第16話 港市場での小競り合い
「そう言えば、女神様はこの町に滞在する予定はありますか?」
「はい。せっかくこの町に来たので、数日は観光で滞在しようかと思っています」
「そうなんですね…… では、明後日またこの神殿に来てもらえますか?」
神官によると、明後日が丁度年に1度の王国全土の大小様々な水の女神を祀る神殿の大神官100人がこのクアルスフェス神殿に集まって、今後の運営方針等を話し合う会議があり、そこに出席して欲しいらしい。
「分かりました。急ぎの用事も無いので、会議に出ましょう」
「ありがとうございます! では、明後日の昼頃ここに来てもらえれば大丈夫です」
こうして、神殿の運営に関わる会議に出席することに決まった。
~ミストラーク 水天の宿~
神殿を出た後、宿を予約していなかった事に気づいたので、ガイドブックに載っていた手頃な価格の宿に泊まる。
「何だか凄いことになってきましたね」
「まあ、自分の信仰している神様が目の前に現れたからな。早く大神官達に知らせたいと思ったんだろう」
そうなりますよね。て言うか、会議で僕は一体何を話したりやったりすれば良いのだろうか。神の力を見せるとか? それとも、そんな事を考えながら眠りについた。
そして次の朝……
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
「2人ともおはよう。それで今日は、ミラが行きたいって言っていた港市場に行く予定でいるけど問題ない?」
「ミラが行きたいって言うなら私は問題ないです」
「じゃあ、決まりだね」
今日の行き先が決まったので、皆で朝食を取った後、港市場に出発した。
~ルティン港市場~
ミストラーク最大級の港市場ルティン。あらゆる国の水産物が集まり、それを求めて商人達が一堂に会する
「凄い沢山の魚があるな~」
「最大級の港市場だけあって沢山の商人の方々が居ますね」
「ミラ。あそこに美味しそうな魚料理の店があるからそこに行ってみよう」
そうして食事をしようと魚料理の店に行こうとした時、怒鳴り声と悲鳴が聞こえてきた。
「それが出来なきゃ見逃してやるから早く金を出せって言ってんだよ!」
「お断りします!」
声の聞こえてきた方を見てみると、1人の商人が明らかに危ない集団に恐喝されてお金を取られようとしていたところだったので、3人で割って入る。
「お前達なにやってんの? 1人に対して寄ってたかって暴力、その上金を出すのを強制させるとか、人間のやることじゃない」
「いいから早く彼から離れて下さい!」
「なんだお前ら。部外者は引っ込んでろ!」
お互いに一歩も引かず膠着状態となる。そして、にらみ合いを続けること5分、痺れを切らした相手方が魔法で攻撃をして来た。
「もういい! こいつらを商人もろとも潰せ!『アクアストライク』!」
高速で飛んできた水の塊の圧力で相手を押し潰す魔法だが、水の女神である僕には水系攻撃は格好の『食事』のようなものだ。商人に向かっていった水属性魔法を自分に引き寄せて、取り込む。
「何だあいつ!? 俺の魔法を取り込みやがった……」
「あり得ねぇ。あいつは一体何者なんだ?」
僕が魔法を取り込んだことで相手は混乱状態となる。
その隙をついて男達の喉元に鉄の剣を突き立てながら言った。
「暴力・恐喝行為を止めておとなしく警備隊に逮捕されるか、この町から出ていくか。どちらから選べ。下手なことをすれば、私がお前達に四大神技の1つ『裁きの神嵐』を披露することになるだろう」
「!?」
それを聞いた男達は、先ほどまでの威勢が嘘のようにおとなしくなった。と言うことは、こいつらも僕の正体を知っているのだろうか。何はともあれこれで解決だ。
「ありがとうございました。お陰で助かりました。お礼に『魔法・精霊術の書』をお渡しします。お金でなくて申し訳ないですが……」
結構分厚い書で、中を見てみると、この世界のありとあらゆる魔法や精霊術が載っている。
「こんない良いもの貰っても良いのですか?」
「はい。私には無用なので」
そう言い残して、商人は去っていった。
商人を襲っていた集団は、駆けつけた警備隊によって連行されていった。
「じゃあ改めて魚料理の店に行こう。今ので結構お腹空いたし」
こうして、魚料理の店で海の幸を好きなだけ堪能したあと、宿に戻って風呂を済ませた後、眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます