第15話 女神を祀る神殿
改めてミストラーク町内に入ってみると、想像以上の人の多さにビックリした。
「ここが、ミストラークなんですね」
「商業が盛んな町と言うだけあって、結構人が多いな」
「ここは王国から経済特区に指定されてますからね。他の町や都市と比べてあらゆる規制が緩いから、自国だけでなく、他の国の商船とかも頻繁にやって来てます。それだけ経済活動が盛んなのでここが王都になるなんて噂もあるくらいです」
成る程。まあ確かにルツェの話を聞いて、そんな噂も立つぐらいの発展度合いだろうなとは僕も思った。まだこの町に来て少ししか経ってないけど。
「そう言えばルツェさんはここまでなんですよね」
「あ、はい。皆様ここまでありがとうございました」
護衛任務が完了したので、ルツェから書類にサインを貰い、ギルドの支部に提出しに行った。
「さて、これからどうしようか」
「では、せっかくこの町に来たのですから、観光でもしたらどうですか?」
「うん。他にこの町でやることは無いからそうする」
ルツェの護衛以外にこの町に来た目的は無かったので、リュエルの提案を受け入れることにした。
ギルドの窓口の人に貰った観光ガイドブックを読んでどこに行ってみようかを考える。
(うーん。結構多くて迷うな…… ん?)
ガイドブックを読み進めて気になったのは、『クアルスフェス神殿』の項目。
ミストラークの町で大半の人が信仰している先代の水の女神が降臨したと言われている築160年の全体的に薄い水色の神殿で、町とその周辺に水の加護を与えていると言われているらしい。
「何か凄い気になるからここに行って見たいんだけど、2人は他に行きたいところ無い?」
「その神殿に行ってからで良いけど、私は港市場に行ってみたいかな。美味しい魚料理ありそうだし」
「私は今考え中なので、2人に任せます」
こうして、最初にクアルスフェス神殿に行くことになった。
~クアルスフェス神殿~
「近くで見ると、凄い大きさだな」
「それに、私何だか自分の家に帰ってきた気分になってきた」
「クアメルが水の女神だからじゃない?」
成る程。ガイドブックにも『先代の水の女神が降臨したと言われている』と書いてあったから、それ関係でそんな風に感じられているのだろう。
そんな会話をしながら中に入っていくと、神殿の外見から想像した通りの美しさで、神聖な雰囲気を感じた。
さらに奥を見て回ろうとした時、後ろから声を掛けられた。
「あの、すみません。もしかしてあなた様は、新たにこの世界に降臨なされた水の女神様ではありませんか?」
「え?」
声を掛けてきたのは、この神殿の神官であろう格好をした男の人だった。
どうして分かったのだろうか。そう思っていると、神官が説明をしてくれた。
何でも数日前に『新たなる水の女神が降臨した。近いうちにこの神殿に2人のお供と共に現れる』と、的中率ほぼ100%の王国の有名な予言者が予言したらしく、その方が言うならそう違いないと思ったので、神官共々身体を清めて待っていたと言うことだ。
で、実際にその予言通りの時刻に僕たちが現れたと。特徴も予言者の言った通りで、極めつけは私が発する微かな神気を感じ取ったからだと言う。
「でも、人間に私の神気を感じ取ることなんて出来るの?」
「水の女神様に仕えている神官であれば誰でも水の女神様の神気を感じとることが出来るのです」
成る程。そうなのか。しかし、的中率ほぼ100%の予言者とは本当に恐ろしい。その気になれば僕らの行動を簡単に掴むことが出来るだろう。
「そこで、突然申し訳ないですが、水の女神様の加護をこの町に与えて頂けないでしょうか?」
「加護をですか?」
「はい。前の女神様の消滅後、この町に与えられた加護も消滅しました。その後は、船の座礁事故が増える、農業地帯に雨が降らなくなる、津波の増加等、町の存続に関わる事態になったことが増えましたので」
(そう言えば、僕が転生した時に、水の神の消滅の影響がでないうちに連れて来る必要があったから早めに連れてきたって創造神の眷属は言ってたけど、もろに影響出てるじゃないか。あの人の言ってた影響って世界全体に出る奴の事なのかな?)
そんな事を思った後、僕は加護を与えるかどうかの返事を出した。
「分かりました。そういう事情がおありでしたら、加護をこの町に掛けましょう」
こうして、この町とその周辺に水の加護を掛ける為に、術を掛けた。
「この美しき水の都に神の加護を『水女神の超守護結界』!」
神気をふんだんに使ったあらゆる災厄から結界内部のものを守る究極神術は、見えない壁となり、近づこうとする悪しき心の持ち主を打ち砕く。
「これで恐らく大丈夫かと。前みたいに事故は起こらなくなると思います」
「ありがとうございます。お陰でこの町は安泰です!」
こうして、再びミストラークやその周辺で水に関係する事件、事故が起きないように、守護結界を掛けることに成功した。
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