第33話 王国の中心ティルバルス城

 客船からティーテン王国の超速魔法船に乗せてもらった僕たちは、6時間後ティーテン王国最大の港町であり、王都でもある『レティエン』の軍港に到着した。


「凄い数の船ですね。それに沢山の兵器がそこらじゅうに配備されている…… 防衛能力は凄そうです」


「まあ、王都だからな。それに、港町だから海からの攻撃にも対処しないといけないから、その分だけ軍事力を強化してるんだろう」


 ほんの少しだけ軍港を王国軍人と共に見て回った後、今夜泊まる分のホテルを予約してくれているらしいので、そのホテルに案内してもらう。宿泊費も今夜分だけ出してくれるらしい。


「では、私はここまでてす。良い旅になることを願っています」


「ホテルまで予約して頂けるなんてありがたいです。ありがとうございました」


 案内してくれた軍人と別れた後、ホテルに入ってチェックインを済ませて部屋に入る。


「これは良い部屋ですね。隅から隅まで埃1つも落ちてないくらい綺麗です」


「部屋も広いし、言うこと無しだな」


「それより、これからどうするの?」


「まずは王都観光だろう。せっかく来たんだから存分に楽しもう」


 例によって軍人から貰ったガイドブックを読み、興味がありそうな観光スポットを探す。5分探した後、『ティルバルス城』と言う王国の政治・経済の中心であるこの場所に行ってみることにした。



 ~王都レティエン ティルバルス城~


 ホテルから歩いて20分、王国の中心部ティルバルス城前に到着した。城門の警備をしている兵士に見学をしたいけどどうすればいいのかと聞いた所、『後30分程で城門が開いて、案内役の兵士が来るからそれまでこの辺で待っててくれ』とのことだったので、3人で話でもしながらその時を待つ。


 その時が近づいてくるにつれて、同じく見学をしようと言う人達がこの城門前に集まってくる。そして30分後、城門が開いた。


「お待たせしました。ティルバルス城見学希望の方はあの剣を持った兵士に付いていってください」


「見学希望の方は私の後に続いてくださーい」


 城門を警備している兵士がそう大声で言った後、城門から出てきた剣持ちの兵士がそう呼び掛けたので、僕たちも後に続く。


 そして、兵士の誘導のもと城の中に入ると、王国の長い歴史を感じさせるような芸術品が沢山飾ってあった。


 その後も大広間→王国役員控え室→来賓控え室の順番で見学をした。どの部屋も雰囲気がすごくいい感じだった。そして最後に王国貴族院と呼ばれる会議場の見学に向かっている途中、前方から数人の兵士と共に歩いてくる女性が見えた。良く見たらその女性は、客船で一緒に話をしていたスレシア王女様だった。


「皆様、前方から王女様が来ましたので、左右どちらかに避けてください」


 僕達を含めた見学客に向かってそう呼び掛ける案内役の兵士。避けるだけでいいのか。跪く等の何か厳しい作法があるものだと思ったので、兵士に質問してみた。


「普通に避けるだけで良いんですね。もっと厳しい作法の様なものがあるものだと思っていました」


「実は王女様は国民から跪かれたりするのを嫌うんですよ。『国民の皆様と対等でありたいし、何より自分が気楽ですから』と言う理由だそうです。なので、王都でも大衆食堂とか、その辺の市場等にお一人で出歩かれることが

 良くあります。勿論気づかれないように護衛をつけたりはしていますけど……」


 成る程。だから普通の客船に乗ってたりとかしてたのか。それだけ民衆目線の王女様なんだからきっと王国の民から慕われているんだろうな。そんな事を思いながら、僕たちは左側に避ける。すると、王女様は僕の目の前で歩みを止めて、護衛の兵士達にこう言った。


「この白髪の女性、私の娘の恩人だから是非自分の部屋に招待したいのだけど、宜しいかしら?」


「王女様の希望とあらば、了解です」


 兵士達とのやり取りの後、僕の方を向き『と言うわけなので来ていただけませんか? お連れの方も一緒で大丈夫です。急ぎの用事があるなら強制はしませんがいかがでしょう?』と聞いてきた。そもそもこの国に来たのも冒険をする為だ。急ぎの用事など無かったので、そのお願いを了承して王女様の部屋に行くことにした。



 ~ヒーティルオン帝国 四天王フィンドル執務室~


「と言う訳で、ルエルフ王国の王都攻略は失敗し、四天王シェリオン様は瀕死の状態です。ミストラークは最後まで落とせず、メリアもルエルフ王国軍に奪還され、この戦いは実質我が方の完全な敗北となりました」


 私は部下の兵からルエルフ王国での戦いの結果の報告を受けていた。


「それで、その結果を聞いたとき、皇帝陛下は何と?」


「まるで烈火のごとくお怒りになられていました。ちなみに、例の2人の暗殺には四天王『シャドス』を向かわせると言っておられました」


「了解した。下がってもよろしいぞ」


「はっ!」


 報告をしてきた部下が部屋を出ていったのを確認して、ひとりで文句を言う。


「だから攻撃は遅らせた方が良いと言ったのに…… あの2人の暗殺も諦めて無さそうだし、まだまだ被害は拡大しそうだ」


 続けざまにこうも思った。


「はぁ…… 四天王シェリオンが瀕死の状態と言うことは、水の女神が王都に居たこと言うことだよな」


 ルエルフ王国に四天王を瀕死の状態に追い込む程の実力はない。つまりこの事態を引き起こせるのは現時点で考えうるのは女神位しか居なかった。


 (このままでは帝国が戦争吹っ掛けまくって報復を喰らって亡国となってしまう。そうなっては部下の命だけでなく私の命も危うくなる……)


そう思った私は決意を固める。


「かくなる上は部下を少しずつ国外に逃がそう。そして全てが終われば私も……」


 そして、フィンドルは国外逃亡の為の計画準備を進める事になった。

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