第17話 神殿会議の準備

「おはようございます」


「ああ、おはよう。確か今日は神殿の会議に出席することになったんだったな」


「うん。あ、でもその前に行きたい所があるんだけど大丈夫?」


「確かお昼時までに教会に着いてれば良かったんですよね。それならまだ6時間近く余裕あるから大丈夫だと思います」


「私も時間的には大丈夫だとは思う。だけどクアメル、一体何処に行って何をするんだ?」


「武具屋に武器を買いに行こうと思ってる」


 昨日の助けた商人からお礼として貰った魔法・精霊術の書を、宿に着いてから読んでみた所、『エンチャント付与魔法』の項目を見つける。


 武器や防具に特殊効果を与えて、耐久性を大幅に跳ね上げるという、この魔法の解説を見たとき、これで武器に神気込みでエンチャントを付与し、それを神殿の会議の際にチャンスがあれば、その場で大神官に受け渡す。


 そうすれば、僕を信仰してくれている人たちが喜んでくれるだろうと思ったからだ。


「武具屋と言ったら、ガイドブックに載ってる『アクアス』って所が良さそうだな。評判も良いみたいなので」


 そうして、武器を買う店はアクアスに決まった。


 

  ~武具屋アクアス~


「いらっしゃい~。武器と防具、どちらをお探しですか?」


「良い武器を探してます。何かおすすめはありますか? 値が張っても良いので」


「それなら、かなり高額になりますが、この3つがおすすめです」


 1つ目は、希少金属ヒヒイロカネで作られた槍。


 2つ目は、魔力との相性が最高で、純粋なミスリルで作られた洋剣。


 3つ目は、あらゆる金属の耐久性を凌駕し、なおかつ軽い超希少金属オリハルコンで作られた刀だ。

 

「どれも入手困難な希少金属で作られてるな……」


「はい。それに、この希少金属の武器は、伝説の武具の匠『スファルツ』さんが作ったもので、他の匠の作る物よりもかなり質が良いですからね」


 成る程。伝説の武具の匠製作の武器なら、高額になるのも納得だ。


「では、3つ目の刀を買います。いくらでしょうか?」


「はい。それですと、白金貨5枚ですね」


 やはり、希少金属なだけあって値段も高い。


「はい。これでお願いします」


「毎度ありがとうございます」


 これで、武器の購入を済ませた僕は、その武器にエンチャントを付与する為に、一旦宿に戻った。


 そして、3時間後……


「ふぅ。やっとエンチャント付与終わったぁ~」


「その刀からプレッシャーを感じるから、上手く行ったみたいだな」


 神気と魔力を込める際に、暴走して武器が爆散しないように留めるのに苦戦したが、何とか完了した。


「終わったみたいなので、早く神殿に行きましょう」


 神殿に行く準備が整ったため、少し早いが出発した。


 そして2時間後、神殿に到着した。


「女神様とそのお供の方、お待ちしておりました。今からご案内致します」


「あれ? もう会議始まってました?」


「実は、昨日また『奴ら』によるうちの信徒に対する加害行為が発生した関係で、会議が早まったのです」

 

 会議予定時刻よりも50分早く到着した筈なのに、まさか勘違いで時間を覚えてたのかとヒヤッとしたが、そういうことだったのか。


「その『奴ら』とは一体?」


「それは、会議場にて改めてご説明させていただきます」


 そんな事を話しながら、会議場に入る。



  ~クアルスフェス神殿 会議場~


 この会議場は年に1度、水の女神を祀る神殿の神官達が集まって、今後の運営方針や、イレギュラーな事象に対する対策を協議する際にのみ使われる場所だ。今回は、ここ最近やたらと起こったこちらの信徒に対する『奴ら』が起こした加害事件の件で紛糾していた。


「またしてもやらかしてくれたな! ここ最近の『奴ら』の行動は酷すぎる! 国の役人を待つ前に俺たちで何とかしなければ!」


「待て。そんな事をしたら逆に私たちが処罰されてしまう」


「じゃあどうしろと!?」


 怒鳴りあいが始まろうとした時、1人の神官が言った。


「そう言えば、大神官様がまだここに来ていないな」


「何でも、重要な方々をお迎えに上がる為に外で待っているらしいぞ」


「大神官様がそこまでするなんて、一体どんな方々なのだろうか。王国の要人でも来るのだろうか?」


 と、その時に、大神官様が2人の人間と、1人のエルフを連れて、中に入ってきた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る