閑話
照明を反射する体育館の床に、部員と同数のバスケットボールがバウンドして地響きを紡ぎだす。
男子バスケットボール部のみが使用している某中学校第二体育館では、ボールによる轟音とシューズのスキール音、そして七十近い部員達が張り上げる声で溢れ返っていた。
昨年度、開校1年目にして全国4位という結果を残したここは、全国指折りのプレーヤーである主将とエースを筆頭に数々の試合を勝ち抜いて来ている。昨年度の準決勝では優勝校に敗れたものの、新たなメンバーを加えた今年は他の強豪と比べても何ら遜色は無い。
「煉、ナイッシュー!」
練習後のワン・オン・ワンにて。主将のSGがスリーポイントシュートを決めると、相手のPFは彼の頭をくしゃくしゃっと搔き撫でた。
煉と呼ばれたSGは「やめろよ悠也」とPFの腕から逃げると、「…そういえばこの間、海皇と徳沢が練習試合したんだってな」とふと呟いた。
「は!?…それ、マジかよ」
「ああ。監督とコーチが話してた。結果は100対97で海皇の勝ち。…そして、第4Qの最後には、神嶋がブザービーターを決めた」
驚くPFに淡々と告げると、SGは「…あと、3カ月だな」とと高い天井を仰ぐ。照明の映り込むその目には何の感情も浮かんでいないが…裏腹に、彼の唇は好戦的な笑みに形を変える。
転がって来たバスケットボールが、彼の足元で動きを止めた。
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