは本当の仲間になれたのだ


そう確信していた


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