第34話 民衆目線の王女様

 ティルバルス城を見学中、スレシア王女様に招待された僕たち3人は、王女様の自室に足を運んでいた。


「なあ。普通、王国の王女様が自分の部屋にたとえ恩人だとしても、王族と関係の無い一般の民を自分の部屋に警戒もせずに人を招くか?」

 

「そう言われた時、側の兵士達も特に止めることは無かったですね。こう言うのはいつもの事なのでしょうか?」


「私はいつもの事だと思うけどね。まあ流石に警備近衛兵を常駐させる位の警護はあると思うけど」


 客船に普通の客として乗船していたり、王都を警備なしで普通の民の服装で1人で出歩いたりしてるくらいだ。部屋への招待も恩人レベルの人物なら普通にやりそうだ。


「他にも月1のペースで王都の民との交流イベントを開催したり、不定期ですけど私自身の部屋にも誰かを招いたりはしてますね。その場合はうちの兵士が身体検査とかをしますけど」


 僕たちの会話を聞いていた王女様が、そう話し始めた。ただの一般人でも自分の部屋に招待していると言うのを聞いた時、ティーテン王国は僕らの常識をことごとく打ち破って来ると、改めてそう思った。


 そんな感じで1時間半話し込んでいると、扉のノック音がした後直ぐに女性兵士が入ってくる。


「失礼します。王女様。あと1時間後に『プラノティネロス』の街に視察に行く時間です。出発の用意をお願いします」


「もうそんな時間でしたか。分かりました。直ぐに用意をしますね」


 そう王女様が言うと、入ってきた女性兵士は一礼して部屋を出ていった。


「ごめんなさい。言うの忘れてました」


「大丈夫ですよ。所で、プラノティネロスってどんな所なんですか?」

 

「それはですね……」


 王女様によると、プラノティネロスとは王国の3割弱を占める極大穀倉地帯の中心にある町との事だ。王国民の生命線であり、町の規模だけで言えば王都レティエンの10倍、経済力は3倍はある為第2の王都とも言われている。


 では、何故王都がこの街では無いのかと疑問に思ったので聞いてみた所、今までも何回か王国上層部の人達がそれを試みたものの、何故か上手くいかないらしい。王都の機能を移そうと計画をすればある日突然予測不可能のトラブルが発生して計画凍結になったり、それでも何とか実行まで漕ぎ着けても建材の運搬中に穀倉地帯に入った瞬間馬車ごと燃え上がって建材全損したりして、それが100%の確率で起こる為に諦める事になったと言う。


「もうそこまで行くと私は何らかの神の加護が働いているとしか思えません」


「私もそう思う」


「同じくそう思います」


 馬車が入った瞬間に燃え上がるとかどう考えても神の結界か何かの加護が働いている。そして、どういうわけなのか農業や林業と言った植物に関係する仕事は例外なく大成功を納めているらしい。


「じゃあ私はこれで行きますね。ありがとうございました」


「こちらこそお誘いくださりありがとうございました!」


 王女様が部屋を出ていってから少し時間をおいて僕たちも部屋の外に出る。


「さて、これからどうする? プラノティネロスって街に行ってみるか?」


「そうですね。私も凄く気になるのでそちらでお願いします」


 こうして、次なる目的はプラノティネロスの街に決定した為、これから王都を回ろうと思ったが、それを中止にした。


 そこまで早く行くには超速空中船を頼まなければいけない為、早急に頼んできて直ぐに出発する。


 ~極大穀倉地帯 道中~


「凄い景色だな~。下一面が畑やら田んぼやらでぎっしり埋め尽くされてるね」


「所々ちらほら小さな町があるな。食料収穫の為に作られたのだろう」


「それにしても、これ空中船にしては速いですよね。確か時速110kmでしたっけ?」


 この船はこの世界でトップクラスの軍事超大国である『ケレストラ皇国』の開発した2世代前の戦闘用空中帆船を改造して作ったものであると、頼みに行った時スタッフに教えてもらった。


 その他の空中船を作れる強国でもせいぜい最新戦闘型でやっと時速160kmを越えるぐらいなので、皇国の軍事力が周りと隔絶していることが分かる。それでいて平和・中立主義なので、自分の国に攻めてくる奴が出てこない限り軍事力を行使することはないらしい。


「皇国の2世代前の船ですらあんなに高性能なんだ。最新型はもっと凄いに違いない」


 そんな感じで皇国の話題等で盛り上がること3時間後、遂にプラノティネロスに到着した。

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