視線の先に

“好き”をたくさん言い合った。

こんなに幸せなことなんて知らなかった。


彼が言葉をくれるたびに、私は高揚する。

初めてなんて知らないのに、早く奪い取ってほしいと心の底から願うくらい。


彼が言葉をくれるたびに、私は不安になる。

あなたを一瞬でも忘れることなんかできないのに、あなたはほかのことを考えてる。


嫌いと彼に言い放つ。

彼は素っ気なくて、私はすぐに後悔する。


好きとたくさん言った、想った。

募る不安が私を狂わす。




「今度、お前が行きたがっていた温泉に行くか。」


彼が遠くを見ながら、話しかける。


彼の横顔を見る。太陽の光に照らされて、あなたは先を見ていると知る。


「なによ、急に…嬉しいこと言うじゃない、たまには」


「たまにだから、いいんだろう」


すきだろ?と言うように彼は私に見せつける。

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