第19話 王都ルーエルへの旅路

 

「快適な船旅で良かった~」


「確かにそうですね。もっと凄い辛いものを想像していました」


 ミストラークを出た後、王都ルーエルへ向かう途中にある町『メリア』に船で向かう。


 王都は、海から遠く離れた内陸部にある為、まずは途中の町であるメリアに向かい、そこから馬車等を使って『アスルファ平原』に向かい、そこを通って王都に行く。


 ミストラークから直接行けないかとフュウレンに聞いたが、道中に『幻霧の森』と呼ばれる、森に入った者に幻を見せて迷わせる濃い霧が常に漂うこの場所を通らなければならないという。


 僕だけなら余裕だが、2人を連れて森を渡るのは困難だと言う理由から、遠回りルートで行く事を推奨されたため、そういう事になった。


「クアメル。そう言えば王都に行ったら何をするつもりなんだ?」


「観光かな。あと、旅の為の資金集めもしようと思ってる」


 ミストラークの武具屋で買ったオリハルコン製の刀に旅の資金を使いすぎて、残りが結構少なくなってしまったので、王都に行って観光をしつつ、武器や防具へのエンチャント付与で旅に使うお金を得るという考えをミラに言った。


「成る程。そういう事か。でも、そんなに上手く旅の資金が得られるとは思えないが……」


「それが上手くいかなければギルドに行って何か依頼を受けて、その報酬で何とかしようと思う」


「今まで倒したドラゴン等のモンスター素材とか売れば当面はなんとかなりそうじゃない?」


「確かにそれが1番早いか……」


 今後の予定について3人で議論していた時、船長が僕たちの居る船室に入ってきて『メリアに着きましたよ』と言いに来たので、船を出る。

 

 

  ~港町 メリア~


「規模で言ったらミストラークよりも小さいけど、王都から近いだけあって活気に溢れてますね」


 単純な距離だけで言えば幻霧の森を渡る方が近いが、幻を見せられて迷い、余計に時間が掛かる。更に言えば、凶暴なモンスターも出現する為、余程強い人物と幻影耐性&一時状態異常耐性魔法持ちの人物が複数パーティーに居なければ、結果的に遠回りルートの方が早く王都に着く。


「さて、ここで泊まらずにこのままアスルファ平原突破すれば明日の朝には恐らく着くと思うんだけど、もう夜だし泊まる?」


「旅の安全を考えるのであれば、今日は泊まっていく方がいいと思います」


 宿に泊まるぐらいのお金はあるので、近場の宿に今日は泊まることにした。


 そして次の日……


「おはようございます」


「クアメルおはよう」


「ミラ、クアメルおはようございます」


 船旅の疲れを癒した僕たちは、アスルファ平原の先にある王都ルーエルに向けて出発した。


 

  ~アスルファ平原 道中~


「これは凄いですね」


「見渡す限りどこまでも続いていそうな感じだな」


 想像していたよりも広かったので、今日中に着けるのかが心配であった。


「馬車の運転士が言うには、あと7時間位で着くらしいぞ。凶暴なモンスターとかも居ないみたいだし」


 それを聞いて安心した。


 そうして、馬車に揺られて7時間後、遂に王都ルーエルの入り口の門に到着した。




  ~ヒーティルオン帝国 帝都ティルオン フィンドルの事務室~


「馬鹿者! 国境の門を破壊されて、その上あの2人に逃げられただと! どうしてくれるんだ!」


「申し訳ありませんでした! イレギュラーな人物の乱入により、任務に失敗しました!」


「イレギュラーな人物…… その人物に破剣ルメネは効果は有ったのか?」


「私が見た限りでは、効果は絶大だったように思います。斬った瞬間、相手の魔力が大幅に落ちたのを感じました。それでも、相討ちに持ち込むのに精一杯でしたが……」


 私は国境の門の戦いの後、病院で治療を受けて、報告予定日より大幅に遅れたが、報告を無事にすることができた。


「そうか、任務ご苦労だった。怒鳴ってすまなかったな」


「いえ、大丈夫です。それと、オラクル盗賊団に貸与した劣化版ドラゴンは、全て撃墜されたとの報告が来てます」


  『分かった」


  (これで確信した。予言者ノーティルクの予言通り、あの2人と一緒に居るのは水の女神だ。女神が居る限り、処刑は不可能だろう。それにルエルフ王国侵攻の計画も、女神の居場所によっては、大損害を被る事になる……)


 フィンドルは、この計画の一時凍結と、動向を探るためのスパイを送り込む事を皇帝陛下に提案をしようと、宮殿に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る