第18話 盛り上がる神殿会議

「皆様静粛にお願いします! どうか、静粛にお願いします!」


 クアルスフェス神殿の大神官で、なおかつルエルフ王国内の、水の女神を信仰している『アクエリオ教』の実質トップに位置するフュウレンがそう言った時、会議の場は静まり返る。


「本日は皆様に非常に重要なお知らせがあります」


 それを聞いた各神殿の大神官達はざわつく。何故なら、アクエリオ教のトップであるフュウレンが『非常に重要なお知らせがある』と言ったのは、以前起こった神の消滅と言う超非常事態の際の1回のみだった。


「また神の消滅クラスの非常事態でも起こるのか……」


 そう思う大神官達が大半を占めていた。だが、実際そうではなかった。


「なんと、我らが主神が復活なされました!!」

 

 それを聞いた大神官達は、長らく待ち望んでいた水の女神の復活に、大きな声を上げて喜んだ。



  ~クアメル達の視点~


 案内された会議場に入ると、大神官達の怒鳴りあいで会議が紛糾していた。


「これ一体いつ収まるのかな?」


「まだまだ長く続きそうですね」


 僕たちはそう思っていたが、案内してくれた大神官のフュウレンが『皆様静粛にお願いします』と言うと、一瞬で場が静まる。


 そして、場が静まった後、僕が復活したと言うことを大神官が告げると、再び場がざわつく。


「ここに居る長い白髪で、薄い金の眼を持ったこの方こそ我らの主神、水の女神クアメル様である!!」


  「「「うぉぉーーーー!!」」」


「ついに復活の時が来たのか!」


「これでアクエリオ教もひとまずは安泰だ!」


 それを聞いた他の大神官達は、テンションが最高潮に達する。

 

「それでは、クアメル様よりお言葉を頂きたいと思います」


 フュウレンがそう言うと、再び場は静まる。


(うわぁ。遂にこの時が来たか……)


 会議場に行くまでの短い間に、この宗教の事、案内してくれた大神官の名前等を聞いたりした。その際に軽くで良いので何か話しをお願いしたいと頼まれた。


 了承したは良いものの、こんな短時間でロクな話など思い付くわけがない。


(一体何を話せばいいんだよ。まあ、フュウレンも今回は急に頼んだので堅い話はしなくても問題ないですって言ってたし……)


 とにかくこの場に居る以上、やるしかないと思ったので、話し始める。


「えっと。皆様、この度復活致しました、水の女神クアメルです。復活したてでまだよくこの世界の事を分かっていませんが、どうかよろしくお願いします」


  「……」


 あ、不味い。神様らしい雰囲気出して挨拶しようと思ってたのに緊張のあまり至って普通の、まるで会社に入ったときの新入社員のような挨拶になってしまった。これは大失敗だと、そう思っていたが……


「勿論です! クアメル様、こちらこそよろしくお願いします!」


 どうやら反応を見る限りでは、そこそこ上手く行ったようだ。


 この後、本題の奴ら(デゼアラム教壊団と言う、宗教なんぞ悪だ! と言って信仰している人間にえげつない暴力をふるう団体らしい)に対する対策の議論に入ったが、僕が意見を述べる旅に盛り上がり過ぎてしまった為、本来の会議は5時間の予定だったが、余計に3時間も掛かってしまった。


 それによって疲労が溜まりすぎたので、再び宿に戻って食事と風呂を済ませて、眠りについた。


 そして次の日……


「おはようございます。昨日は本当に疲れましたね」


「ああ、確かにな。でも、1番疲れてたのはクアメルじゃないか?」


「うん。あれは今までで1番と言っても良いくらい疲れた」


 会議の終盤、僕が神気と魔力を込めてエンチャント付与し、名付けたオリハルコンの刀 神刀『水桜』をプレゼントした所、更に盛り上がってしまい、事態の収拾に追われてしまったからだ。


「よし。準備も出来たし、港に出発しよう」


  一緒に来て宿に泊まったフュウレンに僕たちがミストラークを出て王都『ルーエル』に行く予定だと伝えた所、途中の町までの船を速攻で港に用意してくれると言っていた。なので、今から港に向かう。


 

  ~ミストラーク港~

 

「本当に用意してある……」


「準備やたらと早くないか?」


 待ち時間などほとんど無かったので、直ぐに船に乗り込むことが出来た。


「皆様もお元気で~」


「女神様方もお元気で~」


「あの素晴らしい神の刀も頂けて本当に感謝です!」


 こうして、皆との別れを惜しみつつ、ミストラークから出発した。

 

 

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