第38話 感謝イベント開催

 長い間ラタネーの町を苦しめてきた非道な領主タニア・リーティオを懲らしめた僕は、その翌日にこのお礼として開催されたイベントの開会式にミラ、リュエル、ローフェの3人と共に参加していた。


「皆様お集まり頂きありがとうございます。本日はとても良いお知らせがあります。今まで私達を散々苦しめてきたあの領主がまた犠牲者を増やそうとしましたが、この方々のお陰で阻止されました!」


 司会者である臨時領主のエリケイがそう言うと、観客が喜びの声を上げて盛り上がる。


「更に、それにより激昂した領主がここに居る白髪の女性に獄炎収束砲を放って殺そうとする暴挙に出ましたが、あっさり弾き返されて自身がダメージを受け、重傷を負いました。それをチャンスと見た衛兵達が領主を捕縛、地下牢獄に投獄する事に成功しました!」


 それを聞いていた観客は更に盛り上がった。


「あのやたら強くて私達が逆らうことの出来なかったアイツがボコボコに……最高じゃないですか!!」


「ありがとうございます! お陰で俺達は救われました!」


 会場のボルテージが最高潮に達したその時、エリケイが再び口を開く。


「それで最後のお知らせですが、今日の夕方にスレシア王女様がこのラタネーの町に視察に来られます。ちょうどその頃は閉会式の時間なので、そのタイミングで招待して、今までのタニアの悪事を洗いざらい本人の口から王女様に喋らせたいと思います。上手く行けばの話ですが」


 正式に王国から任命された領主を任期が残っている内に辞めさせるには、領民が王都の地方発展省に直訴して、その省の役人が調査をした結果相応ふさわしくないと判断してもらうか、王族の介入が必要である。前者は時間が掛かりすぎて問題なので、エリケイはこの好機にタニアを領主職から排除して貰おうとしているのだ。


「それでは、お知らせが長くなってしまいましたが、ただ今より感謝イベントの開催を宣言します!」


 こうして、最低領主のタニアが痛い目にあった挙げ句、地下に投獄されたことで、領民達による感謝イベントが開催された。



 ~ラタネー公園 屋台広場~


「凄い賑やかですね~」


「臨時で開催が決まったイベントなのに準備が早いし、何より人が多いな」


「この料理、凄く美味しいよお姉ちゃんたち!」


 開催式の後、僕たちは屋台広場で販売されている食べ物を食べながらこのイベントを楽しんでいた。僕がお金を払おうとしても『恩人達から金は取れねぇよ』と大半から受け取り拒否されたため、手持ちのお金はほぼ減っていない。


 その後も屋台の食べ物を適当に買って食べたらそれが超激辛だったり、土産物屋に行ってラタネー限定の物を買い込みすぎて荷物がかさんだり、何故かよく分からない発表会に飛び入り参加することになったりと色々あったが楽しい一時を過ごすことが出来た。


 そして、イベントを楽しみ尽くした後、空中船港周辺で僕たちは王女様の船舶が来るのを待つ。感謝イベントの閉会式に出てもらえるようにお願いをしようと考えているからだ。特にエリケイに頼まれたわけでも無いが、少しでも確率を上げるために自主的にやっている。


 待つこと30分、10隻ほどの空中帆船が空港に降り立つ。その中で1番大きい

 船から複数の護衛と共に王女様が降りてきた。


「王女様。着きました。ここがラタネーの町です」


「はい。皆様ご苦労様で――」


 そう言っている王女様と目があった。そうしたら、向こうの方から声を掛けてきた。


「あ、また会いましたね。旅行ですか?」


「はい。王女様の視察する町がどんなところなのか気になったもので…… あ、そうだ。こんな状況で頼み事をするのは失礼ですが、実はお願い事がありまして……」


 僕は今までこの町で起こった出来事を簡潔に伝えて、イベントの閉会式に参加して貰えるかどうかを尋ねた。


「そんな事が…… 分かりました。皆様それで大丈夫ですか?」


 王女様がそう言うと、後ろに控えていた兵士たちはうなずいた。


「という訳で、閉会式参加は大丈夫ですよ」


「良かったぁ~本当にありがとうございます!」


 こうして、エリケイの目論見通り王女様を閉会式に呼ぶことを成功させた。

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