第28話 エンチャント付与依頼完了

「おはようごさいます」


「ああ、おはよう。と言っても、ろくに寝れてないんだけどな」


「そのお陰で寝たのに眠いです……」


街を王国の騎士団や魔導防衛隊と共に歩きまわる防衛記念パレード。リリセアに、『王都防衛の立役者である貴女方が参加しなくてどうするのですか』と半ば強制的に参加させられた。まあ、楽しかったから良かったが。


その後も、まるでこの状況があることを想定していたかのような早さでお祭りの準備が整い、日を跨いでもう朝になりそうな時まで多種多様な人々との交流を楽しんだり、出ていた屋台の食べ物を食べたりしていた。その結果、かなり疲れたにも関わらず、賑やかな雰囲気に気分が興奮していたのかなかなか寝付けずに時間が過ぎて結局3時間位しか寝れていない。


「さて、今日は…… あ、そうだ。まだ武具のエンチャントがまだ終わってなかったね」


「色々あって忘れてたけど、そうだったな」


これで今日やることが決まったので、実行に移す。



~ルーフェルン城 武具保管倉庫~


「さて、出来てなかった時の分まで頑張ってやりますか」


そう気合いを入れて倉庫に入ると、沢山の魔法使いの人達が居た。ざっと見た限りでは150人前後だろう。


「あ、お待ちしておりました。リリセア様よりサポートをするように言われておりますので、よろしくお願い致します」


今までの約5倍ものサポート魔法使いを用意してくれたリリセア。これだけの人数が居れば、武具の転送スピードが上がる。その分だけ僕がスピード上げてエンチャント付与すれば、依頼を早く終えることが出来る。そう言う状況を作ってくれた事に感謝しつつ、作業に取りかかる。


「こんなに沢山の皆様に集まって頂き感謝です。よろしくお願いします!」


こうして、多くの精鋭達のサポートを受けつつ半日休憩なしでぶっ通しでやった結果、7760もの武具のエンチャント付与作業が完了した。


「終わったぁ~」


「お疲れ様です」


「全部終わったから後は、依頼主…… ルエルフ3世に報告をするだけだな」


「報告だけだけど、流石に一国の主との対面は少しの時間だろうと緊張するものだからね。これが一番大変かなぁ」


「クアメルお前一応神様だろ? まあ、流石に上から目線は不味いだろうけど、そんなに緊張することないと思うけどな」


「確かにそうなんだけど、緊張しないようにすればするほど緊張が……」


そんな話をしながら、謁見の間へ向かう。



~ルーフェルン城 謁見の間~


「という訳で、リリセア殿の用意してくれたサポート要員のお陰で本日、ルエルフ様からの依頼を全て終えることが出来ました。後程、基準を満たしているか検査をして頂ければ……」


「分かった。よくぞあの凄い数の武具のエンチャント付与を、リリセアの魔導防衛隊のサポートありとはいえこれ程の早さで終わらせるとは素晴らしい。よし、これが報酬の白金貨50枚だ」


「ありがとうございます!」


「それと、追加報酬の査定の為に今から武具の質のチェックをしてくるから、控え室の中で待っててくれ」


「分かりました」


そう言って謁見の間を出て行ったルエルフ3世。1時間後、1つの剣を持って戻ってきた。


「待たせた。期待以上の出来で、私は非常に満足している。特にこの剣なんか軽く落としただけで石の床に突き刺さるほどの力を発揮している。勿論追加報酬…… そうだな。白金貨15枚追加だ」


今日で一気に旅の資金を確保できただけでなく、余裕を持った旅が可能になった。


「こんなに沢山の白金貨を頂けて感謝です」


「気にしないでくれ。そなたらの仕事が良かったから、それだけの報酬が妥当だと思ったからあげただけだ。ああ、そう言えば今後早く船でどこかへ行く予定とかあるか?」


「急ぎの用事は特に無いですが、一体何故そんな事をお聞きになられたのですか?」


「実はな……」


港町メリアは帝国軍に占領を受けていて、他の街や国に船を出すことが出来ない。ミストラークからも船は出ているが、その道中に幻霧の森と言う危険地帯がある。安全策をとるならば、ルエルフ王国軍がメリアを奪還した後に来て船で他の街か国に行く方が良いからだ。


ルエルフ3世からそう聞いた僕たちは、少し話し合った後にこう言った。


「早めに他の国に旅をしたいと思いますので、危険ではありますが幻霧の森を通り、ミストラークから船で行きたいと思います」


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