第27話 精霊の宿りし神水桜

「おーい。大丈夫か?」


「私は大丈夫です!」


「私も大丈夫なんだけどね。ただ……」


 今回の帝国軍陣地攻撃の際に、神水桜の舞・満開と言う大規模攻撃魔法を使用した。その結果、四天王シェリオンを圧倒的な弾幕の嵐により撃退、一緒に陣地構築に来ていた兵士達も巻き添えを喰らって大半が死に、生き残った兵士もメリアに撤退と言う、この上ない戦果を上げたところまでは良かった。


 ただ、攻撃魔法の為に生成したこの30mもある巨大神水桜の木を、攻撃が終わったので消滅させようとしたが、どうやっても消滅しないで残っているので、結構焦っている。何故なら、この魔法は大地の力を借りて発動する魔法の為、長時間存在していればその分だけ力を消費してしまい、最悪大地が枯れてしまう可能性があるからだ。


「この神水桜の木、魔法解除で消せないんだよね……」


「消えないと何か困ることでもあるのか?」


「大地の力を大量に吸い上げて維持してるから、放置してるとこの辺の大地が枯れて荒野になって、下手すれば砂漠化するかもしれないからね」


「そいつは不味いな。物理・魔法的な破壊はどうなんだ?」


「それは無理かな。この木の耐久性を底上げし過ぎたから、仮に破壊するとしても四大神技級の威力が必要だと思う」


「うん。じゃあ無理だな」


 そんな物騒な会話をしていると、何処からか声が聞こえてくる。


「ちょっと待ってぇーーー!」


 巨大な木の一番上から、急降下して来た何かは、その勢いのまま地面にめり込む。


「ん~~~。ぶはぁ…… お願いだからこの木を壊さないで……」


「え? どういうこと? そもそも君は何者なの?」


「あ、私は少し前にこの木に宿った精霊のローフェなの」


 ローフェが『お願いだから壊さないで』と言ったのは、僕が攻撃の為に神水桜の木を生み出して攻撃の準備をしていた時、前に宿っていた物が消滅して平原をさ迷っていたローフェがこの巨大な木を見つけて、それを見た時、直感で『この木に宿った方が良い』と思い宿ってみた所、予想以上にこの神水桜との親和性が非常に高く、自身の力が最大限に発揮出来るようになったのに、また居場所が無くなると困るかららしい。


「事情は分かったけど、この木を放っておくと大地が……」


「それなら大丈夫! 私の精霊力なら維持も容易たやすいし! それに、宿ったことによってこのえっと…… 神水桜の花びら、枝、すべてに至る所まで治癒の力が加わった影響で、周辺10km位のの土地は私が居る限り枯れることはないからね! もしかしたら潤うかも!」


 そう言うことなら大丈夫だと思った。


「分かった」


 そう僕が言うと、ローフェは笑顔になる。


「あ、この木を生み出した白い髪のお姉ちゃんありがとうね! お礼に私の召喚術教えるから、何かあれば…… なくても良いから気が向いたら呼んでね! ばいばーい!」


 これのお礼としてローフェを召喚する為の術を教えて貰った。回復専門の精霊らしいので、呼ぶとしたら治療の時だ。


 そんな事を考えていると、リュエルが『もう戻らないと、城の中の人たちが心配しますよ』と言ってきた。もう何時間も城から出てるから心配されてるだろと思いつつ、王都に戻る。



 ~1時間後 王都ルエルフ~


「これでもうしばらくは帝国軍も来ないだろうな」


「四天王が瀕死で逃げ帰るって非常事態が起きたからね」


「所でさっきから周りの騎士達からの視線がすごいのですが……」


「確かに、何故かさっきから周りの視線が集中しているような…… あ、もしかして」

 

 そう。僕らが門から出て奴らの野営地に3人で突っ込む所をガッツリ見られていたのである。そして、戦闘シーンも『魔導双眼鏡』という道具で全て見られていたのである。


「あんたらマジで凄げぇよ! あの四天王シェリオンをまるでその辺の雑魚を相手にしてるかのように撃退するなんてな!」


「あの巨大な淡く水色に光る木を生み出し、更にその花びらを吹雪のように舞わせて攻撃する魔法、威力が高すぎでしょう……」


「それにしてもあの巨大な木、いつまであるんだ?」


「ああ、それなんですけど実は……」


 あの生み出した木に治癒の精霊が宿ったこと。それによりあの木の全体に治癒の力が浸透し、時間が経てば周辺の大地が潤うこと。これらを説明すると、周りがざわめく。


 この後、行く先々で王都の人たちから感謝の意を伝えられた後、緊急記念パレードなるイベントが開催されて、それに参加することになった為、ほとんど睡眠をとることは出来なかった。

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